6-321 ハルナがいなくなった日14
『お待たせいたしました……サヤ様』
集まった光の塊が眩しさを失うと、そこには静かに存在するラファエルの姿があった。
「アンタも、”こいつ”のことがわかってんの?」
『はい、わたくしは実際に一度だけお会いしたことがございます。この世界の秩序を守るようにと創りだされた際に、お力を貸していただいたと聞いております』
ラファエルからの言葉は剣の創造者から聞いていた話であり、サヤもガブリエルが知っていたため驚きはしなかった。
「さっきステイビルたちに話しをしてたんだけどさ。アタシが盾の創造者を倒すからさ、アンタたちに協力してほしんだけど……」
『協力でございますか……それは一体どのようなことを望まれていらっしゃるのでしょうか?』
「お!?アンタは話が分かるね……さすがは大精霊様だ」
嫌味にも似た言葉に対しても、ラファエルは何の反応も示さずに、サヤから聞き出したい本当の言葉の続きを待っていた。
そうしてサヤはラファエルに対して、自分が考えている協力体制については説明する。
ラファエルたちは、この世界の元素の流れを把握できる。だが、その範囲は制限がある。
よって、大精霊と大竜神たちは世界の全域をカバーできるように配置し、その流れ感知して大きな元素が消費された地域を探ってほしいと告げる。
その場にいたガブリエルの表情は固まってしまっていたが、近くにいたラファエルの落ち着いている姿を見てその素振りを真似てみせる。まだ敵か味方かもわからない相手に、こちらの弱みを見せるようなことをしてはいけないという考えから、ガブリエルは取り繕う様に態度を持続させることに努めた。
『……わかりました。その提案を受け入れましょう』
「そう?じゃあお願いね」
『ら、ラファエル様!!そんな簡単に判断してしまってもよろしいのですか!?相手は、ハルナ様を貶めようとしている者なのですよ!?』
『落ち着きなさい……ガブリエル。いまはそんなことを言っている場合ではありません。いまは”あの”ハルナが我々に敵として立ち向かうかもしれないのです。しかも創造者のうちの一人が、そのハルナを……あの力を操るのですよ?その対策を立てるべきじゃないですか、ガブリエル?』
『……そ、それはそうですが!?』
サヤのことを迂闊に信用するラファエルの対応に驚愕するガブリエルに対し、ラファエルは静かに気付かせるようにそれを諭し、サヤはその状況をただ静かに聞いていた。
ガブリエルはラファエルの説明に反論すべき点を探しているが、何も返すことはできずにいた。
ラファエルの言う通りに戦う可能性のある相手がハルナであるため、その対応が自分たちでは敵うはずがないともわかっている。
オスロガルムに対峙する際の訓練では、最終的には大精霊と大竜神が全員で襲い掛かっても、誰もハルナに攻撃を当てることはできず、本当の戦闘ならばこの身が危うくなる結果となった。
そんな能力を持つハルナに、自分たちでどうにかできる筈もないことはガブリエルにも判っていた……その事実を認める認めないにしても。
そして、最終的な結論を導くためにサヤは、大精霊に再度確認を取る。
「それで……どうすんの?アタシと手を組むの?組まないの?」




