花ちゃん
「千華ちゃんーー。おーはよーー」後ろから小走りで私を呼ぶ女の子がいた。今井花、同じく高校一年生。クラスも同じで私の席の前である。おっちょこちょいでなぜか目が離せない存在だ。よくわからないけど男子から人気があるようだ。
「花ちゃんは、可愛いいね。気をつけなよ。特にスカート!」
「え、え!千華ちゃんの方が可愛いいよ!私は落ち着きないし、他の女の子から同い年に見えないみたいだし。悩み事いっぱいだし」こういう困った顔がまた可愛いい。
「花ちゃんが彼氏出来たら私泣いちゃうよ!」私は、今井花の反応が好きである。兄とは違う表情や言葉があるからここにも幸せを感じている。
「泣いちゃうのはやだよ。彼氏なんか出来ないし、私は男の子となに話していいかわからない。千華ちゃんのお兄さんは、優しくて話しやすいしうらやましい」兄の事を言ってくれるところも好きだ。
「じゃあ、花ちゃんが兄のお嫁さんになればお姉ちゃんになるからいいね!ナイスアイデア花ちゃん!」
「え、え!千華ちゃんのお兄さんと釣り合わないし、千華ちゃんのお兄さん絶対彼女いるよ」
「いないよ!今日朝確認したから大丈夫大丈夫」こんな会話が出来るのは今井花だけ。
「千華ちゃんってお兄さんとなかいいよね。いいなあ」その言葉がなにより嬉しい。小さい頃から、兄が何でもやってくれて辛いときはやさしく大好物のたらの唐揚げを作ってくれたりケーキを作ってくれたり兄に甘えてしまう。
母の離婚から、転校があったり引っ越しがあったりで兄もつらかったことはあったと思う。だけど、離婚があったから私と兄はここまで仲良くなれたんだと感じている。
「花ちゃん!」
「どうしたの?千華ちゃん?」
私は、駆け出した。辛いことを思い出すより前へ前へ幸せを求めに走り出した。
「千華ちゃんーー。待ってーー」
今井花の叫ぶ声も小さくなり、学校への近道を周りを気にせず走る。この街にきて約3年。あっという間に思える。
学校の門を駆け抜け、一気に階段を上がり教室に着いた。
学校には、いろんな人がいる。同い年なのに大人びてる人や子供にみえる人、声が大きい人、小さい人、綺麗な人、おもしろい人、頭がいい人、悪い人。日々楽しい学校生活になっている。
「あれ、花ちゃん……。まずい置いてきた」駆け抜けた学校内をまた今井花のもとまで走り出した。
今井花は、校門までたどり着いていた。息があれうまく言葉が出ないようだった。
「ち、千華、ちゃん。早い早いよ~~」
「ごめん花ちゃん。なんか気分的に駆け抜けてしまったあはは」今井花の鞄を持ち、体力が尽きた今井花を教室までゆっくりと連れていった。
着いたころには、ちょうどよく鐘が鳴り響きホームルームが始まる。
授業の時は、ふと小さい頃に住んでいた家を思い出しては外を見て今は幸せなんだと再確認をする。
母も兄も本当につらかっただろう。
私は、まだ小さいからそれほど記憶はないが母の涙は忘れはしない。
「花ちゃん。花ちゃん」前から小さい声で私を呼ぶ。
「澤中ーー!」担任が私の名前を叫んだ。
「あ、すいませんはい、先生!」授業がもう始まっていた。机の上には鞄がそのままだった。
「今は、国語だ。鞄からだしなさい」
「はい、すいません」担任は、私に注意してから黒板に書き始まる。
鞄を開けると、何故か昔の家のミニアルバムが入っていた。いついれたのかいつ出したのか覚えていない。
こっそり開くと、実の父親に抱っこされる私が写っていた。
はっきり言って、父親のことはあまり覚えていない。父親の写真を見てもあまり懐かしさや会いたいとは思わなかった。
そういえば、兄と父親の写真があまりない。このミニアルバムにもない。母は、父親の写真を捨てていたが私のために少しは残したようだが兄とのはない。
「明日、聞こう!」つい大声で言ってしまった。
「澤中ーー!」担任の怒鳴り声が響く。
「先生すいません。御手洗い行っていいですか!」
「授業に集中しろ。あ、行ってこい静かにな」クラス中にクスクスと笑い声が響き担任は参ったという表情をする。
そんな中、小走りでトイレに向かった。学校の授業は、集中なんか出来ない。聞きたいことがまだ山ほどあって知りたいと思う気持ちが一番自分の中で強いのだった。