壱拾伍
「神は死んだっ! 」
「神がっ?! 我らの母が死んだっ!!!!!!!! 」
「塔」は『愛が罪になる世界』の様子を私たちに伝える。
"私"たちはため息をつき……そして笑った。
「……神の後継者になるかい? 」
委員長が、「その機械」を指差す。『塔』と一体化し、新たな『創造神』となるための装置。
「不要だ」
"呪術師"の青いルージュを乗せた形のよい唇が動き、微笑みの形を成す。
「……」
"彼女"は言葉を発しない。
ただ、胴に穴の開いていた。"彼"の手を握って座っている。
その、"彼"だが、かろうじて息はあった。らしい。
「大莫迦」そういう声が何処からか聴こえた。女性の。声だった。
……。
……。
「まさか、レーザーチャフが無いからって身体で止めるなどありえぬわ」
"組長"が呆れている。
不敵な笑みを浮かべる"彼"。
「まぁ、勝てば良いんだ」「……」
そんな"彼"に冷たい瞳をぶつける"彼女"。
「ところで、お前らは何を願った? 」
そう。神殺しの代償は。「願いを叶えること」
ただし、その後の呪われた人生は、死より恐ろしいというが。
「……まぁ、特にないのう」
組長はニヤリと笑った。ウソつき。友達の即時甦生を彼は願った。
「俺は、お前の身体だが」
そう"彼"は言った。
「……耳だ」
そう、"彼女"は呟いた。
「……魔法や機械の耳とは、違う気がする」
そういって彼女は視線を移す。その先には"委員長"。
"委員長"の蛇味線の軽快な音と、素敵な歌声が響く。
「唄とは、こう聴こえるのか」
"彼女"は微笑んだ。確かに。微笑んだ。
「では」
"呪術師"がニヤリと笑うと、『塔』から『愛が罪になる世界』の民に語りかけた。
「―――『神』は死んだっ?! 何故だっ??! 私が殺したからだっ?!」
"呪術師"を、"私"たちを恨み、呪う声が『塔』に響き渡り、
その圧力が物理的な力となって"私"たちを攻撃する。
「何故かっ?! 何故殺したかだとっ?! 」
「彼女が望んだのだっ!! 彼女自身が望んだのだっ!!!!!!
愛とは、与えるのみではないっ!!!!!!! 与えられるものでもないっ!!!!!
掴み取るものだとっ!!!!!!!! 自ら見出すものだとっ!!!!!!!!」
"呪術師"は大声で『世界中』に告げると、自らのローブを引き裂き、その裸身を見せた。
「この身体を見ろっ! コレが女の身体だっ!!!!!!!!!!
死んだ『神』の言葉を信じ、今なお私を殺すか?! ……それとも」
呪術師"は妖艶な笑みを浮かべた。
「……欲しいかっ?! この身体を弄び、乳房を吸い、局部を嘗め尽くし、
獣の雄のように、精を尽くすほどに……この身体を求めるかっ?! 」
そして、"呪術師"は「すまん」とだけ「彼女」に告げてから続ける。
「この娘を見ろっ?! 首から下は身体すらないっ!!!! 心すら、彼女には与えられなかったっ! 」
そう、"彼女"は闘うために生まれた生体サイボーグ。もとより、心すらない。
「しかし、彼女は知っている!!!!!!!! 『愛』を知っている!!!!!!
貴様らの愛はなんだっ?! 情欲のままに肉体を貪るのみかっ?!
それとも、神の『愛』を求め、ただ崇めるだけかっ!!!!? 」
……『愛』を知っている。愛を。知っている。
"彼女"は『愛』を知っている。
「『彼女』は。……『彼女』は。我が母はっ!!!!!!!!!!
愛よりも死を望んだっ!!!!!!!!!!!!!
死より、狂気を選んだっ!!!!!!!! 何故だっ?! 君達を愛していたからだっ!!!
この都を、この『世界』の安寧と幸福を願い、自ら全ての『母』となった!! ……だが」
ここで"呪術師"は言葉を切る。
「……彼女は狂い、また昔の『神』と同じ過ちを繰り返した!
私はそのことについて彼女を責める気持ちはないっ! むしろよくやってくれた!
……この滅びに満ちた世界を救うため、彼女は全力を注いだっ! 」
しかし。
「しかし、この『神』は。我らの作り出した『神』はっ!!!?
出来損ないの、虚ろの玉座だったっ!!!! 私はここで。このっ! 偽りの神を排除するっ! 」
「貸せ」
"彼女"は無言でマシンガンを"呪術師"に渡す。そして黙って首を縦に振る。
マシンガンの発射音が鳴り響き、『玉座』を砕いていく。
「貸せ」
涙を流し、崩れ落ちる"呪術師"に手を差し伸べる"組長"。
そして、代わりに撃ち続ける。
"彼"が爆弾を投げ、"委員長"も力を貸す。
"私"のハンマードリルが『塔』の機能を破壊し、"彼女"の銃弾が轟いた。
耳が潰れるほどの騒音は、この世界を救うためにその身と人生を捧げた女性の。
嘆きの声に聴こえてならなかった。




