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異世界冒険奇譚 月狂の歌  作者: 鴉野 兄貴
第五章。終末を司るもの

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人の痛みの分かる世界

『人の痛みの分かる世界』「傷つかない国」

季候 常春の穏やかな気候

政治形態 『貴族』制民主主義。『貴族』は完全な『実力主義』で選出。

特記事項 『治癒能力』の高さがそのまま身分を表す。

夢を追う者ドリームチェイサーズ』などの特殊な異世界から来た来訪者たちは除く。

『世界』の規模 四方100キロメートル程度の小国。

 「傷つかない国」

私たちのたどり着いた『国』は四方100キロメートル程度の小さな『世界』だった。

"彼"曰く、四方10キロメートル未満の『世界』も少なからずあるそうだ。

そういう世界は「ゲート」のある神殿を見つけるとき、苦戦するとのこと。


 「神殿そのものがなくて小さな祠だったりな」

"彼女"はそういって苦笑い。人間すらいない世界も少なくないそうだ。


 「歩ける」

"私"の腰から下よりスラリと伸びる。生身の。美しいしなやかで長い脚。


 「ものがもてる」

細く白い腕。白魚のような細い指を握ったり開いたりしてみる。


 「嬉しい」

"私"が感激に浸っていると"彼"らは苦笑した。「久々に女の子らしいことを言うの」とは"組長"さんだ。

失礼な。何処からどう見ても"私"は女だ。

「いやぁ。やっぱり"私"さんは女の子がいいね」

"委員長"さん。ちょっと仰る意味が分かりかねますが。


 "私"には記憶が無い。手足も。無かった。

"彼"らはこの『世界』にて"私"に手足をつける治療術を施してもらうように手配してくれた。

正直、私に手足がつくなど。信じられないのだが。


 「そもそも貴方達とどういう関係かが分かりかねます。"呪術師"さん」

"私"の問いかけに曖昧に笑ってみせる"呪術師"。「少なくとも、手足を捥がれた蝶を助けようという感性はある。かな」そういってウインクするが。

この圧倒的な胸。ボールみたいに。絶対入れ乳に違いないッ。女の敵め。詐欺師めッ。


 「おい。それ、天然だから」認めん。認めんぞ。

どうも口に出していたらしい"彼"の呆れた声にそう返す私に"呪術師"はこうこたえた。

「私は、ミュータントだ。男だぞ」……。どうやら。女を完全に敵に回したようだな。貴様ッ。



 「久しぶりに逢ったのにこれか」「こまったのう」

呆れたように顔を合わせる"委員長"と"組長"を他所に、

"私"と"彼"、"彼女"。そして"呪術師"は騒がしくはしゃいでいた。


手足がある。いいことだ。舌がある。素晴らしいことだ。

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