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VSクリスタルバッファロー①

翌日の早朝、王都の外に3人の人影があった。


1人はノース・ピース・ウエスト。

職業:大賢者。

装備:ただのローブ。赤いマント。


2人目は片桐アキナ。

職業:女子高生。

装備:制服(スカート改)。


3人目は酒場の店員。

職業:店員。

装備:ただの服。包丁。


目的:クリスタルバッファローの討伐。


「そんなの無理だろう!」


ノースの叫び声が草原に響き渡る。

大体、こんなピクニックにでも行くような格好で魔物退治に行くなんて無謀にも程がある。

普通、魔物狩りに行くには武器と防具に身を固め、狩った獲物の討伐部位を入れるような袋がいる。

さらに、その日の食料や水などの備品も必須だ。

そんな常識はノースだって知っている。

ではなぜここに3人がいるかというと……。


「大丈夫だよ。だってノースさんは魔法使いなんでしょ。魔物なんて魔法でやっつけてよ」


呑気な声で言うアキナが原因だった。


カミラが帰った後、祝酒と言ってノース他、店の常連は店員と一緒に朝まで飲み倒した。

アキナはその間、ソファーの上で熟睡していた。

酔いがまわりに回って空が白み始めた頃、宴会はお開きになり、一同はその場でゴロンと雑魚寝をし始めた。

そんな時、アキナは目を覚ました。

目を覚ましたアキナはノースと店員を叩き起こして外へと連れ出した。

最初は寝かしてくれと懇願していたと思う。


「大切な用事があるんです」


アキナはそう言って2人を引き摺り、王都の端まで連れてきた。

そこで王都の外に出る前に一度拒否したと思う。

するとアキナは


「ノースさん、いいですか?彼女の言うことは絶対聞かないといけないんですよ」


そう言ったのだ。


彼女いない歴30年のノースは納得してズルズルと王都の外まで来てしまった。

そして外の寒さに震えて酔いが覚める頃になって自分達の置かれている状況にびっくりしたのだ。


「いいですか。今日のポイントは、店員さんが狩りを行うという点です。店員さんの力で狩りを成功させて、ギルド長さんにも2人の結婚を認めてもらいましょう」


アキナの目がきらきらと輝いている。

ノースはかわいいなと思いつつ、軽く咳払いをした。


「俺がどんなに偉大な賢者でも、魔物一体倒す為に草原を火の海にしてはならんだろう?だから今日は帰ろう」


「僕もクリスタルバッファローを倒すことなんて出来ないですし、昨日の片付けもして、きょうの仕込みをしなければなりませんので、帰りましょう」


男2人は何とかしてアキナを帰らせようと説得する。

しかし、不運はすでに来てしまった。


遠目に見える地上に降りた太陽。

キラキラと光る体が明らかにこちらへと向かっている。


クリスタルバッファローだった。


「やばいぞ。クリスタルバッファローが迫ってきた!早く逃げるぞ」


そそくさと逃げようとする男たちにアキナが待ったをかける。


「今逃げないと本当に命が危ないんだ。死ぬぞ」


「大丈夫だよ。ノースさんがいるもん」


「だから、俺は魔法が使えなくって……」


「魔法じゃなくて、それがあれば大丈夫なの」


そう言ってアキナはノースの赤いマントを指差した。


「これ?」


「私のいたところじゃ、闘牛士っていうのがスペインにいてね、赤い布をひらひらさせて牛を籠絡し、疲れた所でトドメを刺すっていう人がいたわ。テレビで見たことがあるの。

牛は赤い色を見ると興奮するから、きっと成功するはず。ノースさん、やって見せて」


やって見せてって。


この子は何を言ってるのだろう。

ノースは本気でアホかと思った。

そしてそれ以上に自分はアホかと思った。

彼女の、アキナのキラキラと光る目を見たら、出来ませんとは言えなかった。


「こ、こうか?」


ノースは自分のマントを脱ぐと、体の前に突き出した。


「だめよ、体の横でヒラヒラさせるの。そう、それよ。じゃあ、私たちはあの岩場で見てるから、がんばってね」


そういうなり、アキナは店員さんの手を引いて岩場に隠れてしまう。


「なっ!」


抗議をしようとしたが、すでにクリスタルバッファローが差し迫ってくる。


こうして、VSクリスタルバッファローの闘いの火蓋が切り落とされた。



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