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死ねない怪物の私は、もう祈らない~私の心はもう死にました。なのにどうしてあなたは私を探しているのですか?~  作者: 紫乃てふ


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国民を救うために

 珍しく王妃エリス様の家の騎士が、私の見張りをした日の夜。

 昨日と同じでミケが、私の夕食を運んできた。


「聖女様は、そのご飯でお腹いっぱいになるんですか?」

 そう言って、テーブルに夕食を置いてくれる。

 今日の夕食は、硬いパンと野菜が少しだけ入ったスープ。

「足りるわよ。硬いパンってたくさん噛むからすぐお腹いっぱいになるの」

「絶対に足りないですよ! 僕なら泣きます」

「泣かなくても……」

「何か持ってきましょうか?」

「ダメに決まってるでしょう」

 私は、そう言って女神に感謝の祈りを捧げてからご飯を食べる。


 ミケと楽しく話をしていると、

 ――ズキズキッ。

 頭が締め付けられるみたいに痛くなってくる。


「いっ……いたい」

「聖女様! 大丈夫ですか? 誰か呼んできます」

 慌てて駆け寄ってきてくれるミケだけど、頭を抱えて机に突っ伏す私を見て、人を呼びに行こうとする。

 でも、今呼ばれたら困る。

 これは、バレたらダメだから……。


「ミケ……だれも……呼ばないで」

「でも!」

「いいから……石碑の上に、寝かせて」

 そう伝えると、ミケの手を借りて石碑に寝かせてもらう。

 魔法陣が、光だして私の頭に西の湖の風景が映る。


 複数人の黒いフードを被った男たちが来ていた。

 その手には今までの小瓶とは、比べ物にならない大きさの瓶があり、1人が湖に流している。


 頭の中に、

『苦しい……助けて……このままじゃ、みんなが死んじゃうよ』

 誰の……声?

 分からないけれど、苦しそうなこの声の主を助けられるのは、私だけなはず。

 そう思って、魔法陣に聖力を流す。

 そしたら、ピンクの光が舞って部屋を満たしていく。


 ただここで、予想外の事が起きた。

 ピンクの光と一緒に、私の身体が浮く。


「えっ! えぇっ!!?」

 私が驚いていると、下で見ていたミケが慌てた様子で扉を閉める。

 一旦、聖力を流すのをやめると、宙に浮いていた身体が落ちる。

「いった!!」

「聖女様、大丈夫ですか?」

「う、うん。ミケ、問題を国王陛下が解決したら、今回の事は説明するから、早く鎖をしっかりと巻いて!」

「は、はい!!」

 こんな純粋な子が教会で、やっていけるのか心配になってくる。

 でも、それどころではない。

 私の頭の中の声は、どんどん切羽詰まっていってる。


 巻き終わったのをミケが確認して私に声を掛けてくる。

「聖女様、終わりました」

「ありがとう。じゃあ、悪いんだけど扉の前に誰も来ないように見張っていて。今日は、深夜の合図はいらないわ」

「分かりました。誰も近づけません」

「頼むわね」

 ミケがお辞儀をして、扉が再度閉じる音がした。

 私は、集中して身体の中の聖力を巡らせるように意識をして、魔法陣に流していく。

 そこから、西の湖からの情報に神経を尖らせる。


 西の湖は、あの日から頑張って混ざった毒を解毒していたのに……。

今は飲めば翌日には亡くなってしまうくらいの濃度になっていた。

 きっと、彼らが持っていた瓶の中身は、希釈されていなかったのだろう。

 なぜなら、さっきのフードの男たちが湖のほとりに倒れているからだ。

 空気に混じるとすぐに効果が出てしまう毒が、濃い濃度で入っていたのだろう。

 彼らの命は、申し訳ないけれど切り捨てる。

 今、私が護らないといけないのは、この湖の水を生活に使っている国民なのだから……。


「自業自得ね」

 危ない毒から順番に解毒するイメージで、聖力を湖に集中させる。

 目立たないように湖の底からゆっくり流し込む。


「難しいな。あまり派手にすると、相手を刺激したら……」

 刺激をしすぎると、良くない。

 私が介入したと分かったら、王妃エリスや教皇猊下に警戒されてしまう。

 もちろん彼らとこの犯人たちが繋がっているのか分からない。

だから、私の関与は目立たないに越したことはない。

 外でこの聖力が、どれくらい目立たずにやれるか分からないけど……。

 それでもやるしかないのだ。


 どれくらい時間が経ったのか、分からないけれど、何とかあと二種類まで減らせた。

 頭の痛みも解毒が進むにつれて痛みは引いた。

 今はもう、少し痛む程度。

 扉が叩かれる音がする。


 ミケが私に声を掛けてきた。

「朝になったので、僕もうすぐ交代になります」

「そう……。教えてくれてありがとう」

 今までは、国王陛下の周りにだけ濃度の濃い聖力を纏わせていた。

 魔法陣の聖力を借りていたのも食事を食べなかったときだけ……。

 でも今回は、国中に聖力を満たしているうえに、予想外の事が起きている。

 もしかすると、今回は空っぽになるまで聖力を使って……。

 ようやく、この役目から解放されるのでは!


 それにしても、私は今回の変化について考える。

 今までも、国王陛下が、新婚旅行から帰ってきて……、しばらくするとどこからか病気が蔓延していた。

 もしかすると今までは、あの少ない毒がじわじわと国民を蝕んだ。

そして、気が付いたときには手が付けられないようになっていたのでは……。


「お疲れ様です!」

 ミケの元気な声が聞こえてきて、私は聖力で解毒するのをやめた。

「えっ!僕、夜寝ない方が得意だったみたいで今、元気なだけです!」

 交代の人が来たのだろう。

 湖の様子を見るように、聖力を流す。


 昨日の夜、確かにあった倒れたフードの男たちの姿は消えていた。

 誰かがここに近づいたなら気が付かれたのだろうかと不安になる。


『ありがとう。君のお陰で元気が出てきたよ。嬉しい。嬉しい。君の事は隠してたから、大丈夫』

 同じことを言っている複数の声が、頭の中に流れてくる。

 結局、この声の正体は未だに分からない。


 もう少し周りを見ようと、流していると遠くから馬の駆けてくる音が聞こえてきた。

 そして、湖のほとりに馬が止まる。

 そこには……、国王陛下ともう一人。

 ぼさぼさ頭に大きな丸い眼鏡をした男性が付き添っていた。


「エピ。この湖の水質を急ぎで調査してほしい」

「国王陛下……。僕、もう何年も外に出たことないから疲れましたよぉ」

 へろへろの状態で、馬から降りてきたエピと呼ばれる男性は、湖を見て驚く。


「陛下、今すぐこの湖の水を汲むのをやめさせてください」

「危ないのか!」

「はい! 少し発泡しています。これは、空気に拡散していくタイプの毒です。今は少量なので、僕も陛下も大丈夫ですがまずは口を覆ってください」

 そう言って、彼は手早く何かを用意していく。

 彼に任せても大丈夫そうで、安心する。


 そうすると、ミケと交代した聖騎士が私の朝食を持って来た。


最後までお読みいただきありがとうございます!

本作は「ネトコン14」エントリー予定です。

少しでも「気になる」と思っていただけたら、ページ下の評価やブクマ登録をしていただけると、執筆の励みになります!

明日も更新しますので、またお会いしましょう!

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