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組再訪

 ある日女は、普段着で化粧気もなく、出て行くのに男は出会った。

 「どこに行くんだ。」

 「親のところ」


 女は、少し迷惑そうだったが、男は付いて行った。


 娼婦館から少し離れた、貧民街に、女の家族は居た。病弱な母親と年端もいかない弟に妹

たち。細々と、日々を女の持ってくる金で、繋いでいる。


 娼婦にだって家族はある。その当然のことが男には驚きであった。総てが総て、家族の生活

の為に身を売っている訳ではないだろうが、多くの娼婦の後ろには、こんな家族が控えている

ということが、不思議であった。そして、女の体一つで、家族を支え、組の男達の口も潤しているという事実が、ひどく虚しく思えた。娼婦がではない、そんなものに口を潤してもらって、意気がっていた自分の生活にである。



 そんな時に、租界の賭博場で、かっての手下に出会う。


 「あ・・・兄貴、探したぜ。親分も、兄貴が生きていたのを知って、待っているんだ。」


 手下に懇願されて、結局は組の事務所に親分を訪ねる。

 噂には聞いていたが、抗争相手とは手内をしていた。そして、相手の組の幹部を副組長に迎

えたいた。手下は、この副組長を信用できないと言っている。男も、一目見て、妖しいと思っ

た。

 あの夜、抗争相手の組長を倒した時の夜、タイミング良く相手の組員が出て来たこと、そし

て、逃げる彼をしつっこく追いかけて来た男。副組長に納まっている男の様な気がする。しか

し、証拠が在るわけではない。


 親分は組に戻れと言ったが、男は、義理は返したので、旅に出たいと答えた。残念がる親

分。副組長とお前が居れば、上海を支配できるのにと述べる。


 男は、事務所を後にする時、親分を別の部屋に誘って、


 「親分は、豪胆で度胸も良い、仁義にも熱い、でも、他人を信用し過ぎる。何かと物騒な時代だ。気を付けてください。」


 そう言い残して、組を後にした。



 その後も、気楽に租界の繁華街で、博奕をしたりして過ごす。彼女は相変わらず、娼婦を続

けている。男は、儲けたり擦ったり、それでもなにがしかの金は手にしていた。女との関係は、結ばれたからと言って特に変わりはなかった。ただ前よりは、客とのもめ事に口を出すことが多くなったくらいである。また、溝鼠は男の存在に、気おくれして前のように無体なことは言わなくなっていた。


 ところで、組の話であるが、何時しか、組の中で副組長の勢力が大きくなっていた。そしていつしか、組を割って独立することになる。


 男は黙って見ていた。しかし、新組織は男のことが気になるらしい。租界まで出張ってきて、男にちょっかいを出すこともあった。が、男はもめ事を嫌って適当にあしらっておいた。

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