魔王は、勇者を救いたい 4
「魔王は、勇者を救いたい」シリーズとでもしましょうかね?
スライム殿から引き継ぎ、拙者が次のヤられ役でござる。
名前はゴブリンでござる。
スライム殿と同じく、初期魔物でござる。
「殿!!殿!!ご報告の時間でござるー!!どこでござるかー!!」
報告は、いつも同じ時間だと聞いていたでござるが。はて?殿はどこでござろう?キョロキョロしても見当たらないでござる。
なにもすることないままでは暇でござる。掃除をするでござる。
まずは、殿の座る椅子にべっちょりと唾液をたらすでござる。それで、てっかてっかにするべく、ふきふきしとくでござ……
むっ!誰かがきた気配がするでござるっ!!
しゅたっと本来いるべき場所へと飛び降りる。
「すまぬな。ちょっと、所用があってな」
「大事ないでござぁあああああ!!!!!」
椅子に座ろうとする殿に慌てて大声をあげたが、遅かったでござる。殿は、そのまま拙者の唾液に滑り、腰を強かに床に叩きつけてしまったでござる。
まずいでござる。まずいでござる。まずいでござる。
「殿、大丈夫でござるか?」
「…………」
無言の圧力でござる。まずいでござる。まずいでござる。
「とりあえず、報告するでござるっ」
眼で殺されるでござるっ!まずいでござる!
「勇者はどうのつるぎに武器を変えられたでござる!それから、鎧と兜を装備されたでござる!!だいぶ強くなられたでござるっ!!!スライム殿は、回復魔法をなぜか覚えてたでござる!!以上でござるっ!それではでござるっ!」
早口で報告をあげ、殿の前から早く消えるでござる!
「……まて」
殿は、床に座ったままでござる。
びくびくしながら、拙者は頭を下げたでござる。
「また明日も、お主に任せる」
「か、かしこまりましたでござる」
これは、勇者を救いたい、魔王の物語。
日々、勇者のために、ヤられ役を勇者のもとへと派遣し、勇者の成長を促す。
そんな、物語。