婚約破棄され妹に財産も奪われた。復讐しても許されますよね?
私が復讐しても許されるランキング5位だと判明したのは、よく分からない謎の占い師がそう認定してくれたからだ。
でも私はその人のことを信じることにした。
ちなみにその占いっていうのがちょっと変わったやり方で、質問に、「はい」か「いいえ」でどんどん答えていく感じだ。
例えば……
「では、占いをするにあたり質問をさせていただきます。ものを盗まれたことがありますか?」
「はい」
「婚約破棄されたことがありますか?」
「はい」
「容姿を蔑まれたことがありますか?」
「たくさん、はい」
そして全ての質問が終わった時、占い師の人が私を抱きしめた。え、な、なんで?
「私が毎日占いをやっていて、久々に全てはいと答えた人だわ」
「あ、そういえば、いいえって言った覚えがない……」
「そうでしょう? あなたは復讐しても許されるランキング5位に認定するわ」
こうして、私は、復讐しても許されるランキング5位に認定された。
「というわけでとことん復讐しようと思うんだけど、どうしたらいいかな?」
「マジで知らん」
私が相談したら、セルオは呆れた顔をした。
セルオは私の学びの友。一応関係性を言うならね。
私とセルオは同じ学園を卒業して、それぞれ人生を歩み始めたが、セルオは研究者として多忙、私は私で翻訳家として多忙になった。
しかし、私は多忙な以上に、不幸だった。
だから占い師に復讐してもいいって認定されたわけだけど、どう不幸だったかの細かい話はもう少し後で。
それよりも今、セルオに呆れられてるから、なんとかしないと。
「待ってよ。私だって復讐が目的になるのは良くないってわかってるよ」
「そうなの?」
「でも……悪いことしたのに野放しなのはおかしいじゃん」
「まあそうだね。でも君はある意味結構すでに幸福だし、まあそんな無理して急いで復讐しなくてもとは思うね」
「ある意味結構すでに幸福……」
「ああ。だって、こんな頭も良くて割とカッコいい僕との親友関係は続いてるじゃん」
「うざ。あなたにもミニサイズの復讐を添えてあげましょうか?」
「ごめん」
「はあ〜。なぜナルシストが直らないのかしら。まあ性格ってそういうもんね。私が根に持つのが直せないのと同じ」
「はいはい、だから君は復讐のモチベーションが高いと」
「そういうこと」
「じゃあ僕は引き続きナルシストで行きます」
「いいけど普通に人に嫌われるからね」
「君は……?」
「もう慣れたからどうでもいいわ」
「あ、そう。じゃあ僕も君が執念深く復讐するタイプでも一旦スルーして見守っといてあげるよ」
「協力はしてくれないの?」
「頭脳派のイケメンと協力関係になりたい?」
「流石にうざさがやばいけどなりたい」
「オッケー。じゃあ協力するよ。そのよくわからない占い師も復讐していいって後押ししてるみたいだしね」
その後、セルオにまず、私が不幸になった経緯をちゃんと説明した。
彼に詳細を話したことはなかったのだ。
「まずね、どうやって婚約破棄されたかだけど……」
「君可愛いのに婚約破棄されるって確かにどうしてなんだろう?」
「あのね、その疑問はいいから」
ああ。私は小さい女なのでちょっとだけ嬉しい。
で、口が達者になるくらいの嬉しさだったので、私はちゃんと説明した。
まず、政略結婚で、外交面で権威のある貴族の三男と婚約することになった。
しかし、彼は努力ができないタイプで、外国語もできず、翻訳家の私の実力があることを一方的に僻み、暴言ばかりを私に吐くようになった。
で、さらには私といると調子が狂うだの、顔が丸いから気に入らないだのいい出して、ちょっと暴力も振るわれ、最終的に婚約破棄して逃げていった。
私は明らかに向こうが悪いのに凹んでしまい、しばらくは病院に通ってケアを受けていた。
そんな私が自分の体調で精一杯の間、なんと妹が私の部屋に無断で侵入し、貯金を金庫から奪っていたことがわかった。
だけど妹は私が妹に贈与したと主張し、偽造の贈与の契約書を作り、それが偽物だと私は証明できなかった。
こうして私は悲しい財産なしの女性になってしまったのだ。
「確かにとてもひどい話だ」
「でしょう?」
「よし、それなら本格的に復讐を考えるか」
「セルオがそんなに主体的に考えてくれるなんて……! ありがとう!」
「と言っても、何も思いつかないけどね。まずそのひどい男とひどい妹は今どこにいるの?」
「私もあんまりよく分かってないんだよね……」
「分かってないのかい。だとしたらそもそも復讐できないじゃん。あ、でも悪事を大々的に暴く系ならできるか」
「うん、そうだね」
「じゃあその方向で考えよう」
「ありがとうございます」
「いや、君は君で考えてね。そしたら案をうまく組み合わせたりできるかもしれないんだから」
「はーい」
というわけで、各自考える時間。
紅茶がかなり進んだ。
で、考えはほんの少しだけ進んだって感じだけど……
「セルオは、何か思いついてくれたりした?」
「もちろんしたよ。感謝してほしいね」
「すごく感謝します」
というわけで、お互い考えたことを発表した。
「私としては……次に悪事に手を染めたときに絶対逃さない作戦! ね」
「次に悪事……」
「そうよ。悪事をしてバレてない。さらに、元からの性格がダメとなると、絶対にまた次の悪事に手を染めるものだわ」
「なるほど」
「だから、次に悪事を起こした時に捕まえるってわけ」
「で、次の悪事っていうのは、どういう感じで、どこで起こるんだい?」
「それは、わかりません!」
「なるほど……やはり僕は僕で案を考えておいてよかったようだね」
セルオが得意げに言う。
「セルオの案を聞かせて!」
「任せてほしい。まず、僕は君が復讐したい二人が、二人とも訪れそうなところを思いついた」
「えっ。ほんと? それはどこ?」
「最近できた多種多様なギャンブルができる店だよ。僕の予測では、お金に目が眩んだ人と、一発逆転して名声を得たいタイプの人は、みんな集まってきている」
「そんな店ができたのね。二人とも行きそうね〜〜」
「だろう。だから次の悪事の発端は、ここで起きるんじゃないかと」
「てことは、もしかして、そのお店に潜入して、私たちもギャンブルをしないとダメな感じ?」
「いやいや、店の向かいが上品なバーになっていて、窓からその向かいのギャンブル店が見れるから、そこから見張れるよ。中の様子は見れないけどね」
「なるほど、じゃあ、そこで毎晩見張ることにするわ」
「退屈だろうから、しゃべり相手に僕もついて行った方がいいかな?」
「着いてきてくれるの?」
「ああ。いいよ。夜はいつも暇なんだ」
「じゃあよろしく! 大変助かります!」
「そりゃよかった」
こうして私たちは、毎日上品なバーに通い、ギャンブル店の様子を見張ることにした。
で、最初の十日間は、ただバーで上品にお酒を飲んだだけで終わった。
お目当ての人物は来ない。
すでにギャンブルに飽きたとか、破産したとか、そもそもギャンブルをやってそうという見立てが間違ってたか……
毎日通うのも意味ないかな、と思いつつあった11日目。
なんと、婚約破棄した暴力的なあいつが店の中に入っていくのを発見した……!
「いたいたいたよ!」
「僕の予想がしっかりと当たったみたいだな。素晴らしい、僕」
「ナルシストは今いいから! それより、私たちも中に入る?」
「どうするべきかな……中に入ったら目があって、もう互いの存在バレバレで鉢合わせたりするかもしれないからね」
「うーん。じゃあここで見張ってようか。なんか店を出てきた時の雰囲気で、変な動きをしそうだったら後を追う!」
「……それがいいかもしれないね。やや危険そうだけど」
「私、結構強いのよ?」
「いやいや、甘いよ。暴力的な男は怖いよ」
「そうね。私が一番分かってるはずだったのに……」
「でも今回は僕が守る。そう宣言するから安心して」
「まあちょっと頼りないかもだけど、ありがとう」
「頼りない……」
「ごめんね訂正。シンプルに、ありがとうってだけ伝えたいわ」
と、話していたけど、なかなか誰も出てこなかった。
しばらくして、数人の男が出てきたけど、そこにあいつはいなかった。
相当ギャンブルしてんだろうなあ……。
眠くなってきた。
まさか、夜通しギャンブルするつもり……?
セルオは……寝そう!
もう今日は諦めるか……一緒にいてくれてるセルオにも申し訳ないし……
と思っていたところで!
店からあいつが出てきた。
さて、どんな様子だろうか。
とりあえず酔っているようだった。
暴力的なのは健在なのだろうか。何か怒鳴っている。店の中に向かって。
でも何を言ってるのかはよく聞こえない。
でも……絶対なんかトラブルが起こってるって。
「ん? もしかして店から出てきた?」
セルオもはっきりと目が覚めてきたみたいだった。
ここから後を追いたいところだけど……。
あいつはまだ、店の中の誰かと争っている。
どうする?
とりあえずバーの支払いはした。
でも、あいつが馬車とかを呼んでいてすごい速さで去って行ったら、追うことはできない。
じっくり観察していると、店の中にいる、あいつの争いの相手は……女性のようだった。
「相手の女性、知ってる?」
セルオにそう聞かれた。
「よく見えないけど……たぶん知らない風貌ね。というか…かなり向こうの女性は女性で騒がしいね……」
「そのようだね……近くに行って見てみる?」
「怖いけど……うん。そうする」
セルオが本当にちゃんと守ってくれる気がして、私は争いの場に近づく勇気が出た。
どうやらちゃんと、セルオのことを心の底から信頼できているみたい。私って。
ギャンブル店の前までやってきた。
まだ争ってる。
私のすぐそこで……。
あいつと女性の声もしっかりと聞こえた。
「イカサマして俺から金を奪ったんだよお前は!」
「知らないわよ? そもそもそんな証拠あるのかしら?」
「お前がずる賢すぎて証拠はないけどな、殴ってでも自白させてやる」
物騒な状況ね……。
でも、私は呆れることも怖がることもできなかった。
なぜって……衝撃の事実に気づいてしまったからだ。
「ねえセルオ。争ってる相手の女性、いつの間にか雰囲気が変わった私の妹なんだけど……」
「う、嘘だろ?」
「ほんとだよ……ただ……目がおかしい。振る舞いも動きも……」
それは、ますますお金に執着し、人から奪おうとする貪欲さが現れている目と動きだった。
はあ……。
でも私は、セルオとにっこり笑い合った。
あいつは暴力を振り、妹はおそらく詐欺してお金を奪った。
二人とも警察に突き出してやろうじゃないの!
というわけで私が呼んだ警察に捕らえられ、二人とも馬車に乗せて運ばれていった。
情けない去り方だわ。でも、それがあいつらの今の現状。
私は思った。
まあもう、あの人たちがあまりにも惨めすぎて、復讐しても許されるランキング5位って言われたけれども、もうこれ以上復讐する気も無くなったよね。
「セルオ、……結局、無駄なことをしたかも」
「いやいや、そんなことないよ。僕みたいなハイスペイケメンと十日以上も連続で一緒にバーに通えたじゃん」
「あんた……」
私は結局、呆れるエネルギーをセルオに使ってしまった。
でもそんなナルシストで呆れさせ人間のくせに、結局根が優しいし私を大切にしてくれちゃうから……
……一年後に、私は彼と婚約してしまうのだ。
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