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異世界冒険奇譚 月狂の歌  作者: 鴉野 兄貴
第一章。てのひらのなかの銀河
5/65

 「よく言う、“きおくそうしつ”って奴だろうな」

“彼”は呟くと両手を合わせる。「ご馳走様でした」

無言で頷く“彼女”。食器を片づける。


 『きおく。そうしつ?? 』

違う。ナニかが違う。だって、だって……頭が痛い。

思い出せない。オモイダシタクナイ!!!!


 “私”が頭を抱えているのを見ると、“彼”は。

「まぁ、言いたく無いこと、思い出したくないことならあえて思い出さなくても良いさ」と呟く。

「それとも、記憶が戻るかどうか、思いっきりぶん殴ってみるか?」へへっ。下品な笑み。

“彼女”は呟いた。「お前がお前にやれば良い。普段物忘れが激しすぎる」といって軽くはたいた。


 そして“彼”は呟いた。

『なぁ。ご馳走様してなんだけど。……おかわりしていいか?』

ニヤリと笑った。


 片づけを終わらせていた“彼女”は嫌そうな顔をしなかった。

能面のような、人形みたいな。……ニンギョウ?


人形。人形。彫像。彫像。作り物。ツクリモノ。マガイモノ!!


 『ひっ…』

“彼女”は“私”を一瞥すると…。

……気が付いたら、また猿轡がはめられていた。


 「まぁ“お前さん”はわかって無いだろうが」

“彼”はそう言ってのけると『よいしょ』と立ちあがった。


 テーブルがあるのに何故か床の上に木の繊維(?)で出来た座布団?を敷き、

その上で膝を折りたたむ様に座って食事をしていたのだ。


 「『繋ぎのゲート』の前に“お前さん”は倒れていたんだ」……ゲート?

「血まみれでね」と“彼女”。


 “彼”は続ける。

「一応捜索願いをあたってみたが、お前さんを指すとおぼしき依頼はなかった」・・・依頼?


 でだ。と“彼”は続ける。

「多分お前さんは“別の世界”から来たんだろうと判断した」“別の世界”?

「なにも覚えていないみたいだな」“彼”はため息をついた。


 「お前さんの着ている服はこの『世界』では取れない繊維で出来ている」???

「そして、“貴方”は“繋ぎの門の鍵”になる品を持っていない」これは“彼女”。


 “私”が不思議そうな顔をしているのをみて、“彼女”。

「“リンクゲートアイテム”ともいうわ。その人の所属する“世界”と“その人”を結びつける印」


 テーブルの上の茶を立ったまま掴んで飲む“彼”。

所謂いわゆる“神隠し”って奴だな」


たまにある。そう呟いて茶をすすった。


 “私”は震える声で呟いた。

「神…隠し・・・」



 「神…隠し」

“私”が呟くと“彼”はうなずいた。

「おれたち冒険者は様々な世界を自由に行き来できる。

何故なら“繋ぎの門の鍵”をもっているからだ。

“鍵”は…わかりやすくいえば家の鍵みたいなもんだ。

家の外に出る時も、入るときも、使うだろ?」


 ボウ…。ケンシャ・・・?

でだ。と“彼”は続けようとして。


 「…なにも知らんようだな。冒険者って言うのはまぁ。

“なんでも屋”に近い。もっとも“少々”荒事に分類されるなんでも屋だがな」


 “彼女”は続ける。

「偉大な冒険者集団のチーム名から、

夢を追う者達ドリームチェイサーズ”とも言うわ。

見果てぬ夢を求め、誰からの保護も受けることもならず、さまよう自由人」


 「夢を……追うもの……」“私”は呟いた。


「ドリーム……チェイサーズ……」


 「この場合重要なのはだ」“彼”。

「おれたちは“世界”を自由に出る事が出切る。同時に帰って来れる」


 “彼女”が続ける「でも、“あなた”は」

……もとの、世界に、帰れない?


 ふたりはうなずいた。


 「もともと『世界』同士には鍵がかかっているようなもんだからな。

出る時は必ず鍵をかけ直して出ていく必要がある。そうで無いと帰ってこれない。


 正確にいえば“自分の世界に自分の存在を覚えていてもらう”かな?」

「ちょっと違うと思うけど?」「そか」“彼”に“彼女”が突っ込みを入れる。


 「“あなた”は言ってしまうと、家の窓から飛び出したようなもの。

一度出ると、“家”が知らずに鍵をかけてしまう。そして正式な扉をつかって」


 帰ってこれない。鍵を持っていないから。

……ふたりは無言で頷いた。


 「まぁ安心しろ」“彼”は言った。「帰る手段はある」

「“門以外の方法”はあるわ。数少ないが」これは“彼女”。


 「ほうほう?」“私”がいうと“彼”はニヤリと笑った。

「外に出て…見てみな」そと?


「面白いものが見えるぜ」


 “私”はきしむドアを開けた。

床も壁も、みしみし言うほど古く、あちこち穴があき、

オイルやワックスを塗っていない為、木の棘が出ていて裸足では危ない。


 なにか―――きぃきぃという ―――激しく不愉快な音に顔をしかめる。

船の中らしい。独特の揺れ、腐った海草の匂いからして間違い無い。


 だが……船の中にしては。空気が乾燥しすぎている??

その疑問は甲板に出た時に氷解した。


 「あ……。ああ……」

ぎいぎいという音。

ぎらぎらてりつける太陽。


 そして。……はるかかなた、何処までも続く……砂丘。

舷側から下を見るとざぁざぁと。

……細かい。水のように細かい砂がまるで海のように激しく動いている。


砂は絶え間なく動き、一部では渦を巻き、あるところでは激しく波打つ。


 砂上船。


いつのまにか隣にいた“彼”が呟いた。

「これからもっと面白くなるぜ。期待しな」

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