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第38話 ギャンブラー


東京都港区

Mリーグスタジオ、控室。


普段ならチームメイトとの反省会や歓談が行われる。

今、その場所は一人の男の演説会場となっていた。


「はいどうも~!神宮司です!

 今日の試合見てくれましたか~」


WEBカメラに向かって軽快に手を振る神宮司。


つい先ほど、鮮やかな逆転トップを決め

勝利者インタビューでも話題を振りまいてきたばかりだ。


それもあり、今、彼の配信画面は

凄まじい勢いでコメントが流れている。


・88888888

・オーラス最高だった

・いやそれよりもインタビューよww

・案内人みてくれたかな

・譲らない麻雀星人の座wwww

・諸星みたいに伝説の配信にならないかなあ

・本当に宇宙人と戦うの?


神宮司は流れるコメントに笑顔で答えていく。


「宇宙人か~、そりゃ地球の危機なら喜んで戦うよ僕。

 でも、まだオファー来ないんだよな~」


・神宮司は外せん

・草

・もしかして:戦力外

・インタが生意気過ぎた可能性ww

・麻雀AIとの100連戦に勝ち越している男だぞww


「案内人のシャケくん、見てくれてますか~?

 ……まさか、僕を差し置いて他の人を呼ぶなんてことは」


・はよ呼んだれww

・不安になってるやんwww

・敗因、性格

・実際、宇宙人相手ってヤバそうじゃない?


「はっはっは、ご心配なく!

 相手が宇宙人だろうが未来人だろうが、異世界人だろうが、

 麻雀は麻雀。確率と選択のゲームです。

 絶対とは言い切れないけど、

 この大一番で僕が負けるわけないね!まあ、強いて言うなら……」


神宮司が言葉を溜めた、その時だった。


ピロンッ!


配信画面が、眩い虹色の光に包まれた。

スーパーチャット。それも最高額の赤スパならぬ虹スパ。


・【¥50,000】【三好鮭(日本政府公式)】


コメント欄が待ってました!と言わんばかりに瞬時に盛り上がる。


・うおおおおおおおお

・きたー!!

・画面光ったぞおおお

・まさか!?


流れてきたコメントに、

神宮司も目を丸くして画面を凝視する。


虹色に添えられたメッセージは一行。


・宇宙一を決めないか? 後ろにいます


・きたきたきたぁ!!

・本物登場!

・流行りの宇宙一構文wwww

・スズカ様の登場にも期待しております

・本物の宇宙一を決めないか?キター

・草

・切り抜き確定

・やり方教えてほしい

・神宮司、後ろ後ろ

・後ろ????


「え……?」


慌てて控室のドアへと振り返る。

するとタイミングを合わせたように、重厚な扉がゆっくりと開かれた。


そこに立っていたのは、

黒いロングコートを着込んだ、最近テレビなどでよく見る冴えない男と

銀色に輝く髪をなびかせた、絶世の美女。


「初めまして、神宮司さん」


冴えない男、シャケがお辞儀をし挨拶すると

神宮司もお辞儀で返す。


「初めまして、三好さん。

 ……マジで来たね、案内人」


「シャケでいいですよ。

 あと、アナタが出ないで誰が出るんですか」


「それは嬉しいね~」


神宮司は当然とでも言うかのように答えると、

配信カメラをシャケとスズカへ向けていく。


「みんな見えてますか!?これ合成じゃないですよ!

 案内人のシャケくんと、本物の宇宙人スズカちゃんだ!!」


・スズカめっちゃ美人やんw

・シャケ、有馬記念よかったぞ

・スズカ様、相変わらず美しい

・俺の金かえせシャケwwww

・配信みててよかったぜぇぇぇ


盛り上がる配信と神宮司を見届けると

スズカは満足気に髪をかき上げる。


「スパチャした甲斐ありましたね、シャケ」

「ああ、また俺の食費が飛んで行ったけどな」


苦い顔で答えるシャケは

ある程度、落ち着いたところで

神宮司へ向き直し、改めて頭を下げた。


「神宮司さん。配信中にお邪魔して申し訳ありません。

 ですが、事態は一刻を争います。

 ……地球代表として戦ってください」


「断る理由がないね、麻雀で地球代表?

 僕しかいないでしょう」


即決だった。

それはシャケと麻雀ファンが求めている神宮司の姿そのもの。


・さすが、俺達の神宮司

・即決wwww

・真面目な話、神宮司一択よ

・問題はもう一人じゃね?

・これ俺達の運命も掛かってるんだよな?


シャケは頭を上げると笑顔でお礼を告げていく。


「ありがとうございます。

 正直、断られることはないと思っていましたが、

 それでも……嬉しいです」


「で、もう一人はどうするの?」


神宮司は手元のタブレットを操作し、

ズラリと並んだデータを表示させた。


そこにはMリーグの選手、Mリーガーをはじめ

数々の麻雀プロ、その細かい資料が刻まれている。


「僕と相性がいいのは攻撃型の彼か、あるいはバランス型の……」


「いえ」


シャケは控えめに神宮司の言葉を遮った。


「Mリーガーでも、麻雀プロでもありません」


「え?」


神宮司の手が止まる。

コメント欄も疑問を中心に埋まっていく。


・??

・いや、神宮司と仲のいい熊田とか

・↑Mリーガーじゃん

・草

・まさか、お前が出るつもりかシャケwww

・ここはスズカ様の出番ですな

・こないだ世界王者になった西川が良いと思う

・去年MリーグMVPの伊達だろ


「この勝負、地球が賭かっているんだよね?」


「分かっています。ですが、その……。

 ……赤井万吉あかいまんきちさんを」


その名前が出た瞬間。

神宮司の顔から、笑顔が完全に消え失せた。


「……」


沈黙だけが控室に流れていく。

だが、コメント欄は異常な反応を見せていた。


・え?誰?

・ググっても出ないぞ

・マジか……

・本気で言っているのかシャケ!?

・あの10年前の

・知っているのか雷電

・昭和の亡霊じゃねえか!!

・いや、だから誰よ

・10年前の最強戦をみろ


配信は若い視聴者の「?」と

古参視聴者の驚愕が入り乱れるカオスな状態。


神宮司は、ゆっくりと眼鏡の位置を直すと

低い声でシャケへと問いただす。


「……本気なの?シャケくん。

 あの人に現代麻雀のセオリーなんてものは存在しない」


「だからこそ、良いんですよ。

 計算の外側にいる、理外の存在が必要な気がするんです」


神宮司は、しばらくシャケを見つめると

諦めたように、大きくため息をついた。


「……はあ、参ったな。

 あの人ともう一度、卓を囲む日が来るとは」


彼はカメラに向き直ると、苦笑交じりに言った。


「みんな、ごめんね~。

 もしあの人でいくなら、今すぐに行かなきゃ」


・配信は続けろww

・簡単に受ける奴じゃないだろw

・アイツはまじでやばい


「悪いけど、ここまでね。

 規約違反でチャンネルBANされる可能性あるから」


そう告げると、神宮司は配信を停止させた。


「行こうか、シャケくん。

 多分、例の雀荘にいると思う。

 ……ただ、その……もう一度確認しておくけど、

 あの人は、競技者じゃないよ?」


「……理解しているつもりです。彼は……」


「「ギャンブラーだ」」


20時過ぎ不定期更新

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