漆
「この先です。この先に」
少年は微笑んだ。『僕』がいますよ。
ぞく。
温和な笑みを浮かべて。その少年は微笑む。
「ふふ」彼の手が、ゆっくりと自らの胸を貫く。
鮮血が飛び散り、塔を。世界を。満たす。
「凄いでしょう。ほら。心臓をくり貫いても。生きていられるのです」
ドクドクと溢れる血。血。血。チ。チ……。
ぐちゃ。
少年は自らの心臓を踏み潰した。
チ。チ。チィ……。
「い、イヤダ。チ。イヤダ」イヤダ。イヤダ。イヤダ。
「"私"さん。もっとミテクダサイよ。凄いんですよ」
べき。ぽきっ。肋骨を自ら引き抜き、微笑む少年。
ばりばり。少年は自らの肋骨を噛み砕いた。
溢れる血。血。血。
血は広がり、塔を飲み込んでいく。塔は脈動し、少年と一体化していく。
「さぁ。『神殺し』どもよ……」
少年の声が響く。
「はじめよう。我の願いは。我自身の消滅……」悲しい。声。
"神"の威圧に屈さず、自らの意思を伝える『願い』を持つものの意思を受け止める者。
元、『冒険者』だった人間。それが。彼。少年。世界の塔を統べるもの。『世界神』。
そして私達は。
『我ら! 夢を追う者!!! 』
『願いを叶える者を助けると言う伝説の冒険者の故事に基づき! 我らはあなたの消滅に加勢する! 』
『"神"よっ! 願わくは我らの想いを見守りたまえっ! 加護より祝福より、呪いに満ちた試練と我ら人の子の命ある道を与えたまえっ!! 』
私達は故事に基づき、宣戦の言葉を挙げます。
『宜しい。古き"神"と"冒険者"の掟に従い。我は貴様達に試練を与えるっ! 願いを叶えたくばっ!
この世界の『理』……人の痛みを。知るがよいっ!!!!!!! 』
これが、"私"たちの恐ろしく、タノシイ『冒険』の始まりだった。




