6-320 ハルナがいなくなった日13
「私たちが手伝う……」
「そう、アンタ達もハルナをなんとかしたいと考えてんじゃないの?だったらさ、ここは協力しておく方がアンタ達もいいと思うけどね」
ステイビルは、サヤからの提案にどのような意図が隠されているのかを思考する。
だが、ハルナという大きな力が今はない以上、サヤからの提案が最善なようにも思えてしまう。
大精霊という存在もあるが、大きなる存在に対して何かできることがあるかといえば、先ほどの話からしてもできることは少ないだろうと判断する。
そんなステイビルにサヤは、逃げ場がないと悟っているかのようにもう一つ提案をしてみせる。
「それとも他に何かいい手があるなら、アタシにもそれを教えてよ。それならアタシがアンタ達の命令に従ってもいいよ……どうする?」
「……」
こうして、ステイビル達はサヤとハルナを救出するために協力をすることが決まった。
「ラファエル達はどうなの?何か知ってることはないの?」
この場にはいないラファエルたちが何か知っている情報はないかサヤは尋ねる。
その言葉を受け、エレーナは奥の部屋へと下がっていく。
そして、数分経ち再びこの部屋に戻ってくる……その後ろには、人の形をした水の大精霊がエレーナの後ろについてくる。
「ガブリエル様……」
『あぁ。挨拶はしなくてもいいよ、ステイビル。今どんな状況かは、なんとなくだけどわかってるからね』
この場に現れたガブリエルの姿をみて、ステイビルは片膝を付いてすぐに頭を下げた。
ガブリエルはその姿を見て、今はそういう時ではないと判断しステイビルに立ち上がるように告げる。
そう告げられたステイビルはその場に立ち上がると、その横を通り抜けエレーナの前に立ちサヤと対峙しする。そして、もう一度振り返りエレーナたちに向かって上半身をやや振り返り半身の姿勢となる。
『これより、言葉遣いを普通に戻させていただきます。これまではラファエル様に命令によって、あのような態度と言葉遣いでせっしておりましたが……もう今までの流れを知っているステイビルたちには必要ないでしょう』
そうつげて、もう一度サヤに対して正面を向きその手を身体の前に合わせて重ねる姿勢をとる。
『初めまして……この世界を創造された剣の創造者様。わたくしはラファエルより生み出された、ガブリエルと申します』
「あぁ……アタシは知ってるけど。アンタ、確かハルナがいた町にヴェスティーユとやり合った敵だよね?なんでそんな挨拶するの?」
『姿はあなたの姿ですが、その中にいらっしゃる存在に対して行った挨拶です。あなたが依り代のため、そのように見えてもおかしくはないかと』
「あぁ、そう?なんか色々とわかってるみたいね……なら、話は早いか?それじゃぁ……」
サヤがその立場を利用し、ガブリエルに対して命令をしようとした。
だが、それを察していたガブリエルは、サヤの言葉を遮るように告げた。
『……もう少しお待ち下さい、既にラファエル様には声をお掛けしておりますので』
「へぇ……あぁ、そう?それじゃあ、なるべく早くね」
サヤとガブリエルが言葉を交わしてから十数秒した後、この場所に一つの大きな存在が突然姿を見せようとした。
光の粒子が集まりそこに人の形が現れ、風とは違う空気の波がステイビルたちに吹きつけた。




