6-299 交代
ハルナの頭の中には、盾の創造者の言葉がサヤの言葉を邪魔するようにハルナに説得を続けている。
それでもハルナは、サヤの言葉に意識を集中させ、自分の知らない情報を取り込もうとした。
「サヤちゃん、さっき一度つながると解除できないって言ってたけど……その後ってどうなるの?」
「どうなるって?アタシにもわかるわけないだ……ちょっと待って」
「?……う、うん」
「……一度つながればこちらから解除せぬ限り、それを外すことは叶わぬであろう」
「――!?」
声自体はサヤの声だが、その口調はつい先ほどまでのサヤの礼儀も何もない崩した言葉とは違う色で語られていた。
ハルナはそのことに対し、中身が入れ替わったかのようにサヤのことを一瞬にして警戒する。
「そちらから聞いておきながら……だが、この変貌に驚いているのであれば判らぬ話でもない」
「サヤちゃん……じゃないよね?」
「我は、サヤとつながった……お前が言う”剣の創造者”と言えば判りやすいか?」
その言葉が聞こえたと同時に、サヤの頭の中でずっと聞こえていた盾からの声がピタリと止まった。
そのことを知っているのかはわからないが、サヤの身体を使った存在はさらに言葉を繋げていく。
「気付いておるかもしれんが、以前はキャスメルという者に身体を借りてお前たちと会ったこともある」
「で、でも!?さっきのサヤちゃんの話しだと、”普通の人”だと繋がることができないって……」
「あぁ、そうだ。何の”属性”や適性がない者たちには……な」
剣の創造者の話しでは、カステオやキャスメルやステイビルは歴代の王家であり、繋がる素質はあったという。西の王国でシュクルスが黒い瘴気に対してこの剣を扱った際には、特につながっていなくても剣の能力には何の問題もなく発揮できるのだという。しかし、それ以上に創造者からの能力を得るためには、それを扱う者にそれなりの能力が必要になると説明した。
「……だが、王家の者たちであっても、我々の能力を移譲できる者の条件は限られている。だからこそ、ハルナ。お前は目を付けられているのだ……その盾の者にな」
サヤの視線はハルナに向けられているが、その意識は背中に背負っている盾に向けられていた。
だが、これだけ無防備な状態でも剣の創造者はハルナに何かをするわけでもなく、さらにハルナに情報を与えていった。
「この者と同じで、我々とつながれる者は今までの時間の中でも存在しなかった。いや、つながる必要さえもなかったのだ。しかし、お前たちが現れたことにより、この世界の均衡は崩れる可能性があることが判明した」
「それじゃあ、世界が崩壊するのは……私たちのせい?」
「そういうわけではないが、お前たちの存在がそれを引き起こすに必要な力を持っているということだ」
剣の創造者からの言葉に、ハルナは衝撃を受ける。
否定はされているが、その言葉は自分を傷付けないようにと気遣われたものであると判る。
しかし、相手から「そういうわけではない」と、さらにもう一度ハルナを気遣う言葉が掛けられた。




