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10・古河探検隊

 今回、古河探検隊が挑むのはオヤモッテ諸島。ここは15年前までは人が住んでいたが、今は無人島になっているという。

 魔船が多数出没する海域に存在するオヤモッテ諸島。果して古河探検隊にはどんな危険が待ち受けているのか‼

 島に魔物は棲息しているのだろうか。


 今夜、謎に包まれた魔海の島に挑む‼



 魔海を突き進む8隻の軍艦がある。艦隊の中心に位置するのは戦艦金剛、その艦橋にはこれから未知の島に挑む古河隊長の姿があった。


「今回は警戒班として楡、椎に残ってもらう。他の皆は金剛から支給された89式小銃に習熟すること」

古河隊長は各隊員に檄を飛ばす。


 オヤモッテ諸島とは、昔から大陸間航路の避難場所として知られた島である。航路から程近くにあり、諸島の中央は外海の波が入らない入り江となっている。

 島はほぼ平坦であり、主島のオヤモッテ島が腕を伸ばす様な形の半島を持ち、時計回りにパイカラ、サク、サクケシ、マタの4島が入り江を囲む様に浮かんでいる。以前、人々が暮らしていたのは標高50メートルの頂を持つオヤモッテ島と淡水湖をもつパイカラ。今回挑むのは主島のオヤモッテ島。ここには3つの集落があり、15年前までは400人が住んでいたと言われる。


 今、島はどうなっているのだろうか‼


「ダーリン、オヤモッテが見えてきたよ」


 金剛はいつも通りに古河隊長に抱きつきながら島の方角を指し示す。隊長は双眼鏡を構える。


「なあ、金剛。折角の探検隊気分を壊さないでくれない?」


「だって、あれはヤラセだし。腕時計の痕がクッキリある原住民とか今日は出てこないでしょ?魔物が出てきたらガチで仕留めなきゃ危ないよ?」


 金剛に男の子の夢やロマンは分からなかった‼


「いや、気分だよ、気分」


 そう、探検隊とは、ヤラセがどうしたではなく、気分なのだ‼


 アバチャウンからオヤモッテ諸島までは艦隊の速度で16時間。帆船ならば風にもよるが、3~4日を要する。


 現在は朝の7時。昨日の夕方に出発して15時間が経とうとしていた。


「水深と幅があるのはサクとパイカラの間。マタとサクケシの間は広いけど帆船すら通れない浅瀬だから気を付けろ」


 古河隊長は金剛に注意喚起する。


「それ、昨日私が教えた事じゃない。他に実践してほしい事があるのになかなか実践出来てない癖に・・・」


 だったらお前が調整してくれとは言えない古河隊長は金剛を見ることが出来なかった‼


 島が近づいてくる。ソナーの優れた青葉を先頭に入り江へと進入していく。


「青葉よりマスターへ、障害物になるようなものはありません。魔物の反応もなし。このまま進入します」


 入り江は外海と違い波が穏やかで上陸に支障は無さそうだ。


 アバチャウンで貰った古い地図によるとオヤモッテ島には石造り桟橋があり、内火艇の発着に使えそうだ。

 椎の内火艇が上陸班を載せて桟橋へ向かう。


 内火艇の上には陸自迷彩服に雑嚢、89式小銃の7人の姿があった。



「よし、桟橋に上陸したら全員で港町を探索する。それが終了したら青葉は島風、旗風を連れて山の村へ、俺は金剛、梨、萩を連れて外海の村へ向かう。よし、上陸‼」


「お~‼」


 掛け声が良いのは島風だけだった。後のメンバーは淡々と上陸する。


「よし、セレクター位置を確認しろ。無闇に撃つな。まずは確認が優先だ。よし、装填」


 古河隊長は全員に檄を飛ばし、自らもセレクター位置がアにあることを確認してコッキングハードルを引く。

 ガチャン、シャコンとコッキングハードルを引く音がする。


「よし、行動開始‼」


 古河探検隊は港町の探索へと向かう。そこには何が待っているのか‼




「クリア」

「クリア」

「クリア」


 3チームに分かれて建物や路地の探索を行っていく。中には原型を留めない建物もあり、探索は3時間程を要した。


「朝の探索はここまで‼」


 昼食は金剛が用意している。


「じゃ~ん。ダーリンが探検隊だって張り切ってるからカンメシだよ。災害派遣の時の余り物だけど、湯煎したから大丈夫。はい、五目飯」


 そう言って少し大きな缶詰めを皆に配る。


「おかずは?」


 古河隊長の問に


「カンメシ重いから。それに、一缶で結構な量があるよ?あ、沢庵」


 金剛はシレッと言ってのける、副食は沢庵のみ‼


「非常時にと焼き鳥缶を持ってきたのでみんなで食べましょう」


 青葉が焼き鳥を提供してくれる‼


「月並ですが、カニ缶など」


 梨がカニ缶を持っていた‼


 五目飯に焼き鳥、カニ、沢庵というなんともよくわからない昼食だが、味は良かった‼


「さて、昼からは青葉班は山の村へ、俺達は外海の村へ向かおう‼」


 古河探検隊はここで二手に別れる。山の村は灯台番と多少の畑作がなされていた村であり、60人前後居たらしい。外海の村はこの島に最初に出来た村で、15年前には100人強居た。


「午後4時にはここに集合。では、開始‼」


 午後12時半、行動が開始された‼


 古河隊長の行く手を背丈ほどもある茂みが阻む。茂みを切り開いて進むのに一時間以上を要した‼


「疲れた・・・」


「はい、疲れた時にはこれ」


そう言って金剛に渡されたコップをがぶ飲みする。


「甘っ、カルピス!?」


「海軍は戦闘時の補給にカルピス出してたんだよ。戦時中なんか殆ど民間に流れなかったそうだからね」


 そうなのだ。戦時中、カルピスが飲めたのは軍人だけ‼


 古河探検隊はカルピスを飲んで先へ進む。外海の村では何が待っているのか‼


 村が見えた時に何やら動く影があった。


「二手に別れよう。萩と梨は右手へ、俺と金剛が左からまわる」


 二手に分かれた。

 古河隊長と金剛は建物の探索を行いながら進む。


「クリア」

 の声が時おり発せられる。


 一方、萩と梨は足音を忍ばせなが影が走り去った方へと一直線に向かう。


「こちら梨、影は建物に入ったもようです。これは・・・」


「梨、どうした?何があった?」


「浜に壊れた魔船が乗り上げて辺りに魔物の死骸が散乱しています。影が蠢くのは礼拝堂或は社・・・」


「梨、その辺りに人間は居そうか?人間が居たら誤射じゃすまん。人間さえいなけりゃ問題ない。人間は居るのか?居ないのか?」


「人間は・・・、居ません」


「よし、もうすぐ向かう。とにかく倒せるだけ倒せ‼」


 梨と萩は06式てき弾を銃口に装着し建物へ発射する。

 爆発と共に魔物が外へ飛び出してくるのを一体ずつ狙撃していく。艦の精霊である2人にとって数百メートルは至近であり、扱うものが小銃ではあってもかわりなかった。

 再び建物周辺で爆発が起きる。古河隊長達が来たことを知り、お互い射線に入らないよう連絡しあって射撃を続けた。




「マスター、こちら青葉、島風との連絡途絶‼」


 山の村でも何か起きているようだ‼


 島風はどうなってしまったのか‼

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