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死ねない怪物の私は、もう祈らない~私の心はもう死にました。なのにどうしてあなたは私を探しているのですか?~  作者: 紫乃てふ


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西の湖の現状~ヘリオスside~

夢で『ルル』と名乗る少女に会った朝。

寝起きの段階では「変な夢を見たな」と思う程度だったが、気になり執務室でカドモスに夢の内容を話した。


「夢っていうけれど、それにしては鮮明に覚えすぎじゃないか?」

「言われてみれば、その場に行った時のように細部まで覚えているな」

「一度、行ってみたらどうだ? 西の湖」

「旅行から帰ってきたばかりだから、他の誰かに頼んでみるか」

俺がそういうと、カドモスがゆっくりと横に首を振った。

「正直、国王陛下の急逝。ヘリ―が視察先から帰ってくるまでの間に、王妃の実家が城を牛耳っていた。お前の味方なんて、俺と俺の部下たちと賢者様くらいだ」

「賢者様か……。早急な結婚にも反対されていたな」


この国には、賢者が居る。

彼は、この国にあるすべての学校の元となる教育機関を作った。

どんな学問にも精通している人で俺とカドモスは、賢者様から勉学を習った。

「俺だって、未だに反対だよ。賢者様みたいに拗ねて引きこもるとかできないだけで……。調査に行くならヘリ―が自分で行くのがいい」

「そうすると、カディとその部下たちにまた負担が……」

「とりあえず、水質調査に行くなら二・三日だろう。それくらいなら耐えられるさ」

「すまない」

「任せとけ……。シャトレ湖のあたりなら宿もあるだろう」

「あぁ、急いで用意を……」

そこまで言うと、外から侍女の大きな声が聞こえる。


「エリス様! どうされたのですか? お、お待ちください」

彼女は、どこから聞いていたのか。


「知識が必要ですから、賢者様のところへ行ってくださいね」

「わかった……」

カドモスは、今更と言わんばかりの顔で、俺を見ると扉の方を指さす。

急いで行けという事らしい。


賢者様が暮らしている王家の森の奥にある家に着く。

「で、ワシのいう事を聞かずに結婚した若造がなんのようだ」

全身を覆う青いローブを着ている老人が、不服そうな顔をしながら目の前に座っている。

包み隠さずに夢の事を話して、頭を下げる。

「師匠お願いします。どうか、力を貸してください」

「エピ。こちらに来なさい」

蓄えた顎髭を撫でながら、目を細める賢者プロメは、自身の後ろに控えていた青年を呼んだ。

ぼさぼさ頭の青年は、顔の半分を覆うくらいの丸い眼鏡をしている。


「はい。お師匠様。どうされましたか?」

「あぁ、こやつが新しい国王なんだがな……」

俺の事を指さす自身の師匠を見て、青年は青ざめる。

「し、師匠! 国王陛下になんて失礼なことをしてるんですか!」

「ん?これもワシの弟子だからな、気にするな」

「師匠、あなた以外の人は、気にするんです!」

俺がそう言っても、本人は全く気にしていない。


「女神さまがそんなことをするのも、訝しいが……。このエピは毒に精通しとる。連れて行くと良い」

そういうと、師匠は立ち上がる。

「で、もう一人の弟子は、お前の執務室か?」

「はい。カドモスは執務室に居ます」

「そうか、それなら手伝いに行ってやるかのう。たぬきが邪魔しにくるじゃろうからな」

そう言って一人で屋敷を出ていく。


「エピと言ったか」

「は、はい」

「すまないが、急いで用意をしてほしい。馬を飛ばしても着くころには、夜中だからな」

ろくに挨拶もできないが緊急事態だ。

手早く荷物を纏めてもらい、王城の裏にある馬舎に行って、西を目指す。


エピは、思ったよりも馬に乗るのが上手かった。

ただ、不自然に検問をしている領地があり、遠回りをする結果になった。

そのせいで、シャトレ湖に着いたのは、朝日が昇る頃だった。


馬から降りて、湖を見るもそんなに変わったようには見えない。

「エピ。この湖の水質を急ぎで調査してほしい」

「国王陛下……。僕、もう何年も外に出たことないから疲れましたよぉ」

遠回りしたせいで、休む暇もなかったので、遠乗りに慣れていないときついだろうと思っていたが……。

まさか、何年も外に出ていないとは、予想外だ。

ふらふらになりながらも、馬から降りたエピは、湖を見て慌てたように口をハンカチで覆い俺の方を見る。

「陛下、今すぐこの湖の水を汲むのをやめさせてください」

ふらふらだったのに、急に真面目な顔をしてこちらを見るエピ。

「危ないのか!」

「はい! 少し発泡しています。これは、空気に拡散していくタイプの毒です。今は少量なので、僕も陛下も大丈夫ですがまずは口を覆ってください」

そう言われて近づこうとしたが、止められてしまう。

俺は急いで、この近くの街を統治している男爵家の元に行く。


「ユベン。朝早くに押しかけてすまない」

ここの当主は、俺の母親の親戚筋。

それが救いだった。

寝ているところを無理に起こしてもらって、玄関で湖で毒の反応が出ていることを伝えると寝巻のまま湖まで来てくれることになった。

水に関しても、申し訳ないが別の水源を利用してもらえるように、使用人たちが総出で対応してくれるらしい。


「で、彼は?」

「賢者様の弟子のエピだ」

「陛下! えっと領主様ですね。私は、エピと申します。突然で申し訳ありません」

「いや、大丈夫だ。陛下からお話は聞いた。湖の様子は……」

「はい。簡易的な検査ですが、二種類の毒が検出されています」

「それは、危険な物か?」

俺が聞くと、エピは少し湖から離れるように俺たち二人を誘導する。


「はい。一つは陛下にお伝えした空気で拡散するタイプのものです。もう一つは、蓄積されると腹痛を起こして、その……身体から出たものから感染していくタイプの毒ですね」

そう言いながら、検査に使ったであろう試験管を見せてくる。

「この毒なら、水に溶かす中和薬がありますので、それをすぐに作れれば二日ほどお時間をいただければなんとかなるかと」

そう言いながらも、首を傾げているエピが気になる。

「何か気になることがあるのか?」

「いえ……、簡易検査なので何とも言えないんですが微量ですが他の毒の反応もあるんです。ただ、こちらはどれも人体にはもう影響がないほど無毒化されています」

「どういうことだ……」

「聖女か?」

ユベンの言葉にエピは、感動したような表情をする。

けれど、俺は納得がいかない表情をしてしまう。


『ルル』、彼女をどこかで見た気がしている。

そう、それこそ教会の中庭で遊んでいた少女。

色彩は違うけれど、なぜか彼女の姿と重なった気がするのだ。


「まさかな……」


俺はその場をエピとユベンに任せて、王都に戻ることにした。

最後までお読みいただきありがとうございます!

本作は「ネトコン14」エントリー予定です。

少しでも「気になる」と思っていただけたら、ページ下の評価やブクマ登録をしていただけると、執筆の励みになります!

明日も更新しますので、またお会いしましょう!

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