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異世界冒険奇譚 月狂の歌  作者: 鴉野 兄貴
第一章。てのひらのなかの銀河
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 沙漠に浮かぶ蜃気楼。

それははるかかなたの夢の世界。

そしてそれは何処かの誰かの世界。

かならず会える“私”の世界。


 “私”は日に焼けることも厭わず、蜃気楼の中の情景に魅せられていた。

気がつくと大きな大きな麦藁帽子が頭に乗っていた。

誰かが気を効かせてくれたらしい。


 「……見えるか」“彼女”だった。

「わかりません」“私”はこたえる。


 今、古の海賊王の秘宝を求める青年達と、

盗賊たちの闘いが始まったところで、

それに夢中だったこともある。


 「そうか」“彼女”は呟く。

ここは照り返しがきつい。と“彼女”は忠告した。

火傷どころではすまなくなるのでこれを着ろ。と。


 白い布をふんだんに使った服。そしてサンダル。

暑そうだ。そう思う“私”の予想とうわはらに実に快適だった。


 「それから」と“彼女”。

「蜃気楼に魅入るな。特に“音”が聞こえる場合は……」


 聞こえている。血の匂いが鼻に入ってきて“私”は顔をしかめた。

「……こうなる」


「よくわかりました」“私”は呟いた。

“私”たちのすぐとなりに盗賊が放った砲弾が直撃していた。


「……見つけ……たぞ……」闇から響く声。


 大あくびをする青年。隣でライフルの手入れをする年齢不詳の女。

楽しそうに“さぼてん”を弄る“もののふ”。

そして……。


「かならず……手に入れる……」

水晶玉に映る砂上船に手を伸ばす。水晶玉に手の力を込めた。


 ぴしっ。

音も無く砕けた水晶はその結晶構造上の特性から、

主の手の中で激しく爆せ、壮絶に“彼”の手を傷つけた。


ぽたっ。ぽたぽたぽた……。


鮮血が床を染めていく。


闇の中に轟く…哄笑。


宝玉イシも、指環も…“私”のものだ」




 「あ”・・ああぁぁ…」怖気おぞけ

見られている。はるかかなたから。

服など意も介さず。“私”の奥を。

“私”のオク。オクノオクノオク。


 がたがたとからだが震える。

顔色が土色になるのが自分でもわかる。

視線は“私”の服越しに、うなじ、背中、両の脚の先までをねめ回す。


 見られたくない。見ルナ。ミテハイケナイ。ミナイデ。

“私”の様子がおかしいと悟った“組長”さんが、“私”の手首を掴んだ。


同時に、反対の手首を“なにか”が掴んだ。すさまじい力で引き寄せられる。


助けを呼ぼうとしたが声が出ない。


 たすけて。

たすけて。

たすけてたすけて。

たすけてたすけてたすけて。

助けてたすけて助けテタスけてタスケテ。


 その時。

“スパァァァッッ!! ”

“彼”が目にも止まらぬ早業で抜いた刀が“私”の呪縛を解き放った。


 “彼”はニヤリと“私”に笑いかけた。

「よかったじゃないか。お知り合いがいるみたいだぜ?」


 不敵な笑み。邪悪な笑み。不安と期待と冒険心と挑戦心を込めた笑み。

蜃気楼のひとつに笑ってやる。「よくわからんが悔しかったらこっちにきな」


 へへーんと呟き、尻を出してパンパンと叩いた。


 ……この場には女性もいるのに。

その女性は相変わらず表情に変化はない。


 “私”は背後を降りかえる。

“その”蜃気楼だけ、暗黒に包まれ、その先が見えなかった。


 ……“私”の未来?

“私”は首をふってその不安を振り払う。

そんな筈は無い。そんな事は無いんだと。


船は進む。旅はまだ続く。

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