彼女を求めて召喚魔法②
ノースが次に考えたのが、職業のお姉さんを雇うことと、性奴隷を買うことだった。
両方とも実は最初から考えていた事だ。
けれど、出来ればそれは使いたくない選択である。
お金がかかるからだ。
職業のお姉さんにお願いすると、通常の夜料金+同伴でとんでもないお金がかかる。
だいたい、10万Eぐらいだ。
100Eでハンバーガーの一番シンプルなものが一つ買えると考えれば分かりやすいだろうか。
ちなみに牛丼は280Eだ。
そして、性奴隷は通常100万Eはすると言われている。
ノースは頑張った。
5年間コツコツと仕事をした。
貯めに貯めて貯金がなんとか100万Eまでいったが、それは決して性奴隷を買うためではない。
街で声をかけても女の子は捕まらないので、職業のお姉さんに頼んでその日だけノースの彼女を演じてもらうことにした。
ノースが娼館に行ったのは4日目の昼過ぎのことだった。
まだ日も高かったので、娼館を利用する客はまばらにしかいないようだった。
娼館の入口に細身の男性が立っていて、その人に話をすると、入口近くの待合室につれて行かれた。
中には一人だけ見知らぬ男がまっていた。
しばらくするとその男も呼ばれて奥の部屋へと入っていった。
それから十分ほどして、若く、ピチピチした女の子がノースの所へやってきた。
「こんにちは。あなたってもしかしてノースさん?」
「そうだけど。よく僕の名前を知ってるね」
「うん、ある人が教えてくれたの。この人が来ても追い返すようにって」
「へっ?」
「冒険者ギルドの職員でカミラさんって知ってる?あの人が『もしここに来て女の子を貸して欲しいって言われても断るように』って言われたの。多分ここだけじゃなくて、ほかの娼館でも同じことを言ってると思うわ」
「あいつめ〜!」
4日前にギルドでカミラが「ズルはダメ」と言っていた。
ズルとはきっとこのことだったのだろう。
「ごめんね。一週間後なら、私がたっぷりサービスしてあげるから」
職業のお姉さんの申し訳なさそうな顔に手をふりつつ、ノースは娼館を後にした。
残っている選択肢は後一つだけ。
どうしても使いたくなかった。でも、この方法の他に何もなかった。
ノースは黄昏ゆく街を背に、奴隷商のいる裏路地へと入って行った。
奴隷商はノースを見るなり手をさすって近寄ってきた。
大きな鉤鼻と、丸まった背が彼をより卑しく胡散臭く見えるが、それは放っておこう。
「すまんが、性奴隷を一つ欲しいんだが」
「性奴隷ですか?」
「なんだ、いないのか?」
「い、いえ、とびきり上等なのがいくつもおります。ただ、ここに来るお客様は例えそのような使用目的といえども、声高らかに言う人は滅多におりませんので、びっくりしました」
「それで、そこまで上等でなくてもいいから、安めの奴を頼む」
「はい、安めのやつですね。では何人か連れて参りますので少々お待ちを」
奴隷商は奥に引っ込むと十分ほどして4人ほど奴隷を連れてきた。
先程の娼館は断られたがここでは大丈夫らしい。
「では、ここにいるのがお客様にぴったりの奴隷になると思いますが、どうでしょう?」
奴隷として連れてこられた人は薄い布で胸と腰を申し訳なさそうな感じで隠されただけの姿だった。
一人目は金髪のボブカットで、グラマーな体付きの女性だった。
「この奴隷はいい奴隷です。性格も従順ですぐになつくと思います。奴隷の娘なので、まだどこにも出荷したことがなく、処女なので病気の心配もありません。とてもオススメです」
確かに美人でいい女性だった。だが値段を見てビックリ。230万Eだった。
貯金100万Eのノースには買えない。
却下だ。
二人目は耳付きの赤い髪をした獣人だった。
「この奴隷はいい奴隷です。多少気の荒いところもありますが、その分ベッドの中でも積極的です。その上、腹の中で果てても獣人ですので妊娠する心配はございません」
確かに良い女性だった。値段も98万Eと買えなくはない。
ただし、今回は彼女になってもらう奴隷なので、獣人ではいけない。
却下だ。
三人目は黒髪の少女だ。
「この奴隷はいい奴隷です。物覚えもよく、何に対しても興味津々です。多少幼いですが、そこがいいという方もいます。オススメです」
「ちなみに何歳だ?」
「9歳です」
30歳男の彼女は9才でした。なんてカミラに紹介したら怒り狂うだろう。
却下だ。
四人目は青い髪の女性だった。目の色がひどく濁っている。
「この奴隷はいい奴隷です。どんな扱いをしても何も文句はいいません」
「まて、この子はどうしてこんなに安いんだ?」
値札を見ると10万Eとしていた。
「お買い得品ですから」
「お買い得品って、何か理由があるだろう。もしかして、目が見えないのか?耳が聞こえないのか?実は病気を患っているとか?」
「そう言ったことは全く。ただ、他と違って口が聞けないみたいです。それにこちらが指示してもうまく動けません。
また、前の主人を腹の上で亡くしてしまったので、誰もが気味悪がって買い取らず、この値段になってしまいました」
「ふ〜ん」
「お客様は安い物をお求めでしたので、一応末席に付け加えました。
4番目はとにかく安い。
ノースは意を決してこの奴隷を買うことにした。