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短編集<そこから物語は生まれる>文学編

悪癖

作者: papiko

 僕には悪癖がある。他人から見れば、たぶん些細なことだろうが、僕にとってはとても自然な反応なのだ。


 たとえば、誰かとどこかに出かける約束をするとしよう。そのとき、僕がこの時期ならこのあたりがいいんじゃないか?と提案したとする。その返事に対して、相手が『でも』と言った瞬間、僕はがっかりしていまうのだ。この何気ない『でも』という言葉が、僕にとっては心を閉じるのに十分な条件なのである。


 案外、『でも』という言葉を安易に口癖のように繰り返す人は、多い。そして彼らは僕にとって天敵に等しい。僕に提案や意見を求めておいて、その真意はいつも拒絶である。

 結局、本人はしたいこと、行きたい場所、ありとあらゆる問を発しながら、すべて決定済みなのだ。そして、僕に同意させるためだけに問いをなげているに過ぎない。


 過剰な反応だと、誰もが言うけれど。残念ながら、僕にとっては普通のこと。『でも』『だって』『だけど』なんて、誰もが口にする言葉だ。それは僕も知っているし、僕も使うことはある。ただ、自分が相手に問いを投げた場合は、極力さける。


 そして、その言葉が口をついて出そうになったとき、僕の心の中にはすでに決定事項が存在しているのだ。それを明確にするために、問いを発したことに気が付くから、僕は相手の回答にありがとうと一言答える。相手はたいていその言葉を聞いてぽかんとした表情を見せる。おかげで、自分がどうしたいのかはっきりしたよと伝えるとさらにぽかんとする。


 これが僕の悪癖だ。僕は他者を鏡として利用する。とても、困った悪癖である。


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