プロローグ
女は欲情を売る。男はスリルを買う。
男と女の駆け引き。
甘い蜜の味に溺れた青年は
放蕩世界の掟も忘れて
享楽三昧の日々に酔う
放蕩世界の掟には許しなどありはしない
黒い影が忍び寄り冷たく光る引鉄を引く。
蜜の池にまどろんでいた青年は
胸を血染めにして崩れ落ちる
女は驚き駆寄って
血まみれの青年を抱き起こす
息絶え絶えに青年は
濡れた瞳に女を見上げるばかり
女は声もなく涙を流した
麻薬に身をやつし春を売る女
そんな女に、愛を見る男
欲望だけが総てを支配している
現世の下
快楽を求める欲望だけが
真実である
麻薬に身を腐らし
愛欲に体を崩そうとも
そこが、安らぎの場所
そこが、慰めの隠れ家
そこ以外に生きる棲家を知らない
妖しい煙に明日を望み
肥溜のように男の欲望を飲んだ女を
金貨投げ出し欲情のまま抱き
一時の・・・・この刹那の
生き様に総てを捧げる
女は欲情を商売にし、男は命を賭ける
後戻りできる道もない
哀しい流浪の
果てに受けたのは
冷たい鉛玉
慰めは、死に際の
病持ちの女の
涙に塩っ辛い接吻