第41話 もうひとつのファーストコンタクト
ユキside
ピエールと一緒に森の中を歩いている内にふと思った。
あたし、田中さんを無条件に信じすぎていない?あたしにステータスを見せないのはそこに見られては不味い物が有るから?
そもそも、田中さんが本当の事を言っている保証も無い!顔も見せない怪しい人を信用するのもどうかと思うし。
でも、ここが本当に異世界なら頼れるのは頭の中に声をかけて来る田中さんと今一緒にいるピエールしか居ないのも事実・・・あたしはどうすればいいの?
「ーーーーーキ!ユキさん!!」
「え!?何?」
「小屋に着いたよ。大丈夫?顔色が悪いぞ!・・・もしかして、俺のスキル無しを調べるのにかなりの負担を強いているのか!?」
・・・この人は信用できる!あたしに乱暴する気配すらないし、本当に心配してくれているのも表情で分かる!
「・・・ううん!その件は大丈夫。ただ、少し疲れたなぁと思って・・・」
「なら、小屋の中で少し休むか?中には仮眠する位の事が出来るようになっているし。」
「・・・・・なら、少し一人で休ませて貰ってもいい?」
「ああ!俺はドアの前で見張りをしているから何かあったら呼んでくれ!」
あたしはその言葉に頷くと小屋の中に入った。
そこは江戸時代の農民の家のような造りだったので靴を脱いで家に上がった。
あたしは床に座ると右腕の繋がりの腕輪に小声で話しかけた。
「えっと・・・小屋に着いたよ。
・・・・・・ピエールの事を調べる件を頼んだ後からダンマリをしていますがどうしたんですか?」
[・・・とりあえず、余計な事は聞かん。ピエールとやらは信用できるか?そこは安全な所か?]
「え~と、ピエールは信用できると思うし、そのピエールが見張っているから安全だと思うよ。」
[なら、オレが渡した水筒の水を飲んで少し眠れ!]
「ちょっと待って!!あたしはまだ色々と聞きたい事があるんです!」
[悪いが、今のお前さんの状態で問答に付き合う趣味はオレにはないぞ!]
「あたしの状態!?どういう事よ?あたしはまだまだ大丈夫よ!!」
[・・・気が付いていないのか?声の張りから体力的にも精神的にももう限界の筈だ・・・お前さんが言った筈だぞ、そこは安全だと!
いいから!水を飲んで横になれ!
それが済んだらオレに答えられる物は答えてやるよ!]
「言ったわね!水を飲んで横になればいいのね!すぐに起き上がって質問に答えて貰うから!!!」
あたしは水筒の水を飲むと自分の身体が凄く水分を欲していたことに気が付き、水筒の水を全て飲みつくした。
そして、横になると意識がすぐさま遠のき、泥のように眠った。
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ピエールside
小屋の扉の隙間から様子を見ていたが、ユキは水筒を勢い良く飲むとすぐさま寝てしまった。呼吸はきちんとしているので問題無いと判断した。
あの様子だと異世界に来てすぐのようだ・・・かなりの消耗が見受けられる。
というか、こっちの言葉が全然理解できていないから俺がしっかりとフォローしないとな!
取りあえず、村に連れて行った後はこっちの言葉と一般常識を教えないとな・・・
あっ!・・・そうだ!ユキは多分”人物鑑定“系のスキル持ちだ!クロスディアでは“人物鑑定”系のスキルはレアであることを注意して置かないと国の偉い人らに利用される!
他には注意して置かないといけないことはなかったけ?
[すまんが、ピエール・・・話がある。]
「誰だ!」
俺は慌てて立ち上がり周りを見渡しても誰もいない。
いくら、スキル無しの俺でも声が聞こえる範囲まで近づくのを気付かないはずはあり得ない!!
[声が大きすぎるぞ!中村さんが起きてしまうぞ!]
俺は小声で謎の声に答えた。
「・・・何処にいる!姿を見せろ!!」
[・・・・・・姿を見せてもいいが驚くなよ!とりあえず、お前に害を与えるつもりは無い。]
俺は何故か震えている・・・・・この問答で俺の運命が変わると予感がする・・・・・
進むか止まるか?
俺が選ぶのは・・・・・・
「覚悟を決めたぞ!姿を見せろ!」
[・・・お前の左肩に居るぞ!]
俺は左肩を見た・・・
そこには泡製の蟹がいた!!!
ありがとうございます。
次回は8/8 12:00に更新します。




