6-325 面会
サヤは、もう一つの世界に戻ってから、東の王国には大きな変化があったことをステイビルから聞かされる。
モイスからも事前にその状況は聞かされていたが、詳しい状況まではわからないと言った。
そのためサヤは、その事情を聴きに王都まで出向くことにしたが、モイスはその行動を止めようとした。
その理由は、サヤはハルナたちを裏切っていることになっていると告げた。
サヤはそのモイスの進言が誤っていないことを告げるが、サヤ本人が良いと言っているためそれ以上のことはモイスには言えなかった。
サヤはこうして王都へと訪れて、ステイビルから直接今の状況を確認することにした。
「なるほど……今の王国の状況をお聞きしたいと?」
「そう。ちょっと離れてたからさ、今ってどんな状況か教えてよ」
「かしこまりました……では、いまの王国の状況をお伝えいたします」
そこからステイビルは立ったまま、サヤの要望に応えるべく話を始めた。
この世界に来たときの国王だったキャスメルは、いまはその力を失い、その後を国民の圧倒的な指示でステイビルが国王にえらばれていた。
そうしてキャスメルの策略によって王都を離れることになっていたエレーナやアルベルトたちは、ステイビルの命令によって王都へと戻ってきた。
これでようやくまっとうな王国が戻ってくると、様々な場所から安堵の声が聞こえてくるようになっていた。一部キャスメルの政策に便乗をしていた者たちは、法によって裁かれるものもいたが、再び息を潜めて表に出てこないような生活を送るようになっていた。
「ふーん……で、いまキャスメルはどこにいんの?」
「キャスメルは、王都から追放しいまは遠くの場所で暮らしています」
国王の座を失ったキャスメルの姿は、急激に年をとったように変わり果てているという。
今は気力を失ったようで、以前のような強気の態度を見せることはない。そんな状態のため、ステイビルはグラキアラムの村で王選に関わっていない側近をつけて監視されながら静かに過ごしていた。
ステイビルは、キャスメルについていたクリエたちにも王国のために力を貸してほしいと協力を求めた。
だが、全員がその申し出を断ってきた。もう、王国の運営に関わらないところでゆっくりと暮らしたいというのが理由だった。
「そう?そんなことになってたんだ……」
「はい。キャスメルはあの剣を失ってから、生気を失ったようになり、以前のような私に向けていた悪意なども……」
「なくなっておとなしくなっちゃったんだ?」
「……その通りです。きっと剣に支配されていたのでしょう」
そう言いつつ、ステイビルはサヤの背中に下げている剣に目をやる。
ステイビルは部屋に入ってから、ステイビルはサヤとの距離をある程度保っている。
サヤもそのことには気付いていたが、キャスメルの状態の話から、この剣の危険性についても理解をしているのだろうと判断した。しかし、サヤはそのことに対して何も言うことはなかった。




