7・戦闘狂
「ガスタービン凄いな・・・」
みるみる加速して遠ざかる島風と旗風。前衛を依頼したらノリノリで飛び出して行ったよ、島風が。
「お姉ちゃん!あんまり本隊から離れた前衛にならないよ。速度おとして!」
旗風が居なきゃアレの制御は不能かもしれない・・・
旗風の言うことを聞いたようで速度が落ちていく。
多少のうねりはあるが綺麗な空と海原が広がる。ここに危険が潜んでいるようには見えない光景だった。だが、実際、昨日、俺たちはクラーケンや魔船に出くわしている。ここが危険な海だと分かってはいるんだが、やはり、そうは見えない。
「ヤッホー」
そんな掛け声と共に島風から砲撃が始まった。
「こちら旗風、水中に反応あり、攻撃開始します」
もう、島風が撃った後だけどね・・・
「烏賊一杯、魚雷発射♪」
俺は金剛を見た。
「大丈夫、40キロ以内に船舶なし」
島風は一人、いや1隻で暴れまわっている。
しばらくして水柱が1つ。どうやって捕捉したのか謎だが、島風は戦果をあげている。
「こちら椎、周辺に水中音あり、策敵を開始します」
至って冷静な椎の通信に何故か安心した。
梨と椎も金剛の周りで動き始める。そうしている間にまた水柱が1つ。
「島風って高性能だね」
俺が金剛にそういうと
「あれは性能じゃないと思うよ。私も魚雷一本で沈んじゃった鬱憤あるから暴れたいよ。アレもその類いだと思うな」
なるほど。でも、あの島風、戦後に生き残ってたみたいだけど、何の鬱憤たまってるのかな?
結局、梨と椎もクラーケン一体を追い詰める事に成功した。旗風は島風の御守りに徹している様で、非常に良くできたコンビだと思う。
「こちら旗風、飛行物体を確認、警戒されたし」
旗風には一昔前の護衛艦が付けていた対空レーダーに似たレーダーがある。性能も戦後のモノみたいだ。金剛がFCS2で探る。
「かなりの数だよ。IFFの反応は魔物だね。旗風、魔物だ」
金剛のレーダーはIFFが魔物識別機能になっている様だ。何とも便利なことで・・・
「旗風、了解しました」
旗風は対空戦闘の用意を始めている。島風も暴れまわるのをやめて旗風の護衛にまわるらしい。既にクラーケンを3体倒してるがな。
梨と椎もクラーケン掃討を終えて金剛のまわりにきた。飛行するものは早期にある程度余裕を持って発見出来るから迎撃は有利に展開する筈だった。
「あ~、堕ちない。なかなか堕ちない」
金剛がぼやいている。時限信管だと爆発タイミングを測るのが難しいからなかなか堕ちない。結局、至近距離の機銃射撃に頼ることになる。梨と椎も左往右往している。
が、あの2隻は違う。旗風が猛烈な射撃を続けて、的確に群れの周辺に弾幕が展開している。
「あれ、VT信管じゃない?」
俺は他人事の様にそれを眺めていた。
「金剛さん、援護します」
旗風の通信と共に金剛の周りに弾幕が展開されていく。
「私も副砲と高角砲の換わりに5インチ積みたいなぁ~」
金剛が悔しそうに呟く。不満そうなその顔をみて、金剛も完璧じゃないんだと安心してしまった。
「あ、何で笑ってるねかな?デジタル化出来ないから困ってるのに」
戦艦金剛にはデジタルシステムで構成されたイージス艦の戦闘システムを積めない。システムを動かす電力確保が難しいからだそうだ。こんな金剛は可愛いと場違いな事を考えてしまった。
なんとか魔鳥を撃退できた。
今日はそれ以後魔物や魔船に出会う事なく夕暮れを迎え、港へ帰ることにした。
ギルドで一騒ぎ起きたのは回収した宝石を鑑定してもらった時だった。
「こ、こいつは・・・」
オッサンが固まった。
「キリリルセなんかどうやって討伐したんだ?しかもこんなに・・・」
あの魔鳥は大きな害は無いが、その金切声が煩くてとにかく逃げるしかないらしい。群れで来られたら直接攻撃されていなくとも、あまりの煩さに周りが混乱して逃げ惑う人々に死者や怪我人が続出らしい。勿論、弓や魔法で攻撃できる余裕などないらしい。
「遠距離攻撃です」
当たり障りなくそれだけ答えておいた。
オッサンは納得しかねているようだが、目の前にブツがあっては納得するしかない様子で記帳してくれた。
「全部で456イコルだ」
キリリルセは案外安いらしい。まあ、実害がない魔鳥だからだろう。