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キスメット 【第7章まで完結】  作者: くにざゎゆぅ
【第一章】出会い編
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第3話 ほーりゅう

 翌朝、注文していた制服が間に合わなかったために、わたしは先日まで通っていた高校のセーラー服へと着替えた。

 スカートのすそと袖の部分に赤いラインが入り、スカーフも同色の制服は、きっと新しい高校では目立って視線を集めるだろうけれど、仕方がない。


 転入初日となるため、最初に職員室へ行くようにと言われていたわたしは、早めに登校した。

 方向音痴だけれど、どうにか職員室へたどりつくと、すぐに入口にいた教師によって、担任となる女性の英語教師の席へと案内される。

 そして、椅子に腰をかけていた担任のそばには、ここの制服となる黒いブレザーがよく似合う、細身の女子生徒が立っていた。


「彼女は、あなたの入るクラスの副委員長の佐伯夢乃さえきゆめのさん。本当は委員長に、朝一番にここへくるようにって呼んでいたんだけれどもねぇ」


 担任の言葉を聞きながら、わたしは彼女へ視線を向ける。

 そして、失礼なくらいにじっくりと見つめた。


 肩口で切りそろえられた漆黒の髪に、切れ長の眼、黒い瞳。

 日本人形を思わせる美人だ。

 わたしのぶしつけな視線に怯む様子もなく、小首をかしげて微笑むと、彼女は丁寧にあいさつを口にした。

 高校生には思えない大人びた落ち着きまである。


 名前を口にしたわたしへ向かって、彼女は、よく響くきれいな低音の声で告げた。


「まだ時間が早いし、教室へカバンを置いてから、学校内を案内するわね」


 うなずいたわたしを確認した彼女は、にっこりと笑顔を返してきて歩きだす。


「1年の教室は4階なのよ。階段をたくさんあがることになっちゃうわね」


 横に並んで歩く彼女は、そう言って苦笑した。

 なので、わたしは、最初が肝心とばかりに元気よく口を開く。


「大丈夫よ。スポーツはあんまり得意じゃないけれど、わたしってば、都合のいいところは元気なの」

「あはは」


 意外にも大きな声をたてて笑った彼女へ、わたしは好感を持つ。

 そして、なれなれしくも上目づかいで言葉を続けた。


「ねえ、あんたのこと、夢乃って呼んでいい? わたしのことは、ほーりゅうって呼んでよ」




 4階の長い廊下の途中で、夢乃は立ち止まった。

 その正面となる教室のドアを開きながら、意外そうに彼女はつぶやく。


「――あら? 委員長ったら、教室にはきているみたいね。だったらなんで、職員室にこなかったのかしら……」


 そのまま、つかつかと教室内へ入っていった彼女のあとを、わたしも少し遅れてついていく。

 そんなわたしたちの気配に、窓際でひとり、背をこちらに向けていた男子生徒は、気づいたようだ。

 彼は、ゆっくりと振り向いた。


「委員長。あなた、今日の朝一番に職員室へいくようにと、先生に言われていたでしょう?」


 正面に立って指を突きつけながらそう口にした夢乃へ、彼は視線を向ける。

 その彼の顔を見たわたしは、驚きのあまり、そのまま凝視してしまった。


 なぜなら、その彼は昨夜、マンションの裏道にいた男の子だったからだ。


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