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異世界冒険奇譚 月狂の歌  作者: 鴉野 兄貴
第三章。機械世界の"呪術師"

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壱拾伍

 「神は死んだっ! 」

「神がっ?! 我らの母が死んだっ!!!!!!!! 」


 「塔」は『愛が罪になる世界』の様子を私たちに伝える。

"私"たちはため息をつき……そして笑った。


 「……神の後継者になるかい? 」

委員長が、「その機械」を指差す。『塔』と一体化し、新たな『創造神』となるための装置。


 「不要だ」

"呪術師"の青いルージュを乗せた形のよい唇が動き、微笑みの形を成す。


 「……」

"彼女"は言葉を発しない。

ただ、胴に穴の開いていた。"彼"の手を握って座っている。


 その、"彼"だが、かろうじて息はあった。らしい。

「大莫迦」そういう声が何処からか聴こえた。女性の。声だった。

……。

 ……。


 「まさか、レーザーチャフが無いからって身体で止めるなどありえぬわ」

"組長"が呆れている。


 不敵な笑みを浮かべる"彼"。

「まぁ、勝てば良いんだ」「……」

そんな"彼"に冷たい瞳をぶつける"彼女"。


 「ところで、お前らは何を願った? 」

そう。神殺しの代償は。「願いを叶えること」

ただし、その後の呪われた人生は、死より恐ろしいというが。


 「……まぁ、特にないのう」

組長はニヤリと笑った。ウソつき。友達の即時甦生を彼は願った。


 「俺は、お前の身体だが」

そう"彼"は言った。


 「……耳だ」

そう、"彼女"は呟いた。

「……魔法や機械の耳とは、違う気がする」

そういって彼女は視線を移す。その先には"委員長"。


 "委員長"の蛇味線じゃみせんの軽快な音と、素敵な歌声が響く。

「唄とは、こう聴こえるのか」

"彼女"は微笑んだ。確かに。微笑んだ。


 「では」

"呪術師"がニヤリと笑うと、『塔』から『愛が罪になる世界』の民に語りかけた。



 「―――『神』は死んだっ?! 何故だっ??! 私が殺したからだっ?!」

"呪術師"を、"私"たちを恨み、呪う声が『塔』に響き渡り、

その圧力が物理的な力となって"私"たちを攻撃する。


 「何故かっ?! 何故殺したかだとっ?! 」

「彼女が望んだのだっ!! 彼女自身が望んだのだっ!!!!!!

愛とは、与えるのみではないっ!!!!!!! 与えられるものでもないっ!!!!!


 掴み取るものだとっ!!!!!!!! 自ら見出すものだとっ!!!!!!!!」


"呪術師"は大声で『世界中』に告げると、自らのローブを引き裂き、その裸身を見せた。


 「この身体を見ろっ! コレが女の身体だっ!!!!!!!!!! 

死んだ『神』の言葉を信じ、今なお私を殺すか?! ……それとも」


呪術師"は妖艶な笑みを浮かべた。


 「……欲しいかっ?! この身体を弄び、乳房を吸い、局部を嘗め尽くし、

獣の雄のように、精を尽くすほどに……この身体を求めるかっ?! 」


 そして、"呪術師"は「すまん」とだけ「彼女」に告げてから続ける。

「この娘を見ろっ?! 首から下は身体すらないっ!!!! 心すら、彼女には与えられなかったっ! 」

そう、"彼女"は闘うために生まれた生体サイボーグ。もとより、心すらない。



 「しかし、彼女は知っている!!!!!!!! 『愛』を知っている!!!!!!

貴様らの愛はなんだっ?! 情欲のままに肉体にくを貪るのみかっ?!

それとも、神の『愛』を求め、ただ崇めるだけかっ!!!!? 」


 ……『愛』を知っている。愛を。知っている。

"彼女"は『愛』を知っている。


 「『彼女』は。……『彼女』は。我が母はっ!!!!!!!!!!

愛よりも死を望んだっ!!!!!!!!!!!!!

死より、狂気を選んだっ!!!!!!!! 何故だっ?! 君達を愛していたからだっ!!! 

この都を、この『世界』の安寧と幸福を願い、自ら全ての『母』となった!! ……だが」


 ここで"呪術師"は言葉を切る。


 「……彼女は狂い、また昔の『神』と同じ過ちを繰り返した!

私はそのことについて彼女を責める気持ちはないっ! むしろよくやってくれた!

……この滅びに満ちた世界を救うため、彼女は全力を注いだっ! 」


 しかし。


 「しかし、この『神』は。我らの作り出した『神』はっ!!!?

出来損ないの、虚ろの玉座だったっ!!!! 私はここで。このっ! 偽りの神を排除するっ! 」


 「貸せ」

"彼女"は無言でマシンガンを"呪術師"に渡す。そして黙って首を縦に振る。

マシンガンの発射音が鳴り響き、『玉座』を砕いていく。


 「貸せ」

涙を流し、崩れ落ちる"呪術師"に手を差し伸べる"組長"。

そして、代わりに撃ち続ける。


 "彼"が爆弾を投げ、"委員長"も力を貸す。

"私"のハンマードリルが『塔』の機能を破壊し、"彼女"の銃弾が轟いた。


 耳が潰れるほどの騒音は、この世界を救うためにその身と人生を捧げた女性の。

嘆きの声に聴こえてならなかった。

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