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異世界冒険奇譚 月狂の歌  作者: 鴉野 兄貴
第一章。てのひらのなかの銀河
8/65

 “私”は眠っていた。

“私”は眠っている。

“私”は眠りについていた。


オト。おと。物音。


“私”が目覚める。

“私”は目覚める。

“私”は目が覚めた。


 “ソレ”ガメザメル。“ソレ”ッテナニ?

アレ。ソレ。コレ…。



 ドン!!

激しい揺れに跳ねあがる。

“私”は部屋の扉を空けて甲板に向かった。


 絶句。


 海賊?砂族というのだろうか?

砂上船の上はならず者たちがいっぱいいた。

船員の何人かは動かなくなっている。


 死んでいる?

死んでいる死んでいて死んでいた。

ウゴカナイウゴケナイコワレテイル??


 ワタシモ……コワレル???

愕然とした。

夜なのに。夜なのに。夜なのに。

蜃気楼は出ないはずなのに。出ないハズナノニ。デナイハズナノニ。


 マブタヲトジルトソノオクニ、

なんでナンでナンデ、ウミガミエルノ?


 誰かの思い出? 誰かが故郷を思ったの? 誰が?


 「オレがぁぁぁぁ」世にも恐ろしい声。

後ろから首を締め上げられる。


 「みつけちゃったぞおぉぉぉぅぅぅっっ?? んん~~~? 」引き寄せられる。酒臭い息。

「見つけたぞオレの“いとしいしとぉぉ”? 」


 へへへへっ。その髭面の男はニヤリと笑った。

 隣の男が「へへっ。上玉じゃないですか船長! 」と呟く。


 「へへへへっ」薄れる意識。

「男か女かしらねぇが……どっちにせよたっぷり可愛がってやるからよぉ? 」


 男か女か知らないが? オトコかオンナかワカラナイが。

オトコカオンナカ? オトコデモオンナデモナイ?


 「ひ」

ワタシはサケンダ。

「嫌ァァァァァァッッ!!!」


 ワタシは見た。

月の上には兎が跳ねている。

全然関係ない。だけどオモシロイ。


タノシイ光景ダ。デモ。イマハ、タノシクナイ。


 ズパァ!!!


「え?」


 “私”は唐突に自由になった。


 首に食いついた「なにか」を外す。

人間の……うで……ウデ……腕……!!!

 「ヒィィィィッッッ!!!! 」ワタシハサケンダ。

「ギァヤァァァァアアアアアァァッッ!!! 」オトコの声。


 「大丈夫かい? お嬢様? 」へへっ。と声。

顔を見上げる。“彼”だ。

「呼ばれもせずに、騎士様登場!! かな?」ニタリと笑う。



「貴様ぁぁぁぁぁぁ!!」

"彼"に腕を斬られた男は残った鍵爪のついた義手を振りかざし。

悪いな。と“彼”。

銀色の光。松明の灯りの反射?何故?


「あんたを殺すのに時間はかからない」

いつのまにか抜いていた刀をパチンと納める。


 一度に男の胸から黒い闇が噴出 ……血!!!

血? ち? チ? チチチちちちちいっちぃぃぃ―――!!!


 がたがたと震える“私”。

“彼”はニヤリと笑った。

「まぁ安心しな。“ちょっと眠っている”だけさ」


 「新鮮組!! 零番隊!! ……前へ~~!!!」“組長”さんの声。

何処にいたのか電気発生装置のついた刀を持った少年。

遠眼鏡スコープのついた火縄銃を握った少女。

手製の炸裂玉をもった髪の長い女が何人もあらわれる。

そして海賊(砂族?)達と激しく戦い出した。


 少年が刀を片手にはしる。

少女の放った銃弾には仕掛けがあったらしく、

目潰しの雲につつまれた海賊たちがのた打ち回る所に、

情け容赦無く炸裂弾をぶつける年増の美女。


 悲鳴を上げて砂の海に落ちた海賊をみた。

彼は必死で助けを求めるが、砂は水のように粒子が細かく、重くまとわりつき、やがて沈んでいった。



 “私”が驚いたのは。

“彼”でも“組長さん”でもなかった。

“彼女”の格好。


 ……あのワンピースではなかった。

身体にぴったり吸いつくような独特の服…鎧?よくわからない。


 そして“彼女”が持つ。ライフル。

“彼女”は無言でライフルを構えると、

……立ったまま引金を引く。


 衝撃音。

はるかとおくで海賊の頭が胴体ごと吹き飛んだ。

吹き飛んだ。飛んだ。コワレタ。コワレタ!!!!


 びちゃ。びちゃびちゃ。

「ひぃぃぃぃっっっ!!!!! 」ワタシハサケンダ。


 海賊は鎮圧された。



 海賊達の死体は気がつくと「消えていた」。

“彼”がいうには“あるべき世界に戻った”とのことらしい。


「彼らの存在は人を殺せることを除けば夢と変わらない」と“彼”。


 「連中の魂が夢の中から抜け出て、

別世界――つまり、ここだ。 ――で像を結んだだけだからな。

連中の身体も幻影みたいなもんさ。時が経てば、消える」


 「本来の意味で奴らは死んどらん。

まぁ“死”の記憶は確実に寿命を削ってはおるだろうがな」 と“組長”さんが呟く。


 それに。と“彼女”が続けた。

「かんがえてもみなさい。“蜃気楼”が喋ったり人を殺せるはずが無いじゃないの?

“ありえないこと”なのよ」


 ……。

「“私”が死んでも。……ですか」


 彼らの説明によれば、

海賊達は「本来の世界で夢を見ている」だけらしい。


 なら、“私”がこの場で命を絶てば、

暖かなベッドで目が覚めるのではないか?


 彼らは首を振った。

「“結びの鍵”を持たない人間は、死んだらそのままさ」


 「試したことはないぞよ。ぞっとせんしのう。

鍵を持たぬものは“今いる世界”の者として扱われるようじゃからな」


 “彼女”は言った。

「せいぜい死なないことね」

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