第61話 何故に居る?陰陽師!
【あるが・・・・・いい加減にそこの奴が何故ここにいるのか聞きたいのだが?】
オレは怒気を抑えながら質問した。
確かに“分析”で安全を確認して、中村さんの頼みだったので同席させたが、ここまで一切の発言が無いのは不気味だな。
いくら、村の修復・結界の生成・ピエールの治療を優先し、中村さんから『後で詳しい事情を説明するからこの結界にあの陰陽師を滞在させて欲しい』と頼まれたからと言って、少し無用心だったかも・・・・・
オレが仮面の陰陽師について考察していると中村さんが発言した。
「えーと、こちらは美暗花さんです。貴方が三匹の真っ黒な狼との戦闘に乱入してきた人の元パーティーの一人。貴方に話があるとかであたしが繋ぎを頼まれたからここへ呼んだ。」
【フーーーン・・・・・そういえば、ドロオオカミ戦でオレが破れた後の事は知らないな・・・・・・
ちょうどいい、ビアンカさんとやら・・・客観的に状況を説明してくれない?
お前さんのテレパシーもこの空間なら接触しなくても通話出来るように設定しているから安心しろ・・・】
陰陽師ビアンカは席を立ち、お辞儀をしてテレパシーで会話を始めた。
《初めまして、私はそこにおられる【おい!オレは客観的な状況説明を求めているんだが?それとも何か殺して欲しいのならそう言ってくれ。オレはお前を殺すのに躊躇いは無い・・・今、お前を生かしているのはオレの気まぐれだと考えてくれ!】・・・・・・失礼しました。私はビアンカ、事情があって喉が潰れてテレパシーになっている事をご了承ください。》
「おい!!・・・アワガニ!ビアンカに対して何て言いがかりだ!」
ピエールは勢い良く立ち上がり、オレを睨み付けた。
【そいつはすまなかったな・・・こいつが余計な事を言いそうになったので釘を刺しただけだよ。
ちなみに余計な事を言った場合、即座にオレとピエールの戦争が始まるよ・・・】
「なっ!?・・・どういう事だ?アワガニ!
お前から渡された情報にはそんな事は欠片も無かったぞ!」
オレはフーやれやれと言ってから返答した。
【当然だ・・・全部の情報を渡したらお前はパンクして廃人になっちまうし、それにその情報は言いたく無かったからな・・・
少しネタばらしをするとこいつのせいでオレがかなり不利な状態に追い込まれた。そして、その不利な状態の詳細をお前が知れば、オレを倒したくなると予測するよ・・・】
ピエールは何か言おうとしたが、葛藤を数秒間してから観念して悔しそうに席に座った。
「・・・・・・・・・お前がそう判断するならこの件は触らない方がいいな。
別にお前は俺達を悪いようにするつもりは無さそうだし・・・・・・」
【すまん・・・】
「えーと、アワガニは大丈夫?・・・・・いろいろな事が・・・」
中村さんが申し訳なさそうに発言した。
【とりあえずは大丈夫だ!今の不利な状態でも中村さんの事もピエールの事も、そして、自身の事も何とか出来るから・・・
余計な横やりが無い限りは!!】
オレはキッとビアンカを睨み、念を入れた。
ビアンカは仮面のせいで表情が分からないが、迷い無くコクリと頷いた。
【さて、かなり横道にそれてしまったが、話を戻そう。
ドロオオカミ戦後の状況だったけ?】
《はい・・・ところでアワガニ様。あの水の勇者の事は説明してもよろしいでしょうか?
ちなみにユキ様はあの者の正体を薄々(うすうす)感じ取っているご様子です。》
オレはしばし考え込んだ。
【・・・・・・そうだな、その件は遅かれ早かれバレるからあの勇者の正体を明かしてもいいよ。】
《ではそのように・・・致します》
ビアンカは席を立って説明を始めた。
ありがとうございます。
次回は8/29 12:00に更新します。




