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第14話 収束する変数  ―Converging Variables―



……勝った。俺達、さっきちゃんと勝ったよね?


なのに、なんで今、俺はこんな居心地の悪い場所にいるのだろうか。


あの生意気な宇宙実況が終わったと思ったら、

すぐに、いかにもな黒服の男たちがきて

俺とスズカを黒塗りの車に押し込みやがった。


移動の途中、スマホが鳴り止まなかったけど

それを確認する余裕もなく、この場に連れ込まれた。


壁一面に並ぶ大型モニター。

大げさなまでに豪華な円卓。

手元には分厚い資料。


簡単に言えば、会議室だが

座ってる人物が

TVで見たことのある大物政治家たちばかりだ。


さっきまでの甲子園の匂いが懐かしく感じる。


「三好鮭様、お茶でよろしかったでしょうか?」

「あ、はい大丈夫です」


目の前のスーツのお姉さんは、ニコリもせずに聞いてくる。


毛先の揃ったセミロングに縁なしの眼鏡。

知性の塊のようなクール美女だけど

その視線はどこか事務的で冷たい気がする。


出されたお茶を一口飲んでみたけど、味がさっぱりわからない。

こんな状況で味わえるほど、30点の舌は肥えていないのだ。


(……帰りたい)


心の中で10回ぐらい唱えてみたけど、もちろん誰も助けてくれない。

隣で満足げにお茶を味わっているスズカが逆に羨ましい。

多分、合法ですって言ってくる。


「……美味しい……合法です」

(ほらな)


突っ込む空気でもないから、辺りを見回してみると

壁一面に飾り付けられたモニターから

さっき、流星さんが俺を指差した時の映像が流れていた。


『彼こそが地球代表選手の案内人、三好鮭だ!』


全世界に晒された、俺の間抜け顔。

そこで映像を止められて、

50人はいるであろう全員の視線が突き刺さる。

「なんでコイツ?」って心の声が室内に漂っている気がした。


「まずは、地球を代表してお礼を申し上げます。三好鮭様」

「……いえ、やれることをやっただけです」


内心驚いた、

お礼を言ってもらえるとも思っていなかったのは勿論、

お偉いさんを差し置いて

さっき、お茶をくれた女性が立ったまま

声を掛けてきたからだ。


「この場は、これより『宇宙人対策本部』となります

 しかし、我々には情報が足りません。

 これまでの出来事を教えていただけないでしょうか?」


なるほど、この女性がその『宇宙人対策本部』とやらの実行隊長、

周りのお偉いさんはその責任を負う為、見届ける為の人物ってわけだ。


別に隠す内容でもないので、俺は洗いざらい話すことにした。


宇宙人スズカに出会った夜のこと。

大空流星にお願いした流れと特訓の数日。

そして、勝負の時。


話してみると、あっという間の1週間だと感じる。


「……というわけです」


俺が話している間、ずっと部屋の片隅で鳴っていた

カタカタというタイピング音も止まる。

議事録を取られているみたいで気持ち悪い。


「ありがとうございます。

 では、その情報を精査して

 次からの対戦は、我々が選手を選びます」


「……はぁ」


流星さんから受け継いだものは確かにある。

でも、それが一番なのかもしれない。

なんせ、地球の運命が掛かっているのだ。

30点の自分よりは……。


「負けますよ?」


普段よりも冷たく言い放つスズカに

室内全員の視線が集まる。当然、俺もだ。


「何を根拠に?

 野球でいえば三好様でなくても大空流星を選びましたよ?」


「選んだだけではありません、導いたのです」


「ただの言葉遊びではありませんか?」


実行隊長と思われる女性とスズカのやり取りで

更に居心地が悪くなる。


「不毛な議論をするつもりはありません。

 三好鮭は宇宙最高AIエレンが選んだ“案内人”。

 貴方たちを守れる唯一の人物です」


「そのAIが絶対に正しいのですか?」


「………………絶対です」


その時、壁に貼り付けられているモニター全てに

不自然なノイズが走る。

ノイズが収まると画面に英語表記が綴られていく。


Existential Rational Evaluation Network

ID: SZK-99 [CORE: E.R.E.N.]


英語の分からない俺が唖然としていると

次の瞬間、巨大モニターに淡い光を放つ球体が映し出される。

中央にはスズカからよく聞かされていた名前が浮かび上がった。


――E.R.E.N.――


これが宇宙最高AIエレンか。


「私は絶対ではありません」


室内の人間が驚く中、

先ほどまでの会話を聞いていたのか

エレンは自分を否定する言葉を投げかける。


「エレン!」


「スズカ、もう一度言います。

 私の演算に『理論的絶対性』は存在しません。

 しかし、地球存続という結果へ最も高く収束する変数は

 依然として三好鮭です」


よくわからないが、

エレンが俺を信用しているのは何となく伝わる。


「……これが宇宙一のAIですか」


「宇宙最高AIです――鳥越結花とりごえゆか


「!……私の名前」


「あなたの名前だけでなく、年齢・経歴・趣味。

 出生から現在に至るまでの全栄養摂取記録。

 全てお伝えできます」


「……」


なんて恐ろしい。AI社会の極致だコレ。


「ちなみに、三好鮭の初恋の相手は――」

「待て待て!やめろ!」


コイツ、本当にAIなのか?

明らかに俺を面白がってるだろ。

なんか笑うように光ってるし。


「高度なAIということはわかりました……しかし」


「前提として宇宙議会と違い、私の立場は中立であり

 不信感の表明は生存本能として正常な反応です。

 私への信用は演算結果に寄与しません。

 ただし、スズカの非合理とも言える地球愛が

 滅亡回避、唯一の起点であるという事実は認識されるべきです」


やっぱり感情があるような。

高度なAIってそんな感じなんかな?


話の内容よりも、どうしてもエレン自体が気になってしまう。


「……わかりました。納得はしませんが理解はしました。

 皆様、引き続き

 三好様に競技者を選んでいただくという形でよろしいでしょうか?」


立ち尽くす女性、鳥越さんがお偉いさんに確認を取る、

そりゃそうだ、彼女一人の判断でどうにか出来るはずがない。


「……よかろう、そもそも地球が負けた時点で批判など存在しない」

「それはそうですな」

「彼のおかげで一勝できたことは事実だ」

「まあ我々が選んだ代表者を見れば、三好さんも納得するでしょう」


どこか他人事のような、腐った奴もいるな。

まあ、それは仕方ない。俺はやれることをやるだけだ。


「では、決定と致します」


鳥越さんが告げると

エレンは何も言わずに消えていた。

AIって挨拶しないのな。


「引き続き、次の議題ですが

 格闘ゲームの代表者についてです。

 三好様、格闘ゲームは?」


「まあ、30点の知識です」


でも、一人、脳裏に浮かんでいる人物がいる。


それは

――“伝説の逆転劇”を魅せた、あの人。



毎日20時過ぎ更新

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