第67話 だめ
「だめ」
ユキは唐突に答えた。
「?・・・ユキ?
こいつは性格は悪いが約束は守るからアキラは大丈夫だって・・・」
「うん、たぶんアワガニは“嘘”を言っていない・・・・・・けど、本当の事を言っていない・・・」
「何!?それは本当か?アワガニ!!」
オレはピエールをスルーしてユキに質問した。
【・・・・・何でそう思った?】
「女の直感」
【・・・・・・別に“嘘”は言っていないぞ。オレはお前ら姉弟を可及的速やかに元の世界に“帰還”して欲しいんだよ。】
「何で?」
【質問に質問で返そう・・・
第五問『“スキル”も“スペル”も全て失った“中村明”は何故“中村雪”を不完全ながらこの世界に召喚出来た?』】
「それは・・・」
「ちょっといいか?それはそんな大事なのか?」
【・・・・・他の世界は知らないがこの世界に関しては“異世界人”を“狙って”召喚することが出来るのは“神”だけだよ。】
「!?・・・それじゃあ、そのアキラは“神”が関わっているのか?」
【それは分からん!
“神”が関わっているのならここまでの扱いは受けない筈だ・・・
“中村明”に関しては“謎”が多すぎるから早々に関係を切りたいから“可及的速やかに”元の世界に帰還させたいんだ!】
「つまり、アワガニはその“謎”が怖いからアキラを助けたと?」
【・・・・・そこまで最低な奴になれるならどんなに楽になるか・・・
オレがアキラの命を救ったのは“人”として残ったプライドだよ・・・
オレがお前ら二人を早々に“帰還”させたいのは“オレ”の事情に巻き込みたくないの+“お前ら”の事情に巻き込まれたくないヘタレ根性から来るんだ。】
「・・・・・もしかして、貴方って良い人?」
【“良い人”じゃないならここまでしないと思うが?】
「そうね・・・
でも、あたしを助けた事は失敗って・・・」
【オレだって人間だ・・・後悔することだってある。それに、ピエールがいる事を知っていれば、余計な干渉しなくてすんだと思っている。】
「そっか・・・
話を戻して、あたしはアキラと一緒に元の世界に戻ります。
だから、アキラの事を教えてください!」
【了解】
「ちょっと待て!!」
ピエールが待ったをかけた。
【何?】
「“帰還”についてだ!“召喚”がそれほど大事ならその逆の“送還”に関しても大事になるはずだよな?」
【ああ、その事?この世界に関しては“送還”は“勇者”以外は簡単だよ?】
「へ!?」
【この世界は言わば、『関係者以外立ち入り禁止』だよ・・・】
「それでは関係者では無いユキとアキラは・・・」
【うん、オレでも“帰還”させる事は可能だ。
さて、質問の続きだ。
第六問『現在の“中村明”は利用価値はあるか?』】
「・・・・・・もしかして、あるの?」
【正解!
異世界人の身体はこの世界では、儀式の材料としてかなり上等な分類となる。】
「・・・・・・」
ユキはその答えを聞いたとたん、考え込んだ。
【さて、第七問『もし、今現在の時点で意識不明の“中村明”の所在がバレてしまったらどうなるでしょうか?』】
「・・・・・アキラを召喚した者が知った場合は殺される・・・その他の場合でもアキラが無事ですむ保証が無い・・・」
【では最後の質問をしよう。
『この状況でお前が“中村明”に会えますか?』】
「会えません・・・
ねえ、貴方は本当はアキラを召喚した者を知っているんじゃないの?」
【・・・・・予測はできる。断言は出来ないけどな・・・
仮に予測どおりだったとしても今のままでは“オレ”や“中村明”の生存を知られるだけで“死亡”確定になってしまうから我慢してくれ・・・】
ありがとうございます。
9/4 12:00に更新します。




