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第19話 秋葉原の戦い


――対決の日


かつて「電気街」と呼ばれた秋葉原は、

今や銀河規模の「聖地」と化していた。


全世界の主要都市の上空、

ニューヨークのタイムズスクエアも

パリのエッフェル塔も、東京の国会議事堂も

今は、巨大なホログラムによって

秋葉原の光景が映し出され、人工的な光を浴びている。


全人類が強制的に最前列に座らされているのだ。


しかし、その映像に喰らい付くのは

地球人だけでなく、銀河彼方の視聴者も同じだった。


前回の対決、野球は

銀河全域の視聴率50%を超え

放送局の幹部たちは、

モニターに映し出される秋葉原の喧噪を眺めながら

これから始まる「地球対宇宙」に心躍っていた。


――戦いの場となる秋葉原の一角


となるゲームセンターの上空では

透明な階段と特設ステージに

駅から出た瞬間、目に入るほどの超巨大モニターが佇んでいる。


この舞台は、前回と違い宇宙側からプロデュースされ、

安全面も考慮をされていた。


そして、その秋葉原の地上では奇妙な光景が広がっている。


怯え、祈る一般市民の横で

地球の格ゲーマーたちは「レジェンド」の雄姿を

その目に焼き付けようと立ち尽くす。


一方、空に浮かぶ観客席では

宇宙人たちが秋葉原の光景を眺めていた。


「これがアキハバラ」

「本当にいるぞ、メイドさん」

「後でメイドカフェいきたい」

「今いかないと地球終わるぞ」

「オイ!本物のベガ立ちだ」

「あれがベガダチ……正に戦闘態勢」

「俺達もやろう」


宇宙人たちが皆、

腕を前で組み、直立不動になっていく。

どうやら彼らから見ると、神聖な儀式に見えるらしい。


混乱ひしめく、秋葉原。


いよいよ、その特設ステージへ、

地球を託された者たちが現れる。


「凄いことになってるな」

「今回は、宇宙放送局が主導でこの舞台を作ったということです」


案内人、三好鮭と宇宙人スズカが

周りを見渡しながら、階段を上っていく。

その後ろで膝に手を当て、昇る男が二人。


「……三好さ~ん、地球よりも俺の体力の方が限界なんすけど」

「うっさいわ!最後、5時間休ませたったやろ!」


亡霊のように呟く、格ゲー世界王者のシャインと

格ゲーの歴史を作ってきた男、諸星

二人とも、地獄から生還した直後のようにボロボロになっていた。


諸星が力の入らない手からスマホを取り出し

ジンバルへ装着していく。


30秒ほど操作すると

諸星の配信チャンネルが動き出した。

同接数が瞬く間に万を超える。


・二人とも生存確認www

・まともに寝てないだろww

・シャインがゾンビみたいになってるんだがwww

・美しすぎるスズカ様

・秋葉原、宇宙人多すぎだろ

・モロボシまじで頼む

・外にでっかい映像が流れてるんだけど


「はい、ということで今日は秋葉原にやってきました。

 ……アカン、無理や。スズカ頼むわ」


動画配信用の挨拶もまともに出来ず

諸星は、スズカへジンバルを渡すことしか出来なかった。


「承知しました……

 諸星さん、動かないでください」


スズカはジンバルを受け取ると

スプレーを照射し、諸星の体を煙が包んでいく。

続いて、シャケとシャイン、自分自身にも念入りに同じ行動を繰り返す。

そのスプレーには「耐衝撃スプレー」と書かれていた。


「なんや、おまじないか?」

「……そんなところです」


・もしかして:臭い?

・美女にスプレーされるモロボシww

・今日もスズカ目線か

・切り抜きみたぞ、シャケナイス

・草

・なんか耐衝撃とか書かれてない?

・今から始まるの格ゲーだよな?


『さあ、やってきました!地球代表、諸星大!

 彼は地球を救えるのか!!』


野球の時と同じように

地球全土へ銀河アナウンサーの声が鳴り響く。


『そして、今回の特別解説は

 格ゲー世界王者、シャイン・アカツキ氏だ!!』


その絶叫と共に、

ステージ横から、わざとらしいマジックハンドが登場し

シャインの足を掴んだ。


「えっ、ちょ、待って!聞いてないっすよ!!

 やめ、やめてぇぇぇぇぇ!!」


悲鳴を上げながら、

浮かぶ実況ブースへ連れ去られていく世界王者。

彼を待たずに、アナウンサーが今回のルールを説明していく。


『負けたら地球滅亡の第二戦は格闘ゲーム!

 ルールは2ラウンド先取の一本勝負!

 ただし、特別ルールとして

 1ラウンドごとに3分の休憩を設けます』


そのルールは、宇宙放送局により

CMを流すためのものではあったが、

シャケは内心ガッツポーズを決めていた。


(……助かるルールだ)


説明が終わると、上空には

『銀河保険:あなたの星が滅びても安心安全!』

といった複数の宇宙企業ホログラム広告が盛大に踊った。


地球の命運が懸かっている対決でさえ

彼らにとっては高単価な広告枠に過ぎないようだ。


『どうでしょう?解説のシャインさん

 このルール、選手にはどう影響しますか?』


『はぁはぁ……そうっすね。

 普段とは違いますが、

 ある意味、世界中から応援とアドバイスがもらえるので

 プラスの方が大きい気がしますね』


息も絶え絶えに、実況ブースへ引っ張られたシャインが

決め顔で解説を務める。


『だそうです!地球の皆さん

 全力で諸星大を応援してあげてください!

 何といっても、相手は宇宙一!

 お、来ましたね。

 フレーム星からの使者 

 クリムゾン・グランデの入場だぁぁ!!』


対戦相手のクリムゾンがステージに姿を現した瞬間、

世界中が驚愕した。


ピンク色のツインテールに

巨大なリボンを付けた幼女。

それは世界中が想像したものと真逆の姿。


・幼女キタ!

・これはメスガキww

・おっさん対幼女wwwww

・クリちゃんって呼んだら怒るかな?

・クリタンはぁはぁ


その見た目で諸星の配信が盛り上がる一方、

現地の人間は全く別の感情を抱いていた。


幼女、クリムゾン。

その小さな足がステージを一歩進むたび

巨大モニターに軽いノイズが走る。


彼女が纏う空気は、あまりに重く、禍々しさが滲み出ていた。


観客席の宇宙人たちは、そのプレッシャーを浴びて

「これこそ宇宙一の覇気!」と、さらに深くベガ立ちを決め込む。


逆に、秋葉原に集まった数万にも及ぶ地球側の観客は

その幼女から絶望感の三文字を叩きつけられていた。


「……スズカおばちゃん、久しぶり!」


不意に発した幼女の無邪気な声に、スズカの頬が激しく引きつる。


「だから、おばさんじゃない!私は20歳です!

 大体、貴方の方が私よりずっと年上でしょ!」


(……スズカ、20歳だったのか6歳下か……あと)


スズカ以外に聞こえないように、

シャケはそっと疑問をぶつける。


「スズカ、お前、クリムゾンのこと『彼』って言ってなかった?」

「???『彼』で合っていますよ?問題でも?」


シャケは、それ以上追及することを止めた。

(……宇宙は広い)


謎の納得をするシャケを尻目に

亡霊のように佇んでいた諸星は

首を鳴らしながら、クリムゾンへと顔を寄せていた。

それは正に「メンチを切る」距離。


「おいおい、スズカじゃなくて俺が対戦相手やろ。

 お嬢ちゃん、あとから泣きべそ掻くなよ」


「それはこっちのセリフよ!

 おじちゃん、死ぬ準備はできた?」


「言われ慣れとるわ、そんなもん。

 ……地球の格ゲー、見せたるで」


不敵に笑う諸星の瞳から疲労の色が消えていく。

それは数多の逆転劇を起こしてきた伝説の男が、

目の前の敵を喰らうために意識を研ぎ澄ませた証だった。


「面白いじゃない、精々頑張ることね」


火花を散らす両名。

“おっさん対幼女”“伝説対宇宙一”

地球の行方はどちらの手の中に


『さあ、まもなく運命の第1ラウンドを開始します!』

 


毎日20時過ぎ更新

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