16・来襲
夜には魔の海探索の会議を開くことにして何時ものようにアハペナンマーへの啓開を実施したが、3週間も経つとこの辺りは平穏そのもの。
どちらかと言うと、アバチャウンからオヤモッテ間の警備に就く松型の方が忙しいくらいだった。
「早めに切り上げてオヤモッテ周辺を掃除した方が良いかも」
俺は昼の時点でそう告げて、金剛隊は午後はオヤモッテ周辺に戻り、青葉隊もオヤモッテより海域の哨戒に当たることに決まった。
「確かに、予想が正しいならオヤモッテ周辺が一番の通り道だけど・・・」
金剛は納得が行かない様子だった。
それも仕方がない。俺の予想は陸の魔の森を海にそのまま当てはめている。必ず正しいという保証はない。ただ、陸の魔の森と同じなら、魔族居住地近隣より少し離れた所に大きな魔の海も出来上がる。
難破魔船の方角に魔族の住む島があるなら、確実に一つの孤島しかなく、そこからの距離で魔の森と同じならば、丁度、オヤモッテ沖合いが発生率が高い事になる。マサにそこに大陸間航路がある。
「そりゃ、当たって嬉しい予想じゃないけど、金剛も感覚として同じ意見じゃない?」
頷きだけで、言葉はなかった。
「こちら阿武隈、オヤモッテ周辺に多数の船影を確認しました。応援願います」
「こちら金剛、これより応援に向かう。青葉隊も向かうように」
「青葉、了解しました」
島風の「いっくぞ~」という軽い掛声と共に3隻は加速していく、ガスタービンの加速は蒸気タービンとは桁違いに速い。秋月型はどんどん引き離されて行く。だが、島風型タービンで最大速力37ノットなのは伊達ではない。出遅れこそあれ、金剛隊を引き離していく
「難破や上陸があったら厄介だな」
「そうならないように努力するよ」
金剛は前をにらんでそう答えた。
1時間が過ぎただろうか、金剛はレーダーで魔船を捕捉しだしたようだ。
「もう10隻?」
「阿武隈より各隊、現在20隻の魔船を確認、まだ増える可能性あり」
「こちら青葉、現在18隻を確認、一部は阿武隈と重複すると思われる」
青葉から18隻となると全体は30隻近いかもしれない。青葉の視程外に2、3隻とは考えにくい。
青葉は駆逐艦の有効射程まで詰める事を優先してまだ発砲していない。
阿武隈は青葉隊の来援が速かったので同士撃ちを避けるために発砲を控えている状態だった。
不思議な事にクラーケンは確認されていない。
「あれ?誰も撃っていないのに数が減った」
金剛が首をかしげる。そして、発砲や着弾ではない光りが魔船団の中で輝いた。
「まただ」
「青葉より各隊、撃つな。この船団は何かおかしい。状況確認を最優先にせよ」




