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第44話 速度


『さあ、お待たせ致しました。

 地球の命運を賭けた最終決戦、選手入場の時間です!』


銀河アナウンサーの実況と共に、

スタジオの照明が落ち、無数のレーザーライトが踊る。


実況席に座るシャケとスズカも

固唾を飲んでモニターを見守っていた。


『まずは地球代表!

 麻雀最高峰Mリーグにおいて最速最強!

 人は彼をこう呼ぶ、麻雀界のラスボス、麻雀星人と。

 リーチ星人?関係ないね。麻雀星人の座は譲らない!

 神宮司明の入場だ!!!』


アップテンポな入場曲が流れ、

スモークの中から眼鏡に手を当てつつ神宮司が現れる。


煌びやかなユニフォームを纏い、

カメラに向かって爽やかなウインクを飛ばす姿は、

いつもの神宮司そのもの。


・キター!!

・神宮司今日は無礼講や!やりたい放題やれww

・Mリーグ最強が宇宙一に決まってるだろ

・ウインクwww

・これが地球で一番人気ある雀士

・眼鏡、非効率だけど何かいいな

・宇宙人は眼鏡しないの?

・する必要ない、でもいいな買いたい

・得意技が見たいような、見たくないような


『凄い人気ですね、シャケさん』


「はい、彼が地球代表で文句を言う麻雀ファンはいません。

 麻雀を知らない方に補足しておくと、

 彼はこの人気でありながら完全な『守備型』です。

 そのスタイルとこの愛嬌の良さ、ファンサービスの塊で

 玄人から初心者まで愛されています」


シャケがマイクを通して解説をする。

それを聞く地球の麻雀ファンは、

分かってるなと各地で頷いていく。


画面に映る神宮司は堂々と歩み、

東家トンチャの席で、深々と一礼した。

その所作一つ一つが洗練されている。

これこそが現代麻雀の形。


『続きまして、もう一人の地球代表!

 伝説の雀鬼か、それともただの無法者か!

 裏社会の闇から現れしジョーカーが、

 今日はMリーグスタジオに降り立つ!赤井万吉!!』


重低音が響く中、ポケットに手を突っ込んだまま現れる赤井。

胸元が大きく開いた柄シャツに白スーツ。

ファンサービスなど一切なし。

ただ、睨みつけるような眼光だけで歩みを進める。


・誰この爺さん

・完全にヤクザww

・目つきヤバすぎww

・謎にカッコいいw

・神宮司が納得してるなら、それで良し

・ガム噛んでるww

・髪白い、もしかして黄色に変化とかする?

・宇宙人、あれは白髪という老化現象だ

・黄色?もしかして宇宙にサイ〇人いるのか?

・マジか昭和の怪物、存在したのか

・本当に出てくるとは……

・シャケはどうやって引っ張り出したんだ??



『……空気が変わりましたね』


「赤井さんは存在そのものが劇薬です。

 麻雀は完全な感覚派、何でもしてきますよ」


シャケの言葉通り、赤井が北家ペーチャに座ると、

スタジオ全体にヒリつくような緊張感が走った。


『そして対戦相手、宇宙代表の入場です!!

 リーチ星から渡るは宇宙一!

 以心伝心、確率を見通す双子、

 宇宙の麻雀を終わらせた二人!

 リーチ・イースト&リーチ・ウエストの登場だ!!』


スモークの中から二つの影が現れる。

全く同じ身長、同じ顔で無表情。

真っ青に冷たい髪の長さだけが互いの違いを示していた。

長い方がイースト、短い方がウエスト。


まるで鏡映しのようにシンクロして歩く姿は、

美しくも不気味で機械的に感じさせる。


・宇宙の麻雀を終わらせた?

・イケメンやなあ

・お互いの考えがわかるらしい

・それ麻雀において最強では

・更に最効率で打ってくる

・勝てるわけねえええ

・クリソツwww

・麻雀のタッグ戦って初めてみるわ

・地球人勝ってくれ

・宇宙一なんじゃないの?

・だからこそ、麻雀の終焉を迎えつつある

・???


「あの宇宙人、感情あるよね?」


あまりに表情を変えない二人に、

実況席のシャケがスズカへ問いかける。


「彼らは個という概念が希薄です。

 二体で一つの演算装置と考えた方がいいです」


スズカの解説に、コメント欄は「無理ゲー」「ズルやん」とざわめく。


4人がようやく卓に揃った。


東家トンチャ:神宮司

南家ナンチャ:イースト

西家シャーチャ:ウエスト

北家ペーチャ:赤井


対局開始前の静寂が訪れる。

それを破ったのは、宇宙側だった。


「勝率100%。

 我々の演算に不確定要素は存在しない」


イーストの発言に、ウエストが続く。


「運など関係ない。より良い牌を選択し続ける。

 我々は確率を信じている。確率に背くことはない」


神宮司がフフっと笑みを零す。


「へ~、大きく出たね。

 でもね、麻雀で勝率100%なんてありえないよ」


「我々には」「存在する」


双子の声が交差して、返答をしていく。

それを聞くと神宮司は更に声を荒げて笑う。


「はっはっは!面白い大道芸だ!

 いいよ、麻雀の原点として教えてあげるよ。

 ……麻雀の深淵を」


赤井は何も言わない。

ただ、獲物を狙うような目つきで、双子をじっと観察している。


互いの挨拶と準備も終わり、いよいよ始まる麻雀対決。

地球対宇宙の最終ラウンド。


『それでは参りましょう!!

 最終決戦、麻雀!東一局、スタートです!』


サイコロが振られ、それぞれの牌が開かれる。

親は東家(トンチャ)、神宮司だ。


「……コレは!?」


開始数秒。

シャケは息を呑んだ。


速い。あまりにも速すぎる。


リーチ星人の打牌には、コンマ一秒の迷いもなかった。

牌を持ってきた次の瞬間には、牌が捨てられている。

それは、ツモる前から何を切るか決まっているような動き。


「ポン」

「チー」


イーストが切った牌を、ウエストが鳴く。

ウエストが切った牌を、イーストが鳴く。


お互いの手牌が完全に視えているかのように、

必要な牌をピンポイントで供給し合っている。


『このスピードこそ、宇宙一の麻雀だ!!

 地球代表の両名は何も出来ない!!』


「ロン」


無機質な声が一局を終わらせる。

ウエストが切った牌で、イーストが上がっていた。


「タンヤオ、ドラ1。2000点」


あまりにあっけない一局。


だが、その内容は戦慄すべきものだった。

二人合わせての最短ルート、地球側に極力ツモらせない鳴き。

その結果、点数が約1.5倍になる親が速攻で終わってしまった神宮司。


東家:神宮司 25000

南家:イースト 27000(+2000)

西家:ウエスト 23000(-2000)

北家:赤井 25000


・はや!

・え?もう終わった?

・予想以上のコンビ打ちwww

・これ楽しいか?

・何もできてない……

・麻雀の効率を極めるとこうなるのか

・宇宙ではこの速さこそ重視される

・ふざけんな!もっとこう、あるだろww


『あっさりと東一局が終わってしまった!

 地球側の二人はこのコンビ打ちをどう攻略するのか!!

 出来なければ、瞬く間に終わるぞこの勝負!』


「……攻略……するのかなあ」


興奮する実況とは裏腹に、

シャケの言葉はどこか呆れを含んでいた。


卓に座る二人、

赤井と神宮司も焦るような仕草を一切みせない。


「赤井さん、これどうします?」


「……まあ、どうとでもなるだろ」


東一局が終わり、東二局イーストの親番を迎える。


麻雀対決はまだ始まったばかり。





20時過ぎ、不定期更新

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