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キスメット 【第7章まで完結】  作者: くにざゎゆぅ
【第三章】サイキック・バトル編 『ジプシーダンス』
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第74話 夢乃

 息が切れてきた。


 やはり武道を嗜む程度にやっていたわたしひとりの力では、この四人の男子を倒すのは無理だ。

 こうやって逃げ回って時間を稼ぐのが精一杯。


 助けを呼びに行ったはずのほーりゅうの安否が一瞬頭をよぎったとき、遠くでガラスの割れるような音が聞こえた。


 まさか、ほーりゅうの力が暴走?

 でも確かめるすべと余裕が、わたしにはない。




 ジプシーと京一郎の動きを、わたしは普段から間近で見ている。

 そのふたりのスピードに目が慣れているために、いま、この男子たちの動きは、なんなく見切ることはできる。


 でも、そろそろ限界。

 さすがに、避けるわたしの体力が続かなくなってきた。

 動きが緩慢でも、そこはやはり男子。

 一突一蹴の重さが違う。

 殴りかかってくるのを体捌きで避け、つかみかかってくるのを払っているだけで、足がもつれてきた。


 そのときに一人が、持っている竹刀を横に薙ぎ払い、避けたわたしの肩をかすめた。

 よろめいて床に片膝がつく。

 思わず近くの壁に片手をついて、それ以上倒れないように身体を支えた。


 集中力が途切れる。

 そして気配を感じて、はっと仰ぎ見ると、男は竹刀を構えなおし、わたしに向かって振りあげていた。


 やられる。


 わたしは、恐怖心があったけれど、受ける攻撃を確かめるために、男から視線をそらさなかった。

 防げるとは思わなかったけれど、両手をあげ、頭上で交差して十字受の体勢をとる。




 ――男から視線をそらさなかったから。

 竹刀を振りあげている男の背後で、さらに高く、空中に舞う影を見た。




 男の背後で空中に跳んだ京一郎の廻し蹴りが、男の側頭部をきれいにとらえて、反対の壁まで吹っ飛ばした。


「夢乃、大丈夫か!」


 足音なく身軽に降りたった京一郎は、男の取り落とした竹刀を拾いながら、わたしに声をかける。

 安堵のために、わたしは思わずその場へ崩れるように座りこんだ。


「あれ? ほーりゅうは? 一緒じゃねぇのか?」


 そうだ、ほーりゅう!


「助けを呼ぶためにも二手に分かれたのよ。でも、さっき、ガラスの割れる音がして」

「ガラス? 俺、向こうの階段であがってきたから、場所的に聞こえなかったのかな?」

「ほーりゅうは、たぶん職員室へ向かったんだと思う」

「職員室か。それなら、向こうから回っているジプシーと合流できるだろう」


 そう言いながら、京一郎は残りの連中に向かって、竹刀を構えた。


「京一郎、やり過ぎないで」


 わたしの言葉に、京一郎は嬉しそうに答える。


「わかってるって。俺は素手より竹刀のほうが加減がきくんだよ。ちゃんと外傷を負わさず、跡形も残さないようにやってやるからさ」

「京一郎!」

「冗談冗談」


 そう笑って口にした京一郎は、すぐに真剣な表情となり、倒すべき相手を見据えた。


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