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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第二章 【西の王国】

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2-75 尋ね人



――カチャ


外から掛けられていた馬車の扉の鍵が開く音が聞こえた。

依然、窓は閉じられたままで外の様子は全く分からない。

人が集まる音と防具の金具が、ガシャガシャとぶつかり合う不規則な金属音が周囲で起こっている状況を判断できる材料となっていた。

何の前触れもなくドアが乱暴に開かれ、そこから見えるドアの外には、警備兵がこの馬車を囲っているのが見えた。

ドアを開けた、警備兵が馬車の中を覗いて告げる。


「おい、順番に降りて来い。怪しい動きはするなよ、お前たちは警備兵により包囲されてるのだからな!」


ハルナたちには全く抵抗する意思はなかった。

抵抗をする意味もなかった。

しかし、こんなにまで好戦的な態度で接してくるのかは、これも東西の文化の差なのだろうか。

ハルナは自分の中でそう結論付けて、おとなしく相手の指示に従うことにした。

降車する時は、乗り込んだ逆の順番で降りていった。

降りた先に三名の警備兵が並んだ場所があり、最初に降りたソフィーネにこちらまでくるように指示する。

ソフィーネは何の問題もないといった様子で、呼ばれた場所に向かうと両手を頭の後ろに組むように指示された。

指示通り従うと、そこからボディチェックが始まる。

警備兵もその辺りはわきまえているようで、チェックをする役目は女性が行っていた。

ソフィーネは腰に隠していた短剣を数本、没収された。

ハルナは渡された冬美のアクセサリが入った箱を没収された。

が、既に身に着けている精霊の指輪と冬美のブレスレットはそのままで良いと許された。

クリエとカルディは幸いにも、何も取られることはなかった。

四人のボディチェックが終わり、ハルナたちは山を削った洞穴の中に誘導されていく。

薄暗く湿った穴の中を、先頭の警備兵が持つ松明の明かりと、左右交互に壁に設置されているオイルランプの明かりが洞窟の中を明るくする。

ハルナは王選参加見極めの時に入った、あの場所を思い出す。


「よし、この中に入れ」


牢屋の中に入るように指示され、それに従った。

入り口からの明かりは届かないが、今場所から入り口の明かりが確認できるためさほど遠くない場所のようだった。


――ガシャン……カチャ


牢屋の入り口のカギを閉められて、これでここからは出られなくなった。


「お前たちのことをどうするか、現在協議中だ。ここで大人しくしているんだな。何か話したいことがあれば呼ぶがいい。誤魔化そうとしたり、嘘を言うと痛い目に遭うからな。よく考えて正直に話した方がいいと思うぞ」


そういうと、警備兵は洞窟の入り口まで戻っていく。


「完全に私たちのこと疑ってますねぇ……」

「そうね。私たち、怪しいわよね……やっぱり」


クリエは、自分が立てた今回の作戦を後悔している。

見通しが甘く、相手の状況や自分たちがどう思われるかなど、考慮されていなかったのだと。

ハルナからの言葉に、余計にクリエは落ち込んだ。


「でも、私はこれでいいと思いますよ。あの時には調べる時間もなかったですし、今現在も危害を加えられる状況でもなかった。相手の敷地内にも問題なく入り込めたわけですし、ここまでは何も問題ないと思いますよ」


ソフィーネが今の状況を精査し、落ち込んでいるクリエに自分の考えを伝えた。


「そうです、クリエ様。予想通りに進まないことはよくあることです。ですが、この状況を判断して解決していくこともよい経験になりますよ」


併せて、カルディもクリエの選択が問題ないことを同意する。

ハルナも、その意見に賛同して次の行動を相談する。


「それで、これからどうしましょう?」

「もう少し、相手の出方の様子を見ましょうか」


余裕のあるソフィーネの対応を見て、ハルナは言われるままにこの状況を見守ることにした。



数時間が経過したころ、警備兵が食事を運んでくる。

数個のパン、水が入ったポットと人数分のグラスがトレイの上に乗せられていた。

牢屋の下にある四角い小窓から、ハルナたちに手渡された。

食事を運んできた警備兵は周囲を見渡し、問題がないと確認をするとヘルメットを取りその素顔を見せる。

最初の関所で、囲まれた警備兵の中でハルナたちに話しかけたあの若い男だった。

ハルナはそのことに気付き思わず声が出そうになるが、その男に静かにするようにと人差し指を口元に当てる。


「お前たちディヴァイド山脈を通って、東の国から来たと言っていたな?」


男は大きな声で話せば響き渡ってしまう洞窟の中で、誰かに聞かれないよう注意しながら小声でハルナに話しかけた。

ハルナもその雰囲気につられて、大きな声にならないように小声で返答した。


「はい……そうですが。それが何か?」

「そうか、もし知っていたり見かけたことがあるなら教えてほしいのだが……」


男は話しかけながらも、周囲を確認して慎重に話す。


「その道中で西の国から来た、女性の警備兵とすれ違ったりしなかったか?」

「――!」


ハルナは女性の行方を心配そうに聞いてくる男が、その女性との間に何か事情があることを感じ取った。

だが、まだこちらが持つ情報を提供するには、駆け引きのタイミングとしては早すぎると判断した。


「……あの、その方が何か?」

「……すまんが、駆け引きをしている場合ではない。返答によっては、お前たちをここから出してやろう」


ハルナは、相手が焦っていることを感じ取り、ここは変に駆け引きしない方が良いと感じた。


「……その方のお名前は?」

「探している者の名は、”アーリス”という。私の……妹だ」




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