彼女を求めて召喚魔法③
「四番目の子を買うよ」
ノースが奴隷商に告げた。
「いいのですか?返品等はこの価格ですので受け付けませんよ?」
「大丈夫だと思うよ。ほら」
ノースは懐から10万Eを取り出す。
お金を渡すときに少しもったいなく感じて渡すのを躊躇したが、ノースはお金を渡すと奴隷の手を掴んで自分の自宅まで連れて行った。
「じゃあ、俺が君の新しい主人だ。よろしく」
部屋の中に入ると、奴隷少女に声をかけてみる。
しかし、彼女からは何の反応もない。濁った瞳でノースを見るだけだ。
「おかしいなあ。やっぱり何も分からないか?俺の言葉分かる?」
ノースが必死に身振り手振りで伝えようとしている姿を見て、奴隷は何を思ったのか、薄い布切れを脱ぎ始めた。
性奴隷として買ったのだから、彼女は勝手に勘違いしたのかもしれない。
「ちょっと待て!ストップ!レイラン!メルポ!」
奴隷はピクッと反応し、服を脱ぐのをやめる。
そして驚いた顔でノースを見た。
『どうだ、今度は俺の言葉がわかるか?』
『わ、分かるわ』
ノースはニヤリと笑った。
『この言葉は帝国でも極限られた地域にしか使われてないからな。グランディアの言葉はもちろん、帝国の言葉でも理解出来なかったんだろう?』
『あなたは誰?』
『俺はノース・ピース・ウエスト。お前を奴隷商から買ったご主人様だ』
『私はライラ。風見族のライラよ。助けてくれてありがとう』
『助ける?俺は奴隷としてお前を買っただけだが。とりあえず今のままじゃ不便だから、言葉が分かる魔道具を貸してやるよ』
『言葉が分かる?』
ノースは部屋のすみに転がっていた腕輪をライラに付ける。
「どうだ?これで分かるか?」
「分かる。あなたの言ってることが分かるわ」
「お前の言葉もちゃんとこっちの言葉になってるぞ」
「ありがとう。みんな何言ってるか分からなくて。言葉が通じないままにいつの間にか奴隷になって、売られてちゃって」
「そこで前のご主人を死なせたと聞いたが?」
「うん、ちょっと頑張ったらコロっとね。私もビックリした。あなたは若いしそんなこと無いと思うけど……」
「いや、俺はそういう目的でお前を買った訳じゃないんだ。とりあえず、奴隷の首輪をはずそうか。それがあると色々とばれちゃうから」
ノースが奴隷の首輪を触ると、パキッと音がして壊れた。
「それから、そんな服だとみっともないから服を買っておいで。
どのぐらいいる?」
「そうねえ。5万Eもあれば大丈夫だと思うけど」
「じゃあ、これ。早く帰ってこいよ」
「うん。行ってきます」
ライラはお金を持つと家を出ていった。
それから二日後。
ライラは戻って来なかった。