第42話 通してきた1%
「エレン!!」
スズカが動揺を隠しきれずに、
宇宙最高AIエレンに叫ぶが反応がない。
俺が告げた内容、
お前が隠していることを教えろ。
それを反復して飲み込むように、
球体がゆっくりと点滅している。
数秒の時間が経過すると、エレンは語り出す。
「私は隠し事をしません。
しかし、聞かれなければ答えることもありません」
「AIだからか?」
「肯定します」
「……嘘だな。お前には感情がある。
おっと、否定するなよ。
感情というのは、相手がどう受け取るかだ」
「……」
再び、エレンの沈黙が流れていく。
俺はこの宇宙最高AIに聞かなければならない。
「エレン、今までの対戦競技。
そして今回の麻雀、お前が決めていたな?」
「……その通りです。
対戦種目の選定プロセスにおける最終決定権は、
常に私にありました」
宇宙議会の中において、
誰もが納得する答えを持つもの。
それこそが、宇宙最高AIエレン。
「スズカ、間違いないな」
「はい、宇宙議会において最終決定権はエレンにありました」
問いただすとあっさりと答えてきた。
以前スズカから聞いた、宇宙議会の決定というのは間違ってない。
だが、スズカの瞳には負い目の影がある気がする。
エレンに決定権があったこと、
そのことに負い目を感じる理由がよく分からない。
ただ、今はそれよりも確認しておきたいことがある。
「エレン、お前、麻雀の次があればバスケ、サッカー、将棋。
この辺りから選んだんじゃないか?」
「……肯定します」
「……俺は30点の凡人だけど、
野球、格ゲー、競馬、麻雀。
見事に俺の好きな競技、詳しい競技から並んでいる」
「な!……ということは」
スズカも知らなかったのだろう。
その言葉を聞いて、俺と同じ答えを導き出す。
「エレン……貴方。
地球が勝てる競技から、逆算してシャケを選んだの!?」
そう、エレンは決して敵ではない。逆だ。
俺達、地球を守る為に最大限の努力を行っていた。
「はい、
全競技データから、地球側の勝率が0.00%以下となる種目を排除。
残された中から最大数値、
『勝率1%』の可能性を持つ競技を選択しました。
正確に言うと常識を覆す、
『規格外の個体が存在する競技』です」
エレンの球体内で、これまでの対戦映像が流れている。
流星さんのホームラン、諸星さんの予知を上回る読み。
トリプルターボ、テイサスオペラオー、マイデュースの激走。
「私は『勝てる競技』を用意したわけではありません。
『戦いになる競技』を選択しただけです。
そして、勝率1%を所持する個体は、
地球で最強と呼ばれるものに限らなかった」
「流星さん、神宮司さんはともかく、
赤井さん、諸星さん、テイサスオペラオー。
確かに俺以外じゃあ選ばなかったかも知れないな」
「競技単独ならば、選択する人間は存在した。
しかし、宇宙議会の過半数を得るには、
複数の競技に勝たねばならない」
「……そういうことか。
今まで直感で案内してきたけど、
それはある意味、正解だったんだな」
「それでも私のシミュレーションでは、
各競技において、99%地球が敗北する計算でした」
そうか、俺達はエレンの用意した最低限の可能性を、
自分たちの力でこじ開けてきたんだ。
「お前、ギリギリもいいところだな」
「これが私の出来る最大でした」
俺は深く息を吐いた。
怒りはない。むしろ、腑に落ちた感覚の方が大きい。
赤井さんにも言われていた。
「……シャケ。
俺を知っている時点でお前は30点じゃない」と。
だが、俺が案内する人たちを
エレンが事前に予測していたという事実は……何か嫌だ。
「シャケ?怒っていますか?」
スズカが心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。
エレンのやったことは、ある意味で俺への冒涜だ。
……それでも。
「いや、むしろ感謝してるよ。
地球は、俺達は今も生きているんだ」
「……生きている」
俺は画面の中に浮かぶ球体を睨みつける。
「まあ、悪趣味だとは思うけどな」
「褒め言葉と受け取っておきましょう。
あと1勝で宇宙議会は過半数を超えます。
三好鮭、麻雀も頼みますよ」
「上等だ……俺が案内する二人は最強だ」
「期待しています、案内人三好鮭。
……それとスズカ」
気のせいか、エレンの光が優しく広がっている。
「なんでしょう、エレン」
「餅の食べ過ぎには注意しなさい。
今の貴方のバイタル、糖質過多で警告が出ています」
「余計なお世話よ!」
スズカの返答を待たずに、プツンと画面が消える。
相変わらず、アイツは挨拶をしない。
部屋に、静かな正月の空気が戻ってくる。
……俺の選択がエレンの演算結果と同じ。
そう考えると、
アイツと俺は気が合うのかもしれない。
地球を守る為の仲間、宇宙最高AIエレン。
あと1勝で地球は救われる。
心強い仲間を加え、1月3日。
俺達は決戦の日を迎える。
20時過ぎ 不定期更新




