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問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』  作者: 山口 犬
第二章 【西の王国】

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2-71 手助け



「そこからは、先程の話と同じじゃよ……」


冬美は記憶を戻してから、病気になってしまった。


「そうでしたか……お婆さんも苦労されたんですね」

「はん!こんなの、苦労でもなんでもないよ!」


ハルナは、この話を聞いてこの世界の人たちの懐の深さに驚く。

エレーナもアーテリアもディアドも。

全員がそうかというとそうではないのかもしれない。

だが、ここまで助けてくれた人々を思うと、そう思わずにはいられなかった。


「最後に、もう一つだけ教えてください」

「別に何度でも、何でも聞いてくれて構わないよ。何だい?」


ハルナはその返しに、にっこりと笑いかけた。


「冬美さんのお墓……ありますか?」

「あぁ、この裏の山にある。今日は暗いから、明日連れてってあげるよ……そりゃあ、待ってた人が来ればフユミも喜ぶだろうさ」


そう約束して、ハルナたちは食べた物の皿やグラスの片付けを手伝う。


「いいんだよ、そんなことしなくっても!?」

「あら?ここはお客さんも手伝うところなんでしょ?」

「フン!こき使ってやるからね!」


老婆に笑顔が戻った。

片付けは全員で行った。

早く片付いたと、老婆は喜んで自分の部屋に戻っていった。

部屋に入っていく姿をみて、ハルナたちも階段をあがり部屋に戻った。


「ごめんなさいね、取り乱してしまって」


部屋に戻った、ハルナの第一声だった。


「ハルナさん……こんな時なんですけど」


クリエは下を向いたまま、ハルナに話しかける。


「な、なんでしょう?」


ハルナは何か言われるのではないかと、ビクビクして答える。

クリエは、真っ直ぐ前を向いてハルナの顔を見つめる。


「お風呂に行きませんか?そのぉ……二人だけで!」


ハルナは念のため、カルディとソフィーネの顔を見て問題ないか伺う。

どちらも問題なさそうだった。


「えぇ、いきましょうか……」


二人はそろって、浴場へ向かった。

幸いにも誰も使っていなかった。

ハルナは扉にかかっている札を、”使用中”に変えて中に入る。

何を言われるのか気になって仕方がないハルナは、部屋を出てから一言も口を開いていなかった。

二人は脱衣所で服を脱いで、籠の中に入れた。

真っ先にクリエが、浴室へ入る。

それに続いてハルナも入っていく。

二人はそれぞれ浴槽に入る前に身体を流し、クリエから浴槽の中に浸かった。

また続いて、ハルナも浴槽へと入っていく。

先程は常に浴槽内に三人いてやや窮屈ではあったが、二人だと足を伸ばしても全く問題のない広さだった。


「ふー……やっぱりお風呂は気持ちいいですねぇ」

「そ……そうね。気持ちいいわよね」


クリエはゆったりと浴槽の縁に背もたれてリラックスしていたが、急に身体を起こしてハルナに向きあった


「やっぱり、先ほどの話は気になりますよね……お知り合いが亡くなられてたみたいですし」


クリエはハルナの手を取る。


「でも、またすぐ元気になりますよね?私、明るいハルナさんの方が、素敵だと思ってます!……え、あ……私、何言ってんだろう!?ご……ごめんなさい。今の忘れてください!?」


掴んでいたハルナの手を離し、恥ずかしいのか今の表情を両手で隠した。

どうやらクリエは、落ち込んでいた自分を励ますためにお風呂に誘ってくれたようだった。

ハルナは、少しホッとした。

異世界から来たことを黙っていたことが、気に障ったのではないかと勘違いしていた。

ルーシーにも伝えていないが、ソルベティから聞いてる可能性がある。

ただ、クリエには伝える機会も必要性もなかったため、そのことは話していなかった。


「ごめんね……心配かけちゃって」


その言葉に対し急いで覆っていた顔を出し、首を横に振った。


「大丈夫です!ハルナさんが私に対して、気にすることはないです!!」


ハルナが気に病まない様にと、クリエは必死に訴えていた。

ようやく二人の気持ちも落ち着き、お湯の暖かさで心もゆったりとした頃にハルナはクリエに話しかけた。


「クリエさんは私が、他の世界から来たっていう話……どう思ってるの?」

「正直、信じられないですねぇ。いまこうしてハルナさんとはお話もできますし、精霊様とも契約されていますし……だけど、先ほどのお婆さんの話とか、別の世界の食べ物の話とか……本当にあったんだなぁって思うしかないですよねぇ」


クリエは異世界から来たことに対しては、悪い印象はなさそうでひとまず安心した。

ハルナは次の話題を投げかける。


「あと、私にすごく良くしてくれているんだけど、何か理由があるの?」


その質問に対しては、すぐに返答が返ってこなかった。


(あれ?まずいこと聞いちゃった?またやっちゃったかしら!?)


そんな、表情を崩さずに心情的には大荒れなハルナを余所に、クリエは遅れて話し始めた。


「……あのぉ、怒らないで聞いてくれますか?」


ハルナは、崩さない表情のまま、笑顔で頷いた。


「私、ひとりっ子なんです。でも、ずっとお姉ちゃんがいたらいいなぁって思ってたんです……ハルナさんはそんな私の姉の理想で……あの、勝手に……お姉ちゃんって……思ってて……その……ゴメンナサイ」

「――え?あ、うん。大丈夫よ!そうなんだぁ、ふーん……」


ハルナも急に、もう一人妹が出来たような気分になった。

が、少し動揺してしまっていた。

「あのぉ……迷惑……ですか?」


”迷惑”という言葉が、何に対してかの言葉かは判らなかったが、とりあえずこの答えは保留にした方がいいとハルナは本能的に感じた。

と、ちょうどその時。

クリエの鼻から、赤い血が流れてきた。


「ちょっと、クリエさん?のぼせてるんじゃ!?」

「え?」


ハルナは、急いでクリエを脱衣所の場所へと誘導した。

ハルナは、変な流れを乗り越えて少しホッとしていた。




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