陸
6話7話をまとめて投稿してしまったので、分けておきます。
「起きろ"委員長"」"彼"が"委員長"と言う青年をたたき起こした。
『……あれ? 』"委員長"は私を見て不思議そうにしている。
「今日は男らしい」意味がわからない。性転換でもしたとか言う気か。"彼"は。
「……おっと」何故か殴りかかる"委員長"の攻撃をかわし、脚払いをかける"彼"。
『納得しました』謎の言葉が頭に響いた。
……なんだ、この現象は?
「この世界は、『拳で語る世界』だ」
"彼女"が苦笑いしつつ、解説する。住人全員が言葉をしゃべれぬ反面、
殴りあった相手や、格闘を見ていた人間に自分の思いを伝えることが出来る能力があるという。
なんと、はた迷惑な世界だ。
『慣れるとこれはこれで気楽で良いのじゃ』
寝ている手近な青年を叩き起こした老人はそう『言った』が、どう見ても独り言はできそうにない。
『ただ。"大きく声をだして"唄えぬことが悲しい』
「……だ。そうだ」肩をすくめる"彼"と"組長"。
どうするのだ?
「"神"に頼むさ」
そういって彼らはニヤリと笑った。
美しい砂浜と島の『世界』だが、他の『世界』と同じく二つの『迷宮』と神の『塔』を持つ。
『塔』がない世界、『迷宮』がひとつしかない世界もあるにはあるが、そういう世界は原則、人間が住んでいない。らしい。
『塔』はこの世界の何処からでも見える。
天を突く、美しい塔だ。高い。恐ろしく高い。
「『迷宮』を攻略して神に資格を与えられてって手順は踏まなくていいらしい」
そういって『彼ら』は武器の準備をする。
「『冒険者』の出番だ」
彼らは。いや。私達は腕を組み合い、勝利を祈った。