表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/54

第45話 会話


東二局。

親はイースト。


依然として、宇宙人たちの打牌速度は異常だった。

牌をツモッてから捨てるまでに、

思考時間というものが完全に欠けているように見える。


「君たち、本当に考えて捨ててる?」


「我々はツモ巡が回ってくる前から」

「全ての計算が終わっている」


相変わらず会話を繋げてくる双子に対して、

神宮司はため息をついて答えていく。


「ふ~、仕方ないなあ」


それだけ呟くと、彼の順番が回ってくる。

牌をツモり、瞬時に牌を切る。

その速度は双子と全く変わらなかった。


「……ガキだな、神宮司……まあ付き合ってやるか」


赤井が皮肉染みた言葉を吐くと

同じように牌を拾い、即座に捨てる。


卓上の4人が高速で場を回していく。


『こ、これは何を見せられているんだ!?

 4人が牌をほとんど確認せずに捨てているようにしか見えません!』


叫ぶ実況席、だがシャケをはじめとする、

地球の麻雀ファンは何の驚きもない。


「いや、麻雀プロレベルなら普通に出来るんですよ。

 あれぐらいの打牌速度。

 双子は牌を見てから即捨てる。

 神宮司さんと赤井さんも勿論、回ってくるまでに考えていて、

 牌を見る前、手で掴んだ瞬間から判断している」


『見る前から牌が分かっているとでも?』


「ええ、盲牌って言うんですけど。

 ほとんどのプロは手にした瞬間に何の牌かわかります」


『……通信対戦がメインの宇宙ではありえません』


「まあ、あの二人なら盲牌しなくても、

 かなりの打牌スピードなんですけど……魅せたいんでしょうね」


・宇宙人、牌あまり触ったことない?

・そういわれると、判断自体は速いけど牌の扱いがイマイチかも

・そりゃ盲牌できんわwww

・宇宙の麻雀技術には必要ない

・言いたいことは分かる、別に得することないしなあ

・というか、Mリーグルールなんでしょ?関係なくね?


「くだらん」「そのような技術」


高速で回る卓上の中、双子が声を重ねていく。

それを受け取ると嬉しそうに神宮司が被せていく。


「折角だから見せて上げたんだよ、地球の技術」


バチンッ!

赤井が強烈な音を立てて牌を叩きつける。


「……くだらんのはこっちだ。

 もういいだろ、神宮司」


「はいはい」


大袈裟なまでに神宮司が眉を上げると

一巡周り、再び赤井の番へ。


「……ここまでだ」


それだけ呟くとポケットに手を伸ばす。

タバコを取り出そうとするが、即座に制止が入った。


「赤井さん!だから禁煙だって!」


「チッ」


舌打ちだけすると、ガムを口にしていく。

先ほどまでと違い、卓上は完全に赤井の番で止まっている。


「はやく打て」


イーストの声が拡がるが、赤井は動かない。


「……お前馬鹿か?

 宇宙ではどうか知らんが、

 スピードなんてどうでもいいんだよ」


「別に速く打つこと自体は出来るんだけどね~。

 ほらこの人、天邪鬼だからさ」


何万と対局を重ねてきた彼らにとって、

序盤の手作りは呼吸と同じ。

速く打つことは簡単だ。


ただ、赤井は単純に気に入らなかった。

打牌速度で圧倒出来ると勘違いしている宇宙人が。


「……ここからは普通に打つぞ、神宮司。

 少しは年寄りを労われ」


「そんなタマじゃないでしょうに。

 まあ、疲れるから普通に打ちましょう」


掛け合いが終わると赤井が牌を捨て

イーストの番が回ってくる。


「よかろう、また止められても面倒だ」

「お前たちに合わせて打とう」

「しかし、上がるまでの速度は変わらない」


重なる声が終わると、例の鳴きが盤面に響いていく。


「チー」「ポン」「チー」


最後は、上がりへの一声。


「ロン」


イーストからウエストへの差し込みが静かに行われていた。


「南、チャンタ、ドラ2。満貫8000点」


【東二局】

東家:神宮司 25000

南家:イースト 19000(-8000)

西家:ウエスト 31000(+8000)

北家:赤井 25000


『東二局も宇宙側の上がりだ!

 地球二人は眺めることしか出来ない!!』


双子による点棒の受け渡しが終わると、

東家に座る神宮司が笑顔で話しかける。


「親流しちゃったけどいいの?」


「互いに最速で上がり続ければ」「何の問題もない」


「はいはい、そうですかデジタル万歳だね」


皮肉を言いながら、牌を中央へ流していく。


局面は東二局が終わり、東三局ウエストの親番へ。


淡々と5巡経過すると、

イーストとウエストの二人は必要な手牌が揃ったのか、

再び、鳴きの連打を入れていく。


「チー」「ポン」「チ……」「ポンだ」


ウエストのチーを遮るように、赤井の声が響き渡った。


麻雀の鳴きは2種類ある。

「チー」と「ポン」


チーは前を打つ人物から鳴くことしか出来ない。

ポンは誰が捨てても出来る。

そして、チーとポンが被った場合、ポンが優先される。


赤井はそっとイーストから鳴いた牌を

卓上の隅に寄せると呟いていく。


「……おい、神宮司」


「どうしました?」


対局中の私語。

厳格な公式戦ならマナー違反で注意される行為だが、

この対局、ここまでも4人互いに会話を続けている。

……つまり。


「お前、ドラの9索、トイツ(2個)で持ってないか?」


実況席の3人と、

麻雀対決を見守る銀河、地球全土がざわめいていく。


「……あちゃ~、バレてましたか。持ってますよ」


神宮司が、さも当然のように答えていく。

本来なら隠すべき情報をあっさりと公開した。


リーチ星人の双子が、

信じられないという目つきで睨みつける。


「情報の公開は勝率を下げる要因となる」

「ブラフの可能性ありとみた」


混乱する宇宙人をよそに、赤井はニヤリと笑った。


「……そうか、じゃあやるよ。

 昨日2軒目奢ってもらったからな」


赤井が手元から、牌を捨てる。

それはドラの9索だった。


「ポン」


神宮司が即座に牌を倒すと、

赤井からのプレゼントを受け取り、陽気に答えていく。


「これだけじゃあ足りませんよ。

 アンタ高い酒ばっかり飲むから」


「……それは済まないことをした」


目の前で堂々と行われる談合。

隠れてやるサインでもない。


口頭で確認し、牌を譲渡する。

それは地球人が繰り出せる、最も原始的で強力な通信手段。

『会話』だった。


『こんなことがあっていいのか!!!

 普通に喋って牌を渡している!!』


・wwwwwwwww

・宇宙人、ここだ!ここで草だ!

・草

・草

・草

・嬉しそうww宇宙人ww

・最早、通しとは言えないww

・アリかこれ?

・ルールブックに私語禁止とは書いてないな

・双子も通信してるらしいからいいだろ

・それにここまで何回も会話してきてる

・マナーどこいったw


実況席ではシャケが両手を叩いて爆笑しつつ、フォローを入れる。


「はっはっは!!

 確かにマナー違反ですね。

 ですが……ルール違反はしていない」


そのまま隣にいるスズカと目を合わせて、言葉を続けていく。


「つまり……」「合法です」


シャケは思う。


まず、東二局が不自然だった。

打牌速度なんてどうでもいいはずの二人が、

謎に絡むこと自体がおかしかった。


二人は卓上の会話がどこまで許されるのか、

それを確かめていたのだ。


そして、普通に会話をしても警告が出ないことを悟ると、

堂々と必要な牌を渡した。


宇宙側も双子の能力で意思疎通しているのは公然の事実。


それを違反と捉え、防ぐ術がない以上、

地球側だけ会話という能力を奪うことはもう出来ない。


卓上では、無表情のまま双子が喋り出していた。


「そのようなことをしようが」「我々に負けはない」


「どうかな~それは。

 君たちに出来て、僕たちに出来ないとでも?」


それだけ告げると、神宮司が1筒を捨てる。

すると……。


「ポンだ」


赤井が鳴いて、語りかける。


「で、何を捨てたら酒代チャラになるんだ?」


「わかってるクセに~、僕の心と同じ『白』ですよ」


「……なんだそれ」


吐き捨てるように、赤井が「白」を捨てる。


「ロン」


神宮司が牌を倒す。

赤井からの直撃。それは身内同士の点棒移動だった。


「白、ドラ3。満貫8000点です」


【東三局】

東家:神宮司 33000(+8000)

南家:イースト 19000

西家:ウエスト 31000

北家:赤井 17000(-8000)


ウエストの親番が、地球人同士の差し込みによって終了した。

点棒は赤井から神宮司へ移動しただけ。


それぞれ身内の点棒移動だけで、

互いの総得点は変わらないが、1着だけが勝利のこの勝負。

わずかだが、地球側がリードをとっている。


だが、ここまでの麻雀はあまりにも……。


シャケは喜びながらも、違和感を覚えていた。


(……これでいいのか?麻雀はこんな競技だったか?)


確かに勝ち越している。

しかし、この戦いは今、宇宙と地球各地で放送中だ。

麻雀を愛している人も、麻雀を知らない人も見ている。


赤井はわからないが、

神宮司もきっと同じ想いでいるはず。

彼が点棒の渡し合い麻雀だけを魅せるわけがない。


それだけは、シャケにとって確かなものだった。



20時過ぎ、不定期更新

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ