6-235 三つの提案
ステイビルは三人の視線を受けながら、自分の世界に入り、エレーナから問われた問題について考察していく。
他人の目が気になって集中できないなど、一国の王がそんなことを言い訳にするはずもない。
それぐらいできなければ、国を治めることなどできるはずもない。
「……よし」
ステイビルは静かで力強い声で
「それではその内容……お聞かせいただけますか?」
「もちろんだ。これから話す内容の感想も聞かせて欲しい。では、まずは……」
ニーナの対応について話し始めた。
ニーナは一旦、王都で預かることにした。
とはいえ、西の王国の王女であるニーナであれば、貴賓扱いとなり、いつも相手をしなければならない。
だが、状況代替わりをした東の王国の現状では、そのような時間を用意することは難しい。
そこでステイビルはニーナを、『メイド見習い』という名目で王都に来てもらうように考えた。
もちろん、本当のメイドという扱いでないが、最終的には西の王家で養われた作法や知識などを王宮内の上位メイドたちに指導してもらえないかという思いもあるが、その場ではそれを言うつもりはない。
この条件で納得してもらえなければ、この話自体もないことになる。
ニーナの可能性は低いが、カステオが何らかの条件を付けてくることも予想される。
なので、その可能性を事前に潰すために『こちらが提示する条件以外の条件を付けた場合もこの話は無効』であることを告げておくことにした。
これに関しては、エレーナもマーホンも何の意見はなかった。
次に、説明をしたのはキャスメルへの対応だった。
「キャスメルは、ニーナを受け入れる代わりに、西の王国へ行ってもらおうと思う……」
「それって……まさか、事実上の追放なのでは!?」
エレーナがその案に対して指摘をする、これは国の内外に関わらず、大きな問題になりそうだと感じたからだった。
「ちがうぞ、エレーナ。もちろん、エレーナが心配していることは承知をしているつもりだ。他の国にも親族の不仲のことで、付け入られやすい状況は作りたくはないからな」
「では……どういうことですか?」
ステイビルが説明するには、キャスメルを大使として西の王国へ行ってもらうのだという。
いままでそう言った存在がいなかったのが不思議なくらいで、ステイビルが西の王国に滞在していた時に、思い描いていたものだった。
キャスメルであれば、王宮の親族であり、ある程度の権限もあるため――もちろん王の承諾が最終的には必要になるが――西と東の政治的な問題もスムーズに解決できるのではないかと考えていた。
本当は、もう一つ別な含みもあったのだが、これはまだ不確定要素が多いため、ステイビルはこの場においては伏せておいた。
「これについても、ニーナの受け入れ条件の内の一つと考えている……が、ニーナを受け入れるのであれば、”カステオは”これは断らないだろうと考えている。
「それじゃあ、あとはキャスメルさんだけですね?」
「あぁ、そういうことだ。ハルナ……」
「それで……もう一つのハルナ様については?」
マーホンが、真剣な表情と声色でステイビルに問い質し、ステイビルもそれに応えた。




