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プロローグ

(寒い)


 吹き荒れる吹雪。どこを見ても真っ白な世界。


 いや、一人小さい男の子が泣いている。


 (誰だ?)


 毛皮で編まれた肩までしかない服。

 ボサボサな髪の毛。

 痩せている体。

 今にも倒れるか心配になるほど細い。

 素足で雪の上で立っている彼の体温はさぞ低いことだろう。


 彼はただただ泣き叫んでいる。


 何かを懇願するように。

 今はなき何かを求めるかのように。


 俺――神谷宗馬には幼い頃の記憶はあいまいだ。

 だが分かる。


 この少年は幼い頃の俺だ。


 瞬間、地面が揺れた。


 地震などの生ぬるいものではなくこの世自体が何かに動かされたかのような激しい揺れ。


 それと同時に聞こえてきた悲鳴。

 中性的な声だ。

 だが、その悲鳴の中に意味が分かる言葉が聞こえた。


 「異獣魔」


 この世の、人類の敵。


 いまだその力や形態、出現場所には謎が多い不気味な生命体。


 はるか昔に一度人類を滅ぼしかけたほどの化け物。

 悲鳴の中から聞こえたということはーー


 「ギャァアアァ!」


 後ろに目をやると異獣魔がいた。

 やはり悲鳴と揺れの原因はこいつらしい。


 光沢のある黒い背中。

 赤い目。

 大きく裂かれたような口。

 どこからどう見ても正真正銘の化け物だ。


 異獣魔には警戒レベルが一から五まで存在するがこいつは警戒レベル二、下から二番目に分類される。

 力を制御しうまく使える《守護者》(ガーディアン)であればそこまで怖がる必要はない。


 だが今は違う。

 異獣魔の目の前にいるのは正規の《守護者》などではなく小さな男の子だ。


 「グォオオオオ!」


 異獣魔が咆哮を上げる。


 少年は腰を抜かしてしまって動けない。


 助けに行こうとした瞬間、体が硬直した。

恐怖にしはいされてるわけではないはずだ。

 なのに金縛りにあったかのように動けないのだ。


 異獣魔が大きく口を開ける。

 そのまま突っ込んで少年を文字通り


 呑み込んだ。


 (やめろおおおおおおおおおお!)


 心が裂けるような錯覚にあう。


 一人の少年の命が目の前で消えたのだから。

自分はただ見るしかできなかったのだから。


 異獣魔は満足したかのように去っていく。

 ただの捕食と言う様にあっさりと。


 (ふざけるな)


 ただそう思った。

あの少年が幼い頃の自分だったからではない。


 人類をなんの躊躇いもなくあっさり命を奪っていくその姿に腹が立ったのだ。

 そしてそれを救えなかった自分にも。


 ところが異獣魔は数歩進んだところで止まった。


 瞬間、その体が爆発した。


 何が起こったのか理解が出来ない。

 爆発した異獣魔がいた場所から少年が現れる。


 いや、正確に言えば少年ではない。

 少年の格好をした何か、さっきの異獣魔なんか比べ物にならないほどの別格な存在感とプレッシャー。

 それが何かは分からない。

 

 ただ分かることは少年が無事だったということだけだ。

それだけで宗馬は十分だった。


 安堵したそのとき、頭の中に声が直接響いた。


 「主、早く目覚めなさい。そうしなければ大切なものの全てを失うこととなる」


 女性の声だった。

 綺麗でどこか悲しげなその声はどこか懐かしさを覚えた。

 (目覚める?主?いったい何のことだ)

 

 そこで宗馬は夢から覚めた。

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