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「エレーナ……あの盾は、今どこにあるの?」
「盾?国宝の?それなら、キャスメル様が使ってらっしゃる王室の奥の部屋に隠してあるわよ……ってバラしちゃダメなんだっけ!?でも……ハルナだからいいか?」
ハルナの記憶にある位置と、その場所は一緒だった。あの時の盾は、ハルナが元素を流し込むと干割れて砕け散ってしまった。
あの盾はニセモノだと、ラファエルは言っていた。
しかし、あの世界ではそれ以上の調べることはできずに、再びこの世界へと戻ってきた。
「ねぇ、その盾……見せてもらえないかなぁ?」
「え?何言ってるの!?あれは王家の人たちだけで……って、ハルナも一応はその予定になってるんだっけ?」
エレーナは判断に困り、近くにいるマーホンとソフィーネに助けを求める。
だが二人とも”知りません”と言った表情で返されてしまった。
「それじゃ……そろそろ、ステイビル様にもハルナのこと話しに行ってみようか?なんかまだ、私たちに話してないこともあるんじゃないの?もしかして……」
「そうね……それを確かめるためにも、ちょと盾に触らせてもらいたいの」
エレーナは冗談半分、本気半分で、ハルナがまだ隠していることがあるとけしかけた。
だが、その答えは否定ではなく肯定であったため、エレーナは少しだけ驚いた。
エレーナは一つ息を吐き出し、気を取り直してこれからの行動の準備を始めていく。
「それじゃ……ソフィーネ。ステイビル様の状況を確認してもらっていい?私たちがお話があるって伝えてくれない?」
「畏まりました」
そう言ってソフィーネは、王室へと向かいステイビルとの面会を調節しにしに部屋を出ていった。
その結果、ステイビルはいま公務の最中ということで、ソフィーネは出直そうとした。
だが、その声を聴いていたステイビルが、扉の中から”十五分後に来て欲しい!”と声をソフィーネの声に向かって伝える。
ソフィーネはその対応に扉の向こうから頭を下げ、そのことを依頼主へと伝えに戻った。
そのことを聞いたエレーナはきっとハルナに会うために無理やり時間を作ったのだろうと考えたが、待っていればいつまでも仕事を続けるのがキャスメルの性格だったため、これでよかったのだとも思った。
ハルナたちはステイビルの扉の前まで到着すると、二人の警備兵はハルナに向かって敬礼をし、その後両開きの扉を二人で開け中に通るように勧める。
その二人にお礼を言って、エレーナよりも先にステイビルの待つ部屋へと入っていく。それが王宮内の礼儀だと、事前に教わっていたため教わった通りに行動した。
「お忙しいところ、申し訳ありません。ステイビル様」
ハルナは扉が完全に閉まる前に、外で警備をしている二人にも聞こえるようにステイビルに感謝の気持ちを伝える。
近しい間柄ではあるが、今は公務の時間であり国王であるステイビルの時間を使わせてもらっていることへの感謝も周囲に示すことが重要だと、これもあらかじめエレーナから聞かされていた。
「あぁ、よく来てくれた……そちらに座ってくれ」
ステイビルがハルナたちに勧めた先には、どこかで見たことのあるようなソファーだった。




