6-264 キャンプの準備
「これでいい?アル」
「あぁ、そんなもんだろう」
「あ、ニーナさん!私が持ちますよ!」
「は……ハルナ様にそんなこと……」
「いいから、いいから。ほら貸して?体力が戻ってきたとはいえ、まだまだ本調子じゃないんだから」
「あ、ありがとうご……ございます」
「よし、こっちのテントの用意もできたぞ!ひと段落したならば、少し休憩しよう」
「「「はい!」」」
ここは、王都から少し離れた山を登った森の中。
比較的穏やかな性格の野生動物が生息する平原の近くの川が流れる場所で、ハルナたちは野営の準備をしていた。
これはハルナの案で、実施された訓練という名のキャンプだった。
この世界に来て状況が落ち着いた頃に、エレーナとアルベルトとキャンプに出掛けたことがいい思い出として残っていて、いつまでも楽しかった記憶がハルナの中に忘れられないでいた。
ふと、そのことを口にすると、エレーナたちは急いでその準備を始めた。
ハルナは、自分できっかけを作ってしまったが、そんな時間はないのではないかと伝えたが、傍で見守るラファエルが言うには”創造者もそこまで急いでいない”と言う回答だった。
そこから正式に、キャンプへ行くことが決定した。
そこに参加したのは、ハルナ、エレーナ、アルベルト、ステイビル、ソフィーネ、それとマーホンとニーナだった。
ニーナを呼んだのはハルナで、もしも世界が崩壊してしまった場合にすこしでもニーナにも良い思い出をと考えた結果だった。
このことは国民に知らせることなく、このまま黙ったままにするとステイビルは決めた。
もちろん、前王のグレイネスにさえも伝えていない。
自分たちだけ、楽しむことに後ろめたさもあったが、この者たちがハルナに一番近く、精神的にも力になってくれる者たちだった。
ステイビルが王都を離れ、昔のように気軽に出ていくことに問題はあった。
だが、王の命令は絶対であり、迷惑を掛けない程の準備はしておいた。
世界が急変した時のため、ラファエルが隠れて同行している。
王都に戻るには時間がかかるが、モイスを呼べばすぐに移動できるとのことで、その問題も解決している。
「久々に身体動かしたから、疲れるわ……」
ハルナが用意した土の属性で創り出した椅子に座り、全員がソフィーネの淹れてくれたお茶を手にしている。
「……だから私が休むところ、作ろうかって言ったじゃない!?」
「そんなことしたら、楽しくないし、わざわざ外に来た意味ないでしょ!?こうやって苦労してみんなでやるのが楽しいんじゃないの!!」
「そうですよ、ハルナ様。私も久々にこういうことしましたが、たのしいですね。フフフ……」
マーホンも行商で方々を移動した時、外で一晩を明かしたりすることは多かったという。
あの時は少人数で移動するために行っていたが、”外に泊まる”と言う行為自体は行ったことがないため、これから起こることを子供のように目をキラキラ輝かせていた。
「そ、そう?ならいいけど……ニーナさんはどう?」
「はい。疲れますけど、皆さんと一緒で……楽しいです」
「うん、よかった!でも、無理しないでね?」
「さて、そろそろ食事の支度にとりかかりませんと」
アルベルトの提案によって、ハルナたちは夕飯の支度にとりかかった。




