6-286 説明
ハルナは、盾の創造者からの言葉に流れた涙が引いていく思いがした。
「あなたは……命を……命を何だと思って……」
『命?あぁ、私が設定した時間制限ですね。いなくならなければ、この世界に生き物が溢れかえってしまいますからね。それを何だと思っているのかと問われても、設定ですとしか、お答えしようがありませんけど?』
「――違う、そういうことじゃなくって!?」
『ならば、私に説明して頂けませんか?』
「説明?何のですか?」
『以前私の存在の証明をするために、”鳥”というモノを創り出しハルナに持たせたことは覚えていますか?』
ハルナにとって衝撃的だったあの出来事は、忘れようとしても忘れることのできない経験だった。
「は……はい」
『ならば、なぜあの時には同じ反応を見せなかったのですか?今の”狼”たちと同じことをして、なぜ今だけそのような反応を示しているのでしょう?』
盾の創造者は興味津々な意識を向け、ハルナからの返答を待つ。
「そ……それは」
背中から投げかけられた質問に、どう答えるべきかとハルナは戸惑いを見せる。
きっと今の自分の感情も、盾の創造者にはきっと見抜かれているだろう。
先ほどの動揺についても、”わかならい”と言うくらいなので、ハルナの感情は筒抜けなのだろうと思った。
それに対してハルナは起こる気もなく、質問に対してのいい答えを探している。
二度とこのような事――創造者の気まぐれによって生き物が消される――を起こさせないために。
だが、いつまで経っても返答が得られない盾の創造者は、ハルナに対して自分が思いつく理由を告げる。
『もしかして、ハルナはこのように考えているのですか?』
そうして、盾の創造者は自分がハルナがどのような思考を持って感情を揺るがしたのかを語り始めた。
ハルナは、生物とのつながりを大切にする傾向があるため、今回の家族と思われる狼の群れを勝手に消してしまったことに対して自分に怒りの感情を持っているのだと話した。
「……」
そう告げられたハルナは、盾の創造者から告げられた内容は間違ってはいないため反論することはできなかった。
だが、その伝え方や態度に対して、自分よりも上の存在だとしてもハルナの中では、それらを見逃すことができなかった。
……とはいえ、ハルナ自身もこの喉の奥に引っ掛かっているような不快な感情を言葉にし、盾の創造者に対して反論する言葉が並べることができなかった。
『……どうです、ハルナ?何か間違ったとこはありますか?』
自分の立てた仮説の正誤を確認するかのように、盾からの声が頭の中に流れてくる。
ハルナはその言葉すらも腹立たしく思えるが、Yes/Noを問われ、それ以外の答えを返すのは良いものではないとハルナは仕方なくその質問に応じた。
「……間違ってはいません」
『……ですが、まだ何か納得がいかない様子ですね?そのお気持ちをお伺いしても?』
そう言われたハルナは、自分でもうまく伝えられるかどうかわからないと前置きをする。
その言葉に対し、盾の創造者は”問題ありません”との返答があり、ハルナはゆっくりと自分が相手に対して思っていることを語り始めた。
「わたし……あなたの言葉が冷たくって……なんだか他人ごとのような……」
だが、その言葉は途中で中断されてしまった。
ハルナの背後から、何かが着弾して破裂したような音がこの辺りに響いたために。




