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冬の下校

「思った以上に雪が降ったな」

内履きからいつものシューズに履き替えて外に出る。

朝から降り続けていたので一面真っ白だ。

今は雪が降っていないがまたすぐにでも降りそうだった。

「早く帰らないとこりゃ大変だ。

そう呟きながらもすぐには校門に向かわない。

そうして3分ほど待つと一人の女生徒がこちらにくる。

「お待たせ、待った?」

「いえ、そんなことないです。それじゃ帰りましょうか」

そういうと僕と由希先輩は並んで歩く。

由希先輩はうちの近所に住む先輩でこの学校に入学してからの出会った。

もちろんこうして並んで帰るようになったのはごく最近のことだが。

「それにしても今日は雪がよく降る日ですね」

「朝から今まで降っていたせいでここまで積もったんだものな」

僕は冷えた手を温めるためポケットに突っ込む。

それを見られていたのか由希先輩が睨んでくる。

「こら、ポケットに手を入れて。危ないでしょ!」

「いや、だって寒いんですもん」

「そんなこと言うなら手袋をして来ればいいのに」

ごもっともなことを言われてしまう。

このままポケットに入れてるといずれ本気で怒られそうなので仕方なく出す。

その瞬間冷たい風が温まった手を冷やす。

「うぅ、寒い…」


佑太が寒そうに手をはぁ~ってしてる。

その姿を見て少しだけ可愛いと思ってしまった。

佑太と付き合い始めて一か月。

こうして一緒に帰っているのに未だ手すら繋いでいない。

「あ、あそこに自販機がありますよ。温かいやつ買いましょ」

そういって佑太が走っていく。

私はそれをゆっくりと追いかける。

「由希先輩はどれを飲みます?」

「私はコーヒーで」

そういうと佑太が財布からお金を出して自動販売機へ。

そしてそのままコーヒーを選択して私に手渡してくる。

同じようにお金を入れて今度はココアを選んで取り出す。

「これで少しはあったかいです」

そういうと佑太は両手で缶を持った。

わたしはコーヒー缶を上着のポケットに入れてホッカイロの代わりにした。

佑太のほうは満足したのか早くもココアを飲み始めていた。

そのまま他愛もない話をしながら帰っていたがココアの無くなった佑太はたまにポケットに手を入れていた。

そのたびに注意するのだが一向に治らない。

どうしようかと考えた私は一つの答えを出した。

左手の手袋を外して佑太の右手を少し強引気味に掴む。

そうして手を絡めて密着させる。

「?!?!?!?!?」

突然の出来事に佑太は混乱している。

私はそれでもかまわず外した左手の手袋を佑太の左手に着せる。

「これで冷たくないよね?」


「?!?!?!?!?」

僕はドキドキしていた。

由希先輩が突然手を握ってきたのだ。

まだ手もつないだことのない僕にとっては驚き以外の何物でもない。

「これで冷たくないよね?」

そういうと由希先輩は笑った。

僕は返事もできず右手から伝わる由希先輩の熱を感じていた。

鼓動が早くなり頭の中が真っ白になる。

何を話せばいいのか、どういった顔をすればいいのかそれがわからなくなっていた。

「こうして手を繋ぐのは初めてよね」

「そ、そうでしゅね」

かろうじて返事はするものの声がうわずる。しかも噛んだ。

「今回は私からだったけれど、いつか佑太から手、繋いでね」

そういわれて僕はさらに顔を真っ赤にした。

もう何も考えられずにいると由希先輩が微笑を浮かべ

「この調子じゃ、まだまだ先になりそうね」

と呟いていた。

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