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第4話 大空流星と会うために


WBC決勝まで、あと1日。


俺は会社のデスクで頭を抱えていた。


「……どうすりゃいいんだよ……」


大空流星に会うためには、

まず東京ドームに入らなきゃいけない。

でもチケットは完売。転売は数十万円。

メールも電話も全部ダメ。


詰んでる。


完全に詰んでる。


そんな俺の背後から、ひそひそ声が聞こえた。


「三好鮭……落ち着いてください」


振り返ると、窓の外にスズカがいた。

昨日と同じように、電柱の横でじっとこちらを見ている。


「お前、会社の外でずっと見てるのやめろって……!

 てか、なんでそんな遠いのに声が聞こえるんだよ」


「スーパーテクノロジーです」


おお、それは怖い。


このままじゃ周りからみれば独り言を続ける変人になるので

昼休憩を取り、俺は外に出た。

スズカも当然のように隣を歩く。


「三好鮭。あなたはチケットが必要なのですね?」


「そりゃそうだよ。大空流星に会うには……」


するとスズカは、胸元から小さなカードを取り出した。


「これを使えばいいのでは?」

「……ん?」


差し出されたカードを見て、思わず叫ぶ。


「WBC決勝チケット!

 ……しかも“VIPシート”って書いてあるんだけど!?」

「はい。私は野球ファンですから」

「ファン!? 宇宙人が!?」


スズカは誇らしげに胸を張った。


「ストライク星では、地球の野球は“原典”として崇拝されています。

 私は幼い頃から大空流星の動画を見て育ちました。

 特に6年前の日本シリーズで放った、外角低めを逆方向に押し込んだホームラン。

 あれは物理演算上、ストライク星の解析機でも“奇跡に近い”とされた軌道でした」


「お前……立派な野球オタクじゃねえか……!」

「オタクとは褒め言葉ですか?」

「……そうだな……」


まあ、違うけどな。


「で、なんでそんな席のチケット持ってんの?」


「宇宙議会の特権です。

“地球文化保護官”は、地球の主要文化に自由にアクセスできます」


「そんな便利な制度あるのかよ……!」


髪をなびかせ、満足気にカードを俺に差し出してくる。


「三好鮭。あなたに必要なのでしょう?どうぞ」

「……いいのか?」


「もちろんです。

 あなたは案内人。

 あなたが動かなければ、地球は滅びます」


「案内人か……30点の俺が世界の大空流星に誇れる、

 唯一の肩書きってわけだな」


自虐気味に呟き、チケットを受け取ると

スズカが一本指を立てて、声を荒げてきた。


「ただし、一つ問題があります!」

「問題?」


スズカは真剣な顔で続ける。


「このままでは私が決勝を見れません!

 ……

 …………私が貴方に付いていくことができません!!」


いや、言い切ってるからもう遅いよ。

本音、ダダ洩れ。


ただ、同じ野球好きとして、その気持ちはわかる。


「まあ……確かに」

「ですが、心配いりません」


目を輝かせながら、スズカは腰を軽く叩いた。


「透明化装置があります」

「透明化!?」

「はい。地球のセキュリティなど容易に突破できます」


「いや、犯罪じゃんそれ……!」

「地球を救うためです。

 地球の法律は、地球が存続して初めて意味を成すものです。

 ……これは、合法です」


「宇宙人の倫理観どうなってんだよ……!」


スズカは平然と続ける。


「私は貴方の後ろを透明化してついていきます。

 堂々と入場してください」


「堂々とって……」


「堂々とです。

 貴方は地球の案内人なのですから」


胸の奥が、少しだけ熱くなる。

そして、チケットを握りしめた。


「……よし。

 大空流星に会いに行くぞ」


「はい。

 地球を救うために」


毎日20時過ぎ更新

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