6-228 対応の評価
「ステイビル様……そこにお座りください」
「――!?あ……あぁ」
「エレン……」
「アルは少し黙ってて……」
静かな物言いだが、明らかにエレーナのその声には、不快な感情が含まれていた。
「エレーナ……言いたいことは……わかっている。が、と、とりあえずエレーナの話を聞かせてもらう……」
椅子に座ったステイビルを、上から腕を組みながら上から見下ろすエレーナ。
本来なら不敬な態度ではあるが、
「……そうですか。では、言わせていただきます。先ほどのアレは一体何ですか!?」
「あ、アレ?……とは?」
「先ほどの応対ですよ……どうして”ニーナ様”のこと、すぐにお断りしなかったのですか!?」
「そ……それは……」
「……わかっておりますよ。ニーナ様をお気遣いになられたのでしょう?きっとあの場でニーナ様のことを断ってしまうと、ニーナ様のお身体がさらに悪化してしまうことは、容易く想像できてしまいますからね?ですから、一応あいまいな形をとり、ニーナ様のことを気遣われたのですよね」
「え!?……あぁ……さ、さすがだな!よく見ているな、エレーナは!?」
「とはいえ、あの対応は演技にしてもいただけませんね……もう少しどっしりと構えていただきませんとニーナ様だけでなく、ハルナ様にも失礼になります」
エレーナが言うには、こういうことだった。
ステイビルは東の国の王であり、カステオの言う通り歴代の王の中には正妻以外にも相手を用意していることがあった。
それは正妻からもそのような要望が挙がってくることもあったが、王の一存でに決めてしまうこともあったという。
その際、どちらの場合も反対する者は少なかったという。
『――王の御心のままに』と。
「……ですが、当時の王たちは自分ためだけにそれを行っていたわけではありません。国の将来を考え最善の未来を考えた上での行動であったと聞いております。それに、王はどちらの女性もしっかりと大切に思っておられたとのことです」
「判った……エレーナの言いたいことがな。すまない、いつも迷惑をかけてしまうな」
「いいえ、ステイビル様。わたしやアルベルトも、ステイビル様のお傍でこの国を良くするためと、あの日みんなで誓ったではありませんか。そのようなお言葉は不要です……それよりもしっかりなさってくださいませ!」
「あぁ!その通りだな!すまない、これからも私に力を貸しておくれ」
「「はい!」」
力強いステイビルの言葉に、エレーナとアルベルトは片膝を付き、胸に手を当てて改めて忠誠を誓う。
その裏側でエレーナは、これから気が重くなる事態が待ち受けてくることに頭を悩ませている。
きっとステイビルは、これからハルナのところに向かい、今起きたことを相談するだろう。
そのことに対してどう思うかというのもあるが、反対にハルナの今の状態を知ったステイビルがどう思うのかということをかんがるだけで、エレーナの胸は押しつぶされたように苦しく痛む。
(ハルナとの婚姻が決まる前に、ニーナ様のことが判っていれば……ううん、そんなことステイビル様ができるはずないし、だってステイビル様はずっと……)
この場は解散となり、ステイビルはすぐに王都に向かう準備を始めた。




