漆
「旗を出せっ! 」
太陽風を受けて進む私達の帆船からするすると旗が出る。
古の『冒険者』の肩に輝いたと伝えられる片目を閉じている、もしくはウインクして微笑んでいるように見える髑髏のマークである。
「獲物か? 」
私が問うと髭面の同僚はガハハと笑う。私も笑い返す。
「彗星だ」「ほう」
星屑を撒き散らしながら進む星だそうだ。誠に興味深い。
「魔女の箒とも言うのだが、先端に船をつけると高速船として機能する」「ほうほう」
「なにより、豊富な資源の塊だ。下手にオンボロロケットを襲って中に入っている『冒険者』どもに返り討ちにあうより良い」ははは。そんなマヌケな宇宙海賊がいてたまるか。
「マヌケでわるかったな」「ん? 何か気に障ることを言ったか? 」
この髭、時々妙な態度をとるが、概ね嫌いではない。
彗星から豊富な資源を手に入れた私たちは新たな獲物を求めて旅をする。しかし。
「まずい」「どうした」慌てふためく仲間達。大事らしい。
「『冒険者』だ」「向かい撃てば良いだろう」呆れる"私"に。
「バカヤロウ。あいつ等は『夢を追う者達』だ。
その中でも極めて危険で腕が立つ『神殺し』。『華艶』だ」
どりー……む……。か……え……。
一瞬、何か思い出しかけて頭を押さえるが。よくわからない。
だが、忘れてはいけないものだった気がする。
「なんとか逃げられないのか」「無理だ。この先は小惑星帯だ」
小さな岩が大量に浮いていて、海賊の使う太陽風帆船ではかわしきれないというが。
「それならば、ロケットを使う連中も同じだっ! 舵を寄越せッ! 」
面舵を大きく切る。巨大な岩が私達の船を横切っていく。すかさず取り舵で戻す。
「逃げるぞッ!!!!! しっかりつかまれっ! 」
次々と迫る小惑星に砲撃を撃ちながらかわす。しかし小惑星を破壊するには至らない。気休めにもならない。
「追ってくる」「根性のある連中だな。流石『神殺し』と言われるだけある」
「うわああああああ。やっぱり神殺しの仲間を抱きこんだのは失敗だった」阿呆が。襲ってきて当然だ。
「そいつを連れて来いっ 人質にするっ 」「少し難しいっ 」クソ。役たたずめ。
ならば、振り切るのみ。ギリギリまで小惑星に近づき、舵を取ってかわす。
轟音。やったか。
「主砲で小惑星を破壊しやがった」なんだと?!
「チャフを撒けッ! 」「やっているっ! 」「『限りなく質量の無い粒子』を撒くんだッ! 」
恐ろしい奴らだ。しかし振り切ってみせる。




