御守り
夏目漱石の「こころ」が丁度学習範囲に入ったので友人K(kは屑のk)の話。
あくまでフィクション。でも御守りは買いに行きました。
ぴこん。スマートフォンが鳴った。
寝ぼけ眼のまま通知を確認すると、友人からのLINEのようだ。
『お前の気持ち、分かる気がする』
「は?」
思わず口に出した。
は? である。なんの脈絡もない。ちなみに前回のLINEの内容は
『お前○○と付き合ってんの?』
『ううん』
『そっか、なんかごめん』
だ。なんの脈絡もないのはいつものことだが、今回は内容も意図も意味不明だ。
『どうしたいきなり』
まあ、無難に返したと思う。
テコリン。
『なんとなく、だよw』
ちょっと待て。内容がわからん!
『ごめん君の言いたいことが理解できない』
これで、流石に内容のある返信してくるだろう。
テコリン。
『理解できたら負けw』
「何がしてーんだよっ!」
思わず叫んだ。そして壁を殴った。
「っ痛ぁ~」
ムカつく。殴りたい。
『きも』
まあ、これだけ言ってやれば用件言ってくれるでしょ。
テコリン。
『俺の言うことはいつでも意味不明だからな(`・ω・´)』
「顔文字ムカつくぅ~っ!」
ガン!壁に頭頂部を打ち付けた。ほのかな痛み。
『いきなり何を言い出すんだ。君に僕の何が分かるというのだ』
流石に何が『分かる気がする』のかこれで返ってくるはず。
テコリン。
『いったろ なんとなくだって』
「FUCK!FUCK!オーマイパスタァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
僕は睡眠を邪魔してまで友人が送りつけてきた怪文章に困惑している。だから意味のわからないことを叫びながら高速でタンスの角に小指をわざとぶつけるという奇行をしているのは僕の意思じゃない。友人の怪文書の魔力なのだ。
「痛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
落ち着いてきたところで返信する。
『なんだよ俺の気持ちって』
一人称がぶれるのはよくあることなので気にしないで欲しい。
テコリン。
『ゑ』
この旧字が1文字だけ送られてきたとき最高にムカ着火インフェルノ。
テコリン。
『いや…』
これは続けて友人が2通送ってきたのだ。僕が『いや…』と送ったわけではない。それが伝えづらいのが文字媒体のつらいとこね。
『唐突すぎて混乱するんだけど』
その結果のタンスの角に小指ぶつけ音頭だ。
テコリン。
『(´・ω・`)』
テコリン。
『すまん余計なこと言った(´・ω・`)』
「だからお前の意図するところはなんなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
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♪タンスの角に小指ぶつけ音頭♪
作曲:麻婆豆腐三太夫
作詞:牛乳大好
1
たんすの角には何がある(あ、どした)
たんすの角には夢がある(はー ドッコイ)
小指をぶつけりゃ、夢が出る(どっこいしょー ドッコイショ)
はぁ~あ~あ~ 小指ぃ~、たん~す角ぉ~(たんす角ったらたんす角)
タンスの角に小指ぶつけ音頭~(ハイや シークワーサー)
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「はぁ、はぁ、はぁ」
僕はまだ痛む血だらけの小指に絆創膏を巻いて、震える手で
『いやだってお前何の脈絡もなく「お前の気持ちわかるぜ」って言われたら「は?」ってなるだろ』
と打った。
テコリン。
『まあ、そうだな』
テコリン。
『ちょっと考えたらあんまり触れないほうがいいことだった(´・ω・`)』
抑えろ、感情の高ぶりを。
『気になるだろ』
こう打ってはみたが、こいつが意味わかんないことを言うのは大抵恋愛関係だ。だから十中八九今回もそうだ。
テコリン。
『忘れてくれ(´・ω・`)』
テコリン。
『言ったらお前怒りそうだし(´・ω・`)』
「何をいまさら。お前のせいで3回目のタンスの角に小指ぶつけ音頭になるところだったぞ」
当然だが、友人はタンスの角に小指ぶつけ音頭のことは知らない。
『ひとことのこと?』
ここで一回、はずれの回答をしておく。
テコリン。
『そういうことにしといて(´・ω・`)』
「ヒットォ!」
『お前恋愛関係でしかそういうこと言わなそうだけどな』
釣れたぞ!やっと本題だぁ!
「遅ぇーよホセ」
テコリン。
『勘付いてたり?』
「たりめーだろハゲぇ!」
『何をだよ』
『別に怒りはしないぞ』
テコリン。
『……ホントか?』
『まあ』
「まあ、今更怒っても小指は帰って来ないしなぁ」
テコリン。
『……』
テコリン。
『……先輩のこと好きなんだろ?』
「ばれてーら」
どうせそんなことだと思った。
『まあ』
テコリン。
『その気持ちわかるなーって』
『そうか』
テコリン。
『センパイ超いい人だし』
『いい人ってかお人好しなんだよあの人は』
そう、あの人はお人好しだ。だから僕はそれに甘えてしまう。
テコリン。
『どっちにしてもええ人やん』
テコリン。
『だから』
テコリン。
『好きになるのわかるなーって』
テコリン。
『それだけ。』
『まあ、ただのいい人だったら好きにならないけどな』
そうだ、ただのいい人にはもう懲りた。ただのいい人はもう十分だ。
テコリン。
『そりゃね』
『つーか突然意味不明な文章送ってくんなよ』
「おかげで小指血まみれだぞ」
テコリン。
『ごめんな』
テコリン。
『ただ、なんだろう』
『あ?』
「あ?」
テコリン。
『お前には頑張って欲しいなー、なんて』
『そうか』
悪いけど、
『まあ、ありがと』
僕は頑張らない。
テコリン。
『好きな人がいるって羨ましいわ』
テコリン。
『俺いないし』
「ふざけんなよ……」
涙が出てきた。変なこと思い出させんなよ。
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テコリン。
『別れよう』
「どうして?」
『うん』
「どうして?」
テコリン。
『ばいばい』
『じゃあな』
「終わった……」
苦しい。
こんなに苦しいなら最初から好きにならなきゃ良かった。好きにならなきゃ、よかった。
「でも仕方ないだろ、好きになっちゃたんだから」
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「でも仕方ないだろ!」
確固たる僕の意思が壁を殴る。
「好きになっちゃったんだから!苦しいんだよ!」
テコリン。
『だから』
テコリン。
『お前には掴みとってほしいとか、思ってる』
「勝手じゃないか」
掴みとる?馬鹿言え。掴みとってもいつかは放すんだ。放すとき、その時が、一番辛いのを、貴様は、
「知ってるはずだろうがバカタレ!」
テコリン。
『すまんね。』
テコリン。
『時間取らせて』
『おう』
『じゃあな、いい週末を』
テコリン。
『ありがと。』
テコリン。
『そっちもな。』
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「先輩はいい人だ」
オマエノキモチワカルキガスル。
「先輩はお人好しだ」
マア、ナントナクダヨ
「でも、だからこそ」
ツカミトッテホシイ、ナンテオモッテル
「彼女は僕を拒絶するだろう」
拒絶は辛い。寒い。怖い。だったらもう僕は頑張らない。
「最初から、出会わなければ良かったなぁなんて、思ってしまうのです」
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.LOG
21:44 2014/10/18
メモ帳のログ機能を初めて知った。これを機に日記を書いてみようと思う。
今日は○○町の▽▽神社に、合格御守りを受けに行った。(御守りは受ける、というらしい)
もちろん僕のための御守りじゃない。
午前中に**に僕の心中を暴かれて少しひやっとしたがそもそも僕のこの思いは本物なのだろうか。
とりあえず、御守りを受け取ってもらえるかが心配。




