参
「こんな世界。滅んでしまえ」
少年は嘆く。彼は何度も何度も殺され、発狂しても精神を癒され、何度も何度も砕かれて見せ物にされた挙句の果て『慈悲深く』赦された。
赦された理由は異邦人である"私"の懇願というそれだけの理由だ。
話を聞くと、"私"は異邦人でなければ最下層の位置にいるべき存在らしい。
「この世界では治癒能力の強さが人間の全てだからな」
"彼"がそう呟くと少年は唇をかみ締めた。
「この程度の傷しか治せないんだ」
彼が呟くと、切れた唇が見る見る治っていきます。
この程度……。ですか。
「だから言ったろ。『人の痛みが解る世界』だって」
"彼"はそういうが。全然、人の痛みが解る世界では無い。どうなっているのだ。
「自らを傷つけて、死んでもそのまま蘇ることすらこの世界の住民は可能とする」な。ん。だと?
"彼女"の皮肉げな言葉が響く。「故に『死ぬ』事はこの世界では娯楽に過ぎない」ばか。な。
故に、誰もが怪我をしたときの痛みを知っている。そうだ。
「老化もせんぞ」そうなのか。"組長"。
「『寿命が減る』ことはあるが、延々と若い姿で生き返ることが可能だ」これは"呪術師"。
もっとも、長生きしすぎるとそれでも生き返って死ぬまでの間隔が短くなりすぎてほとんど寝ているそうだが。
「面倒な世界だな」「だね」"委員長"が苦笑いする理由を聞くと、この世界では音楽を聴く習慣があまりないらしい。
寿命が事実上無限なら音楽を嗜むと思うのだが。
「皆、100年も練習すれば音楽くらいそれなりに使えるようになる」……。
「文芸もいまいち流行って無いな」誰でもそれなりの文章がかけるらしい。
「心の痛みは」「だから、他に娯楽がないと言っただろう」
"彼"は呟いた。
「傷つけあって、治しあう。この世界の存在意義であり、同時に最大の娯楽だ」
"彼"がそう説明する間も、人々は挨拶代わりに『殺し合い』生き返らせることが出来ない下層民は必死で逃げ回っていた。
その人々の首に向けて投擲武器が放たれ、次々と首が飛ぶ。
楽しそうに勝ち鬨をあげる貴族たちは彼らに慈悲を与えると称して甦生の魔法をかける。
「これが、『人の痛みのわかる世界』さ」
"彼"はそう呟いた。




