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キスメット 【第7章まで完結】  作者: くにざゎゆぅ
【第四章】対エージェント編
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第110話 京一郎

「ほーりゅう、我龍の居場所はどこだ!」

「え~? わかんないよ! 二、三分で気配が消えちゃったし。いままでにないくらい大きな力過ぎて、逆に範囲が広くなっちゃって全っ然わかんない!」


 頭を抱えたまま、ほーりゅうは窓へ駆け寄って外を眺めだす。


 肉眼で奴の居所がわかれば苦労はしないって。などと、心のなかでほーりゅうにツッコミをいれながら、俺が頭を抱えたい気分になった。


 まずい。

 いま、ジプシーがひとりで表にでている。

 このまま我龍とニアミスなんてことになったら。

 いや、それ以前にもう鉢合わせていて、これが交戦中の気配だったとしたら。


 俺は、しばらく鳴らしていたスマホの発信を切る。


「ジプシーの携帯にもつながらない。なにか起こっていると考えたほうがいいのかも……。部屋をでるときから様子もおかしかったし、やはり俺も一緒に行動したほうが良かったか」

「いまさら仕方がないわ。探しに行く? それとも下手に動かないほうが良いのかしら?」

「とりあえず夢乃、おまえは無理に足を動かさないほうがいい。俺とトラで奴を探しに行ったほうがいいか……」


 夢乃にそう告げてトラとうなずきあったとき、部屋に取りつけてある電話が、ふいに鳴りだした。

 全員が、ぎくりと動きをとめる。




 この場合、ホテルの部屋を借りているのは偽名とはいっても、ジプシーと俺の名前だ。

 奴がいないいま、俺がこの電話をとるのが筋だろう。


「あ。そういえば桜井さんに、向こうのホテルのチェックインができたら、連絡をくれるようにいってきたけれど……」


 夢乃が思いだしたようにつぶやくが、桜井刑事は夢乃の携帯番号を知っている。

 わざわざホテルの部屋へかけてくる必要がない。


 俺は唇に人差し指をあてて、静かにという動作をしながら受話器をとった。


「はい」


 とりあえずひと言だけ告げて、反応をみる。

 相手は無言だった。


 フロントを通しての外線ではないってことか。

 そう思ったとき、俺にとって聞き覚えのない声が聞こえた。


『部屋のドアの外。廊下を見ろ』


 癖がなく発音もきれいな、たぶん俺と同世代の男の声だ。

 敵対する気配は帯びていない。


「ドアの外? なんだ? 廊下になにがある?」


 わざと声にだして、相手の言葉を繰り返す。

 俺の意図が伝わったのか、トラが、夢乃とほーりゅうに動くなと指示をする。

 それから、ドアへ静かに近寄った。

 そして、自分の影がドアの横や下の隙間を横切らないように耳をあて、外の様子を確認する。


 外に気配がないことを確認してから、トラはゆっくりとノブを回してドアを細く開けた。

 

 その瞬間、驚いた様子でドアを勢いよく開け放す。

 トラの動きになにかの事態を感じたのか、慌てて夢乃とほーりゅうが駆け寄った。


 部屋の様子がわかったかのように、電話の声が言葉を続けた。


『お節介ついでに』

「――なんだ」


 俺は、トラに抱えられて部屋のなかへ運びこまれる意識のないジプシーに気を取られながらも聞き返す。


『たぶんそちらでは、こんな事態には対応できないと思って、俺がそいつの体内の薬物を抜いておいてやった。それともうひとつ。いまのそいつは十年前の事件のフラッシュバックを起こしている』


 そう一方的に告げられて、電話は切れた。


 俺は、通話の切れた受話器を無言で見つめる。

 そして、いまの電話の相手の口調から、ことの重大さに気がつき愕然とした。


 ――十年前の事件のフラッシュバックだって?


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